第33話 作戦会議
俺は一直線に自宅へ戻り、その後九竜から詳しい話を聞いた。
「……ボディーガードがいない相手を狙ったのか?奴ら」
「分からないけど、まさかホントにあなたが恐れていた状況になるなんてね……。ボディーガードつける必要なんてないと思ってたあたしが甘かったのかも……」
「……とにかく、助けにいかないと」
「まあ待て」
流れでついてきていた周防さんが止めてきた。……なんでだ?
「一人で来いと言ってないし、軍の者を援軍に呼ぼうじゃないか。軍もローベルト一味には警戒しているだろうし、兵を出してくれるはずだ」
「――そうですね。魔獣とかいう謎の力も手に入れたらしいですし。あたし達だけじゃ手に負えないかも……」
俺としても拒否る理由はない。
7時と時間も指定されてるし、焦っても仕方ないか……
――家のチャイムが鳴る。誰か来たようだ。
「はいはいどちらさまかな〜」
「な、ど、どうしたんだい君たち!血まみれじゃないか!」
大騒ぎする
血まみれの東と北山の二人が立っていた。
いや、北山のほうは東に肩を借りているから立ってるのもやっとなのかもしれない。
「病院にいったほうがいいよ二人共!」
「いえ、大丈夫です。それよりご子息に用がありまして」
「でもね……」
「いいかい美波」
東は俺に気づき問う。頷き部屋へと二人を招く。
「しんちゃん大丈夫なのかい?」
「ええ。おそらく大した事ないと思うんで……」
「やはり軍は大変なんだね。父親としてはあまりいい気はしないよ……」
「俺は朱雀らしいんで、大丈夫ですよ」
それで、なら大丈夫か。とはならないだろうけどな。四聖獣について詳しくないだろうし。
……
部屋に二人を招くと、九竜が驚く。
「その怪我で何しに来たんですか!まさか戦いに参加するつもりじゃ……」
「当然でしょ。美波に協力なんてしたかないけど、この僕に不意打ちでなめた事してくれたからね。少なくともあのバンダナ野郎はこの手で始末しなきゃいられないよ」
「おれも……同じだ、リヴィローはおれの獲物……だ。誰にも渡さねえ」
かたや仕返し、かたや復讐。
二人の気持ちはわかるが……
「でもその傷じゃ」
「こんなの大した事ないよ。こっちのデカいのには応急処置したほうがいいかもだけど」
「いらねえよ……」
つっぱねた北山。
「そんな傷でも戦いたいって気持ちを汲んでやったから、連れてきてあげたんだ。感謝してほしいくらいなんだけどね」
「……わりい、ありがとな東」
「わかればいいよ。ならこれあげるよ」
よくわからない薬を北山は渡された。
「なんだよこれ……」
「痛み止め。それもかなり効くやつね。その仇とやる時に使いな。そのかわり、リスクあって薬の効果切れたら痛みが倍になってくるかもしれないけどね」
「少なくとも戦闘中痛みは消えるわけか……。ならありがたくもらっとくぜ」
なんだか話が進んでく……
もう戦いに行く前提じゃないか。
「ちょっと、だからその傷で行こうなんて!」
「傷だの熱だの行ってられる状況じゃないんだろ?ガタガタ言うなよ。それに僕を仲間外れにしたら絶対軍に入らないよ?」
……東の足元見るかのような発言。そう言われれば飲むしかないだろうな九竜は。
「あとこの北ブツくんもね」
「ブツじゃねえっての」
ちゃっかり北山の参加も決められた。
「どうするの朱雀、無理やり戦ったら死んじゃうかもよ?」
「……言って聞くような奴じゃない。それに一刻を争うだけでなく戦力もほしいし」
「そんな」
「……当然一人で行動はさせないさ。北山の身が一番危険だろうからな」
♢
周防さんは天界軍本部に連絡。
映像が送られてくるとそこには黄木司令と西木さんの姿が
今回の事情を話すと……
「なるほどな。ローベルト一味。やっかいな連中だ。とりあえず南城とアゼルの二人を向かわせる。そして♧の11、
……コレだと前回のローベルトコンツェルン襲撃時とあまり変わらない。
「……司令、ちょっと戦力少なくねえですかね。何ならおれも参加しますよ?丁度人間界来てるわけだし」
「周防さんの言う通りです。今回のローベルトはパワーアップしてるとの話ですし、なんなら自分も、」
周防さんと西木さんが意見するが、
「ダメだ。天界の警備をおろそかにはできん」
「おろそかって及び腰にもほどがありますよ!ローベルト一味倒すだけで、何週間も何ヶ月もいなくなる訳ではないのですから!」
「ほんの僅かでも油断はならない。帝王軍を相手にしてるならともかく、違う相手との戦闘なんてしてたら奴らの思うつぼかもしれんぞ」
聞く耳もたない黄木司令。
ただ戦力を出すのを拒んでいるというのなら、この周防さんも相当な実力者なんだろう。
戦場に出したくないようだし。
「南城門防衛戦……火人殿が亡くなった戦いのときのトラウマでもあるのかわかりませんが、守護ばかり考えて朱雀達が万が一にも殺されたらどうするんですか」
「……何を言われようが上位ランカーは帝王軍以外には使わん。朱雀は別だが」
「……話になりませんね。僕は行きますよ」
そう言うと西木さんは部屋を退出しようとする。
「特にお前には勝手な行動取られては困るのだ。自分の立場わかっているのかお前は。天界四将軍◇の零。現天界最高戦力なのだからな!」
黄木司令の言葉に足を止めずに去る西木さん。
「ちぃ。まあとりあえず話を戻すぞ」
それから黄木司令は作戦会議を続ける。どうやら斥候部隊をすでに送っており、指定場所の確認をさせているもよう。
どうやら奴らのアジトの一つらしく、小さな建物と砦が一つあるらしい。どちらもローベルト一味の物らしく、敵兵がすでに多く陣取ってる。
周囲には人っ子一人いない野原のみ。アジトは首都近くにあるらしいのだが、そんな場所があるとは驚かされた。
砦内にいる兵隊は天界軍の方々でなんとかするみたいだ。強力な兵器を陣取り一網打尽にしてしまうようだ。
その後のアジト攻略は俺達少数の精鋭の出番。
七人衆はともかく、強化されたローベルトは俺達でなければ太刀打ちできないかららしい。
「基本的な作戦はこんなとこだが。人質を取られたりするとどうなるかわからんがな」
誘拐した人物がいる以上、卑怯な手をつかってくる可能性は高いだろうな。
「お前達は時間ギリギリまで休め。少しでも体力回復に勤しんでおくんだぞ」
こうして作戦会議は終わった。
「……納得いかないのは戦力投入の件もですけど、負傷してる東くんと北山くんが戦いに参加する事に対しては反対しなかった事ね。何考えてるのかな司令は……」
上位ランカー参加は反対するのに、戦力になるかわからない負傷兵の参加には何も言わないのは確かにふざけてるかもしれない。
弱い兵の命を軽く見てると思われてもおかしくない。
「まあおれらからしたら助かるけどよ」
北山としては余計な事言われないほうがいいだろうけど……
「しかし西木さんが四将軍とは驚いたな。そんなすげえ人だったのか」
「おそらく四将軍の中でも最強よ。今現在に限れば天界軍最強は西木将軍でしょうね」
「まじかよ。おれの師匠よりも上か……」
最強ならなおのこと天界の守護から離せないということなのだろうな……
♢
――ローベルトside。
――ローベルトのアジト。
「ローベルト様、砦の方へ天界軍の兵らしき者達がぁ……」
リヴィローが報告。
「そうか。来たかね」
「しかしよかったんですかい?人質いるんですし、朱雀一人で来いと言って、人質盾に戦うほうが楽なのでは?」
「なんだ?吾輩はそんな手を使わねば朱雀に勝てんといいたいのか?」
不機嫌そうに睨みつける。
「あ、いえ!そういう訳では……」
「そもそも人質を盾にして、あっさり負けた教団の間抜けがいたではないか。それで確実にいくとも限らん。ただ今日この日に朱雀をおびき寄せる事ができればそれでいいのだ」
人質はただの餌というわけか。
今日にこだわる理由。……まさか神邏の高熱を知っての事なのだろうか?
「それに情報屋いわく四聖獣でもある朱雀を、あまり感情的に刺激しないほうが良いとも言われているしな。するとしても最低限。人質を盾になどすればいらん刺激を与えかねん」
「はあ……そういやその情報屋は?」
「さあな。今日は姿をみせん」
「ちぃ、勝手な奴め。常に付き従い情報を提供しろと言うに……」
地団駄踏むリヴィロー。
とはいえ奴はまだ専属になったわけでもないし、わざわざ付き従う理由などないのだが。
「朱雀には少しでも余裕を持たせて、吾輩との一対一に持ち込めればそれでいい。邪魔な軍はパワーアップした七人衆の貴様らに任せる」
「了解でさあ。まずオンガーツの奴を配備させますぜ」
リヴィローは戦闘準備するべく走り去っていく。
「さあ、左腕の仇取らせてもらうぞ朱雀……いや美波神邏よ」
なくなった左腕は機械のような義手へと姿を変えていた。
……ローベルト一味との再戦の火蓋が今、切られようとしていた。
――つづく。
「高熱なのに大丈夫でしょうか……。心配です。というか私に声かけないのですかね?」
「次回 七人衆の音使い 音?音波攻撃でもするのでしょうか」
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