第35話  軍の兵器

 人質交換は失敗した。

 捕らえていた魔族はダストを除き全滅……。ダストはあの攻撃を避けたのか、ほぼ無傷だった。


「くっ……外道共め。お前達行け!」


 正さんがそばにいた3人の戦士に指示。青年に女性と壮年の3人。


「「了解!」」


 3人はオンガーツを囲む。


「なんだ?あんたらが遊んでくれんの?」

「そういうこと」「叩きのめす」「行くぜ」


 ――戦闘が始まった。


「よし奴らが時間をかせいでいる間に……」


 どこからともなく強大な大砲が現れる。いや違う、最初からあったみたいだ。見えなかっただけで。

 どうやらステルス機能がついていたらしく、目で見えないようになっていたもよう。


「正殿の能力によって作られた、ソル・レーザー砲……その威力がどれほどのものか見れるのね」


 能力によって……?

 つまりこれは科学で作ったものだとか、そういうわけではないのだろうか?


 九竜は俺がそんな疑問をもってると感づく。


「前に魔力以外では魔族を倒せないと言ったよね?」

 ※2話参照。


「だからこのような大砲も放つのは魔力を凝縮したものでないと意味ないわけなの。でも鉄だろうが金属だろうが、魔力を集中なり当てるなりするだけでも砕けたりして消滅しちゃうのよ。基本人体以外は魔力に耐えられない」

「……別なのはリーゼなどの聖霊か、聖獣によって作られた武器だけ?」

「そう。そして正殿は聖獣の武器生成能力に、自らの能力を組み合わせてこの大砲を作り上げる事ができたの」


 それ故にこの大砲は例外で、魔力を備え放つ事ができるというわけか……


「能力というのも、ある一定の魔力ランクを持つものが作り上げる事ができるものなんだけど、基本一人一つ。とはいえ誰でも作れるわけじゃなく魔力の強さ以外にもセンスとかいろいろ必要なんだけどね」


 能力は、異能七人衆だけの特権ではないわけか。


「ちなみに四聖獣には四聖獣特有の能力があるらしいよ。力を使いこなせば朱雀も能力持ちになれるよ」


 四聖獣特有……どんなものだろうか?


「よしエネルギーチャージは進んでいるあと少しで……」


 正さんがソル・レーザー砲の準備を進めている最中、


「正隊長!御堂殿達が!?」


 兵の言葉を聞き戦場を確認する正さん。

 目にしたのは、先ほどの3人がオンガーツに敗れ、倒れてる光景だった。


「な、なにぃ!?こんな数分で!?奴らはランカー、それも御堂に至っては♤の9だぞ!?」


 御堂さんという方は青年のほうらしいが、ランカー3人がものの数分でやられるとは……


「なら俺様が行きます」

「待て待ておれも行くぜ」


 南城と北山が前に出る。


「……お前達わかっとるのか?上のランカーがやられたのだぞ」


 南城は8、北山に至っては3だ。

 ……普通に考えれば無謀だろうが。


「俺様の実力は上位ランカークラスはありますよ。御堂さん達より上です」

「おれは……リヴィローとやる前の準備運動って事で」


 気楽というかなんというか……

 この二人に無謀という文字はないのかもな。


「お前達、これは遊びではないのだぞ!」

「でもまだその大砲撃てないんでしょ?時間稼ぎはほしいんじゃないですかね」

「うっ……」


 ……南城の言う通りだ。

 まだエネルギーチャージが終わっていない。

 勝てないとしても、誰かしら時間稼ぎはしてもらわないと困るだろう。こんな目立つ装備、なにもしなければオンガーツに邪魔されて破壊されかねない。

 チャージしたらまた姿を消す事も無理だろうし。


「……わかった。じゃが無理はするなよ」

「もちろん。ま、倒しちゃうかもしれませんがね」


 南城と北山は飛び出して行った。

 ……歯がゆい……

 体調不良だし、ローベルトまでは戦闘を禁じられてるから仕方ないとはいえ……俺は見ていることしかできないなんて。


「おいおい今度はガキ相手かい」


 見るからに舐め腐った態度のオンガーツ。


「そのガキにやられることになるとは情けない奴だなお前」

「……あん?」


 安い挑発に頭にきたか、眉間にシワがよる。


「やれるもんならやってみな!かあっ!」


 口から超音波を発生!

 衝撃波となり二人は吹き飛ばされる。


「ちぃ!火焔玉ファイヤーボール!」

水圧玉ウォーターボール!」


 二人は自らの属性の弾丸を投げつける。


超音波壁ナスティウォール!」


 オンガーツは叫び、音波の壁を作り上げ、それらを全て防いでみせる。それにより奴には当たらず、傷一つ負わなかった。


「なんだあの技!」

「ち!厄介な防御技だな。なら直接攻撃でぶち壊してやる!」


 南城は炎を拳に込め接近。

 北山はユニコーンによって作られた杖の武器を精製し殴りかかる。


「無駄無駄無駄!」


 またも口から超音波攻撃!

 直撃しまた距離が離される。

 ……これでは一向に近づけない。


 遠距離技ではあの壁は破れないのに近づけない……


「ちきしょうあの音波攻撃を避けれれば……」


 音波……つまりは音の速度なのかもしれない。

 それ故に速すぎて回避は難しい。


「なんか耳痛えし……なんなんだ?」


 音故か、耳でどうしても音波をキャッチしてしまうのだろう。それにより、耳にも負担がかかるのかも。

 耳から三半規管にダメージも向かうかもしれないし、長期戦はあまりするべきではない。


「無理して突っ込んでもいいが、とりあえずの任務は正さんの武器のチャージ時間を稼ぐためだ。気は進まねえが、ここは時間稼ぎ中心に動くぞ」

「え?う~ん、しゃーねえか」


 とにかく二人は分散し走り回る。意識をこちらに集中させるためだ。


「おいおいなにしてんだ!はっ!」


 つづく音波攻撃。

 距離が離れてても当たってしまう……威力自体はさほどでもないのが救いだが……


「……そろそろ耳も限界近くなってるかもな。ならその状況で、でかいの一発ぶつけたらさてどうなるかね」


 とっておきの一発をぶちかましてくるかもしれない。

 まずい状況……

 ――だがそんなとき、


「チャージ成功じゃ!二人共離れろ!」


 正さんが叫ぶ!

 二人は逃げるように走り去る。


「ん?なんだ?」


 オンガーツはこちらに気づくも、


「遅いわ!ソル・レーザー砲発射!」


 エネルギーが集中され、砲台から極太レーザーが一直線に放出!

砲台の位置は調整済みなためオンガーツめがけて飛んでいく。


超音波壁ナスティウォール!」


 先程の音波の壁を何重にも作り、貼る。

 だが極太レーザーはその壁を突き破っていく。


「無駄だ!そんな薄い壁で防げるほどやわな一撃ではないわ!ワシの全魔力に兵達の魔力も注がれておるんじゃ!お前一人に使うにはもったいない代物じゃ」


 南城と北山が壊せなかった一枚の壁が、ガラスが割れるかのように何枚も砕けてついに最後の一枚へ……


「勝ったな!」


 勝利を確信する正さん。


「かああああああああ!!」

 

 オンガーツは両手に魔力を放ち、音波の衝撃波を飛ばす。

 するとレーザーが曲がっていく。

 

……まさか……


「うらああああああ!!」


 両手を振るうとレーザーは完全に曲がり、オンガーツとは別方向へと進路が変わり、飛んでいく。


レーザーは奴が出てきた砦に直撃。カッと稲光が発生し大爆発!


「うわああああ!」


 砦は跡形もなくなくなったが、もう中には誰もいないし、あまり意味がない。

 オンガーツを仕留めきれなかった……作戦は失敗……か。


「そ、そんなバカな……」


 落胆し、膝をつく正さん。


「なかなかのものだったなあ。でも気づかなかったろ?壁を何枚も貼った理由」

「なんじゃと?」

「割れつつも、レーザーの進路を少しづつ曲げてたのよ。最後の一発で曲がりきったわけじゃない」


 つまり何重も貼ったのは防御のためではなく、レーザーをいなすためだったという事か。


「本当なら反転して、お前らに当ててやりたかったが上手くいかんかったわ。ギリギリだったからなあ」


 手をプラプラさせる。


 ……どちらにせよ奴には、まともなダメージを与える事ができなかった。11の上位ランカーの、とっておきだったというのに……


「……負けだ」


 意気消沈している正さん


「……」


 もう四の五の言ってる状況じゃないかもな。

 俺は動くことにする。それに気づいた正さんは止めにはいる。


「朱雀、お前は切札じゃ。ここで戦わせるわけには……」

「もう……言ってる場合ではないでしょう」


 この期に及んでまだ言う正さんを制し、向かおうとすると……


――ガシッと誰かに手を掴まれた。その相手は……!?



 ――つづく。


「ふ~んなかなか厄介な相手みたいですね。神邏くんなら余裕かもしれませんが、疲弊させたくないでしょうし……」


「次回 秒殺 え?どういう事ですか?」




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