逆襲のローベルト編

第27話  保健室の美人先生

 ――朝。


 いつものように起き、家族に挨拶し義父の作る朝食。それから準備をして学園へ向かう。


 最近は物騒な事も多いため妹二人に、お隣さんのルミアとその弟くんに妹ちゃんと一緒に登校している。計六人の登校。

 ルミアの妹は小学生なので途中までだが、それが最近のルーティンとなってる。


「天ちゃん行ってくるねぇ~」


 義妹の詩良里ちゃんが、自分の弟に手を振り家を出るいつもの風景。俺も頭撫でたり手を振ったりするのだが、もう一人の妹の莉羅は未だにしない。

 義父の水斗にも憎まれ口こそやめたがまだぎこちないし……


 義弟天馬くんが莉羅にも手を振ってるのだが、返さず家から出る莉羅。


「……たまにはかえしてやれ」

「るさい。いーでしょ別に。小さい子は苦手なのよ」

「……ホントはカワイイと思ってるんだろ」


 顔を真っ赤にして顔を逸らす莉羅。図星か。


「……天馬くんお前に懐いてくれてるみたいだし、影ながらかわいがってたりしてるんじゃないのか?」

「あ~ありえそ〜莉羅恥ずかしがりやだったんだ〜」


 詩良里ちゃんのからかいに怒ったか、先に飛び出して行く。


「……まったく」


 すぐ後を追うために家を出ると、外でルミアとその弟妹の姿があった。


 無愛想な弟に眠そうにしてるロングヘアーの妹、そしていつも笑顔の……ルミア。


「神邏、おはようございます。なんか今、あなたの妹先に飛び出して行きましたけど」


 ……なんかいつもと様子が違う。いつもの笑顔がなく表情に起伏がない。

 一体どうしたのかと思われそうだが……

 そっちのルミアか……と俺は思うだけだ。


「……ああちょっとな。気が短いからあいつ」

「喧嘩ですか?珍しいですね。ルキくん追ってくれますか?一人だと危ないんで」


 冷静に弟に頼むルミア。

 ……弟のルキくんは軽く頭かいて面倒そう。


「……別に危なくなんてないだろ」

「いいから、お姉ちゃんの言う事聞きなさい」

「偶に昔みたいになるとコレだ……」


 愚痴をこぼしつつも、素直に莉羅を追ってくれるようだ。


「……ルキくん悪い」

「別に」


 一言だけ俺と会話して先に行った。


「さてと、私達も行きましょうか。ほら、ルリちゃんしゃきっとしないと」


 眠そうにしてる妹を軽く揺する。


「う~!ルミアうざい!」


 妹のルリちゃんは俺の後ろに隠れてしまう。


「神邏〜手、」


 ルリちゃんは俺と手を繋ごうとするので素直に握ってあげる。

 ぶすっとしてたがこれでニコニコになる。可愛い子だな……

 ルリちゃんは小学三年生なのでまだ幼さが残る。兄のルキくんに似て、普段は無愛想というかムスッとした顔をしてるが、姉や兄と同じく優れた可愛らしい容姿。


「甘えん坊ですみませんね神邏」

「いや、こういう素直な娘のほうがカワイイし」

「姉としてはワガママで困りますけどね……後、私はもっとカワイイですよ神邏」


 ……妹に、それも小さい子相手に張り合うなよと誰もが思うだろう。……俺は気にしないが。

 そして俺は答える。


「……まあ、もちろんルミアもカワイイが」

「ルリのがカワイイもん」


 むくれるルリちゃん。可愛い。


「ルリちゃんもカワイイですけど、お姉ちゃんは世界一カワイイので残念ながら……」

「む~!ルミア嫌い!」

「姉妹喧嘩しない……」


 少し呆れそうになる……

 まあルミアが大人げないのもあるが。


「あの~」


 詩良里ちゃんが手を上げた。


「……しよちゃん?どうした」

「なんかおっぱ、いやルミアさんいつもと違くないかな〜って」


 やっとツッコミがはいったか。

 いつもの笑顔に明るく、子供っぽいルミアの姿がそこにはない。

 今日は少しクールっぽくお姉さんっぽいため、違和感がすごいと誰もが思うだろう。


「……ああそうか。しよちゃんは知らなかったか……。たまに、昔のルミに戻るんだ」

「昔の?二重人格ってことじゃなくて?」

「少し違うかな。別に性格違う時の記憶がないなんてことはないし。それに俺とっては同じルミだし。……何か違うってことは一切ない」


 それを聞くとなんか嬉しそうにしてるルミアの表情が見えた。喜んでるならよかった。

 詩良里ちゃんは首をかしげる。


「う~ん?よくわかんないな。後昔って、前はこうだったの?」

「中学くらいまではね」

「えっ、じゃあこっちの性格のほうが素なの?意外〜!いつもの性格のほうが歴史浅いってこと!?」


 ……信じられないみたいだな。まあ昔を知らない以上仕方ないが。


「どっちも素だよ多分。根っこのところは同じだし」

「変わったってことなのかな?ならたまに戻るって変じゃない?」

「まあ、いつも笑顔で疲れるからじゃないかな」


 俺は特に気にしたことはなかった。ほんとにどっちも同じルミアだと思ってるから。

 二重人格なのか二面性なのかわからないが、ルミアはルミアだし。





……学園に着くと変な張り紙がいたるところに貼ってあった。


「……なんだ?」


 張り紙の内容は……


『学園一の美女を決めよう!生徒諸君にはこれと思った美女に投票を!皆の意見求む』

 

 張り紙の裏には美女崇拝クラブと書いてあった。

 美女の写真とか撮ったりして、女子生徒に煙たがられてる変な同好会の名だ。


「うわ~くだらないな〜」


 詩良里ちゃんはドン引きしてる。ルミアもまた頷く。


「ホントですね。女性を順位付けしようなんて根性が気に入りません。まあ私が一番なんですけど」


 スルーして詩良里ちゃんは中等部に、俺とルミアは教室に向かうのでここで互いに手を振って別れた。

……すると取り囲まれている九竜の姿が。


「おれ九竜さんに投票するから!」「おれだって」「オイラも!」


 さっきの張り紙の件か。

 苦笑いして九竜は礼を言ってる。


 ……なんだかな。


「オッス美波。どうよ、お前誰に投票すんだ?」


 北山が呼びかけてきた。


「おはよう。投票、あまり興味ないんだが」

「そう言うなって、こんなんお遊びみてえなもんじゃねえか。ちなみにおれは姫ちゃんか晶子ちゃんで迷ってる。いやあどっちも好きな相手だからな〜」


 なら一人に絞れって話しだがな。――しかし、


「……先生らになんか言われて中止にされそうなものだがな。前も何かで怒られてたよな。あの同好会」

「……ふざけた同好会ですよね。ほんとに……」


 ルミアは呆れた様子の後、


「――ところで神邏、」

「……ん?」

「もし、投票することになったら誰に投票するんですか?」


 ……なんか目が怖い。


「……まあ入れるなら、ルミ一択だよ」

「あら?そうなんですか?嬉しいですね」


 無表情からニコニコ笑顔に。


「そうですか~。やっぱり私ですよね~フフ」


 いつものルミアに戻ってきた。


 しかし、こんなイベントに乗り気な奴が多いとは、意外だと感じた。

 そんなの気になるものだろうか?


「ふふふ。おれとしてはだな、スーパールーキー九竜姫御子か、リアルアイドル黄間鈴おうますずの二強。どちらが優勝までは読めないがな」


 ……なんか知らない人が俺達の教室に入りぶつぶつほざいている。


「おっ!崇拝クラブの木崎先輩!ちーっす」


 クラスメイトがそうあいさつした。崇拝クラブとはこのイベントの発案者か。

 その木崎先輩とやらはウンウン頷く。


「よきかなよきかな。美女が増えて我々の活動も捗るというもの。誰かしら入部希望いれば我がもとへ……」

「ハイハイ勝手に張り紙貼りまくらないでね」


 木崎先輩の耳を引っ張る大人の女性が現れた。


 前髪にヘアバンドをつけて、オールバック風のロングヘアーの銀髪。胸も大きく、スタイル抜群な美女。背も高く瞳は黄色くパッチリとしてる。

 そんな彼女は何者かというと……


「保険の西先生じゃん。こんなとこ来て何しに来たんだ?」


 そうここの教諭だ。

 保険教諭の西にしヒカリ先生。


「木崎、あんた保険室内にもベタベタ貼ったでしょ。全部剥がしなさい」

「いてててて!な、なんでだよ苦労して貼ったのに……」


 と、モメてるところにドタドタ他の教師もやってくる。


「木崎またお前かー!」「いい加減にせんか!」


 公開説教を受ける先輩。


「に、西先生ご無事ですか!」


 ムキムキ体育教師が声をかけてきた。名前は中堀。


「無事?はぁ……。ただ張り紙の注意しただけなのですが」


 なんか呆れてる西先生。


「なんと!なら、おい!お前も手伝ってやるんだ!」


 中堀先生は俺を指をさす。


 ……


「……え、俺?」

「そうだ一緒に来い」


 なんで俺なんだよと思うが、しぶしぶ付き合う事に。


「なんかサボる口実になりそうだしおれも行くぜ美波」


 と北山も乗っかるようだ。


「いいだろう。だがこれ以上はいらんな。他の連中は授業受けろよ!さあ行きましょう西先生!」

「は、はぁ」


 中堀先生は俺と北山の肩掴んで連れてく。


「あの汗臭さ教師……なんで神邏を選んだんでしょう」


 不機嫌そうなルミア。


「意味なんてないだろ。保険教諭の気を引くために、目に写ったシンを連れてっただけ」


 友人の夏目もまた呆れてた。

 ルミアは顔を青ざめる。


「……下心丸出しで気持ち悪いですね」

「おいおいやけにバッサリ切るな。まあお前、シン意外には辛辣だもんな」

「人聞き悪いですね。別に最低限の優しさはありますよ。誰にでも」

「まあそういう事にしとくか」





 ――保健室。


 俺と北山、それに木崎先輩は貼られた張り紙全て回収させられ、最後に保健室内と、その周辺の張り紙もやっと剥がし終えた。


「ご苦労様。木崎はもうこれっきりにしなさいね」


 と木崎先輩を軽く小突く西先生。


「そうだそうだ!西先生!無事このおれが張り紙回収しましたぞ!」


 声高々に宣言する中堀先生だが、西先生はバッサリ切る。


「ほとんど美波くんと北山くんがやりましたけど?もう終わったなら先生は早く授業に行って下さいね。邪魔なので」


 ……わりと辛辣だった。


「は、はい」


 とぼとぼ帰っていく中堀先生。


「美波くんと北山くん、ありがとね!」


 と、俺と北山の頭を撫でてくる西先生。


「お、おいおい子ども扱いしねえでくれよな先生!」


 照れて手をどかす北山。


「あら?ごめんなさいね。神くんは喜んでそうだからつい」


 別に喜んでたわけじゃ……嫌ではないが。

 すると北山は、西先生が俺を愛称で呼んだ事に気づく。


「ん?神くん?なんか親しそうに呼ぶじゃん先生」

「うんまあね~。妹ちゃんよく来るし、家もわりとご近所さんなの」

「え、そうなのか美波」

「……まあな。莉羅の奴よくお菓子とかもらいに来てるらしくてな」


 近所で、妹が仲いい影響で俺とも少し仲は良かった。……尊敬もしてる。


「先生〜変な気起こすなよ~?こいつがイケメンだからってさ~」


 からかうような顔で笑う北山。

 あまりバカな事言うなよ……


「そうね~神くんの顔は国宝級だし、性格もカワイイから気をつけなきゃね。結構好みではあるから」


 ニコリと返す西先生。……社交辞令みたいなものかな?


「おっと、こりゃやべぇぞ美波、気をつけねえと喰われるぞ。神条に言わなきゃか?」

「……あのな」

「でもまあ少なくとも、今は私忘れられない初恋の相手いるから、それが消えるまではないかな~」


 ……先生にはすでに想い人がいるようだ。ただ忘れられないというのは引っかかる。気になるが、聞くのは野暮だろう。


 北山は関心する態度で、


「へえ。一途なんだな。中堀なんかは可能性ねえわけか」

「……悪いけど、あの人は全然タイプじゃないし、むしろ嫌いまであるんだけどね」

「ふ~んどんな相手なの好きな人」


 ぐいぐい聞く北山。

 いい加減やめとけ……


「ん~内緒」


 と可愛く人差し指を立てた。

 ホント美人だな……


 ……北山が何かに気づき、立ち上がる。


「なんか写真あるけどこの人?」


 写真立てを取る。突然慌て出す先生。


「あっ!それは……」

「へえ、すげえイケメンじゃん。先生もなんだかんだ美形が好きなのか。ほら美波も見てみ……」

「やめなさい!」


 西先生は怒って写真立てを取り上げた。


「まったくとんでもない子……」

「あ~悪い、そんな怒るとは思わなくてよ」

「……さすがに無神経だぞ北山」


 俺は注意した。北山は平謝り。


「だからごめんってば、ごめんなさい」

「……もうしちゃダメよ」

「は~い」


 しかしあの慌てよう。それだけ大事な写真なのだろうか……


 そう考えると、どんな人物なのか少し気になった。写真見れなかったので、予想もつかない……

北山はイケメンと言ってたから、顔がいいのは間違いないのだろう。


 仲良くさせてもらってる美人なお姉さん兼、先生の想い人……。どんな人だろうか?


「あっ、そろそろ授業行きなさいね」


 そういえば……と思う。


「おれは先行くぜ」


 木崎先輩が一番に出てく。というかまだいたのか。


「めんどいがしゃあねえか」


 ぼやく北山と共に俺も出ようとすると……


「あっ、そうそう神くん」


 西先生は何かを俺に渡す。


「多分今日辺りから必要になるかもしれないから。……その時は使いなさいね」


 渡されたのは風邪薬だった。

 ……?よくわからないが、ありがたく受け取り頭を下げる。


 西先生は俺達に手を振りながら見送った。


「……さてと」


 西先生は見送ると椅子に座り仕事に戻る。





 ――西ヒカリside。


 コンコンとノック音がなり、部屋に誰か入ってくる。


「は~い」


 西が振り返ると、そこには九竜が。


「……あら九竜。どうしたの?怪我?」

「先程クラスであなたを見つけて驚きましたよ。……こんなところにいるなんて」

「聞いてなかったんだ。黄木のおっさんから」

「そんなこと聞いてないですよ!」


 つい大声を出す九竜。

 静かにしろと言いたげに、しーっとポーズをとる西。


「アタシがここに来た理由は説得のためです。天界軍にもどってもらえませんか」

「いやよ。面倒くさい」

「そんなこと言わないで。…あなたは天界四将軍、♡の零という最高幹部な上に……」


「四聖獣の白虎なんですから!」



 ――つづく。


「……えっ!?白虎!?いきなりの情報に私達も驚いちゃいましたよ」


「次回 白虎参上 いや、もう出てきてはいますけどね」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る