第17話  誰がだれなのか

 ――翌日。


 早速三人を調べる事にした。

 何故一日あけたかは、後で説明する。


 三人とも同学年だが、別クラスだしどういう人物かもわからない。


「ルミ、なっちゃん、北山。……面識あったりするか?」


 先日事情を聞いてた三人。ルミア、北山、夏目に聞いてみた。


「私、あずまくんとは少し、話した事あります」

東田とうだは前に喧嘩ふっかけられて、ボコった事あるぜ」

比賀士ひがしって奴、確かお前らの友達の大泉?って奴が話してたの見た事あるぞ」


 それぞれの発言。

 比賀士だけは知ってる者はいないようだから後回しにするか。


「……なら東か東田を見に行ってみるか」


 昼休みの時間帯にその二人の教室へ向かう。


「4組か……。離れてるし、全然知らないな」


 ちなみに俺達は1組だ。


 まず教室内を覗こうとしたら……


「おい邪魔だ、どきやがれ」


 声をかけられる。

 その相手を見ると、映像に映っていた東田だった。都合いい。


「よう東田〜久しぶりじゃね~の」


 と、北山がニヤニヤし、煽るかのように話しかける。


「げっ!き、北山!」


 北山を見るなり、東田は逃走しだす。


「待てよ!」


 夏目が壁に足を置いて、東田の逃げ道を塞ぐ。


「ウチの幼馴染がな、聞きたいことあるって言うんだ。……話聞かせろよ」


 ガンつける夏目。


「ヤンキー女の夏目……。なんなんだよクソが!てめえらよってたかってよ!ここんところはなんもやってねえっつーの!」


 ……なにかやったと、因縁つけられてると思ったのだろうか?いきなり弁明しだすし。

 ……しょっちゅう疑われるような事をしてきた男なのか?

 とりあえず落ち着いてもらわないと。俺はまず安心させようと話しかける。


「……別に、ただ話を聞かせてほしいだけだ」

「あ、だ、誰だよお前は……」

「1組の美波だ。それより……について聞きたいことがあるんだ」

「……あ?」

「まあ、その話の前に……。お前、昨日学校休んだ理由は?」


 一日あけた理由がそれだ。

 実は絞り込んだ三人は先日、学校を休んでいた。休んでいたのは二年では、この三人だけで遅刻者もいなかった。


 あの時間帯、あの場所で、遅刻しないで登校は不可能。

 そしてあの場から逃亡した者は、中等部ではなく高等部の制服。そして二年である証拠があった。

 目撃者いわく、制服のネクタイの色は赤だった。俺達の学園は学年ごとにネクタイの色が違い、赤は二年の証拠。


 ネクタイということで女子の可能性もない。女子はリボンだから。


 東田は俺の質問に答える。


「休んだ理由〜?……ただのサボりだ」

「証拠とかあんのか?サボってどこか行ってたか?」


 北山が詰め寄る。対し、東田は首を振る。


「証拠なんてね~よ。サボってまあ、ゲーセンとかパチンコとか行ったかな?」

「パチンコ〜?未成年だろうがテメエは。……で、近くのか?よその町とか行ってねえのか?」

「行ってねえよ!なんなんださっきからよ!おれがどこでサボってようが勝手だろうが!」


 なんか喧嘩になりそうだ。

 ……ここでもめられても困る。


「……北山、もういい」

「え?いいのかよ……」


 別に詳しく聞こうが、魔族なら嘘つくだろうし。証拠がないというなら参考にするだけにとどめたほうがいいだろ。


 もう一度確認する。


「とにかく、あんたは周辺でサボってただけだな?」

「そうだっつってんだろ!」

「ならいい。……最後に、さっき口に出した存在、見たり聞いたりしたことあるか?」

「あ?魔族ってやつのことか?そもそもそんなの知らねえし、なんの話だっつーの!」

「……そうか、知らないならいい。行こう」


 俺達は東田から離れる。


「いいのかよ、もっと問い詰めないでよ。口割らせるようにボコるか?魔族ならそう簡単にいかねえかもだが」

「……人間だったらまずいだろ。それに暴力で解決しようとするのもよくない。それに魔族だったとしても、わざとやられるフリするだけだろ」

「まあそうかもしれねえけどよ。あいつ、わりかし野蛮な事してるヤンキーだぜ?ただの人間だったとしても、かまいやしねえだろ」


 北山は正義の不良をかかげており、中等部時代から他の町のヤンキー共を叩きのめしたりしていたらしい。悪い奴は許せないと。

 昔結構な不良だったらしい、北山の兄のせいなのかも。


 すると夏目も話に入ってくる。


「北山にしめられてからはわりとおとなしいと、聞いたこともあるぞ。……まあなんにせよ、あんなのに関わるだけ損だろ。少なくとも私達は巻き込むな。お前と同じ野蛮猿と思われたくないからな」

「美波と神条はともかく、お前は野蛮猿だろ」


 言った瞬間、顔面蹴り飛ばされる北山。……大丈夫か?勢いよくしりもちついたが……


「さあ次いくぞ、シン」


 ……と、一人先に教室に乗り込む夏目。


「なっちゃん!……仕方無いなまったく……。北山、大丈夫か」


 北山を助け起こす。怪我はなさそうだ。


「いてて……なんて女だよ。おっかねーなホント。あいつはマジ無理だわ。美波の友達じゃなければ近寄りたくもねえよ」


 蹴られた顔をさすり、痛そうにしてる。……全面的に夏目が悪いし、言われても仕方ないか。

 先に文句つけたのは北山だけど。


 だが、一応フォローしないと。


「……まあ、すぐ手がでるのはなっちゃんの悪いところだが、そんなに悪い子じゃない。だから代わりに謝る」

「美波はホント甘えよな」

「……別に甘くない。本当になっちゃんの性格悪いなら、こんなに長く友達やってないからな」

「友達やれてる時点で甘いって。あいつの数少ない友人も美波のおかげだろ?お前いなけりゃ孤独だったろうな」


 おかげというか……

 まあ俺との共通の友人しか、多分彼女にはいないかもだが……

 といっても、俺もそんなに友人多い方ではないが。


 だから一応否定しておく。


「……きっかけはどうあれ、ルミや須藤とも仲良くやれてる。俺がいなくても、上手くやってたと思うがな……」

「どうだかね~って、それよか、おれらも教室入るか」


 4組に入る。

 するとまず目に写ったのは、多数の女の子に囲まれている男。

 映像を思い出すと、この男があずまだろう。

 どうやらモテる男のようだな。

 実際顔立ちは整っているし……


 夏目とルミアは少し離れたところで、その様子を見物してただけだった。


 不信に思った北山は二人に話しかける。


「何してんだお前ら?声かけたのか?」

「……ああいう女共の中に入って、話しかける気にはならないんだよ」


 まあ、夏目はそうだよな。

 ああいう女子、彼女は苦手だろうし。


「何気にしてんだよ。だいたいな……」


 また北山がよけいな事言いそうだったので、軽く口を塞ぐ。


「私も……。なんかおしゃべり中ですし、入り込みづらいですね」


 ルミアも少し抵抗あるようだ。


「それに人気者の東くんに女の子が話しかけたら、なんか角たちそうですし……、いくらそういう理由じゃないとしても勘違いされそう」


 別クラスの、複数の女の子を押しのけるのは気が引けるか。

夏目なら無理やりしそうなものだが、なんか女の子を怖がらせて面倒ごとになりかねないからやらないんだろうし。


 ……仕方ない、


 俺がやろう……。としたら、口を塞がれてた北山が手をほどき前へ。


「女共の扱いは、おれのほうが上手いから任せな!」


 どこからその自信がくるのだろうか……


 北山は東の席へ向かう。

 周りを囲む女子達は怪訝な表情。


 そして、話しかける北山。


「よお東、ちょっといいか」

「なにかな」


 東は爽やかに聞く……が、


「ちょっとなんなのよあんた!」

「そうよそうよ!」

「東君はうちらとおしゃべり中なのよ!邪魔しないでよ!」


 ……女子達が吠える。さあ北山。どう対処するんだ?


「ちっ、うっせえメス共だな。すぐ終わるから黙ってろや!」


 ……どこが扱いうまいのだろうか。


「何よこいつ!」

「うざっ!」


 案の定、ブーイングの嵐。


「まぁまぁ落ち着いて。なにか急用みたいだからさ。少し待っててくれるかい」


 女子達をなだめる東。


「「は~い」」


 ニコニコして女子達は素直に待機。本当に女の子の扱いが上手いのはこの男のようだ。


 そんなモテ男の様子に俺は少し感心する。


「……なんというか、すごいなあいつ……」

「まあ東くんって、学園で一番の人気者ですからね。学園イケメンランキング堂々の1位ですし」


 と、ルミアが補足。


 へえ……

 まあ、ルミアはイケメン好きだからそういうの詳しいのかな?

 と、思ったらくるりと可愛く回って、ルミアは俺に笑顔を見せてから言う。


「神邏くんのほうが数段カッコいいですけどね」

「……世辞はいらない」

「お世辞じゃないですって!神邏くんが目立たないようにしてるから、他の人は気づいてないだけなんです!」


 少しプンプンしてるルミア。

 ……かわいいな。


 気づいてない……か、まあ学園では確かに眼鏡かけたりはしてるが……


 ただ世辞であろうがなかろうが、ルミアが本気で俺の顔を好きなのは嬉しい事だが。


「ま、私もシンのがイケメンだと思うがな。顔バレしたらミーハー連中が寄ってきそうだし、このままでいいんだけど」

「そのために眼鏡してもらってるんですよ。それでもバレる時はバレますが……」


 ……気にし過ぎだろ。それに夏目まで同意するとは思わなかった。

 ……俺が東みたいにチヤホヤされるとは到底思えない。





 ――東を呼び出す事に成功したので話をすることに。


「……まず、あんたに聞きたいことがある。……について」

「……?」

「その前に……だ。昨日休んだ理由、聞いても?」

「ただの病欠だよ」

「病院には?」

「行ったよ。近場の」


 休んだ理由は普通だが……

 すると東の視線が急にずれる。


「ところで神条さんじゃないか。君も知りたいことなのかい?」


 急にルミアの方を向いた東。

 ………


「あ、あはは……。まあうん、そうなんです。だから神邏くんのお話、聞いてあげて?」


 苦笑い気味のルミア。東が苦手なのだろうか?

 そんなルミアを意外に思ったか、なっちゃんが小声で……


「面食いのくせにどうした?」

「……あのですね、確かに面食いですけど、私は神邏くん一筋なの。他の人に目移りなんてこれっぽっちもしないので、勘違いしないように!……あと、ミーハーなのも二次元キャラ限定なの!」


 ちょっとムッとしてるルミア。話の内容は聞こえなかったが。

 小声で何話していたのだか……


 東はルミアに笑顔を見せて言う。


「神条さんの頼みなら、ちゃんと話聞かないとな~。で、他にはなにか?」


 俺は最後に一つ聞く。


「そうだな……。最初に聞こうとしていた事について……」

「ん?魔の者って奴かい?なんのことかは知らないけど」

「見たり聞いたりしたことは」

「ないよ。わけがわからないね君」


 ……まあ、知らない者からすれば、そう思うのも仕方ない。本当に知らないのなら……の話だが。


「あ、東君!」


 一人の女子が寄ってくる。

 ルミアがその子に気づく。


「あ、晶ちゃんですね」

「……武内か」


 俺も知ってる人物だ。

 彼女は武内晶子たけうちしょうこ。ルミアの友人の一人。


 ちなみに……


「おわ!し、晶子ちゃん……」


 北山の想い人の一人。


「東君これ、受けとって!」


 そう言うと、武内は俺達に気づかずに走り去って行った……

 見た感じ、お弁当のようだ。


「やれやれ……参ったな。他の子にももらってるんだけど」


 ……なんか嫌味に感じる。

 しかし、相当モテるなこの男。

 そんな光景を見て、ルミアはポンと手を叩いて納得する。


「そういえば晶ちゃん、東君のファンでしたね」

「ファン?」


 と、俺は聞いた。ルミアは頷く。


「ファンクラブあるんですよ彼」

「……アイドルかなにかか?」


 高校生にファンクラブとはな。


 なんて話してたらはっと気づく。……北山はどんな反応を。


「う、嘘、だろ。し、晶子ちゃん」


 放心状態だった……





 とりあえず東の人となりと、先日の休み理由など聞いたので最後の一人比賀士の元へ。


 そして俺は夏目に聞く。


「とはいえクラスも知らないわけだが……。大泉が知ってるかもしれないのか?」

「確か……だけど。その比賀士って奴、見覚えあったし」


 大泉とは他クラスの友人。


「なら……」


 大泉を探すか……と思ったら。


「朱雀!何故あたしを除け者にしてるんです!」


 九竜が走り寄って来た。

 俺が行動してたことに気づいたのだろう。別に意識してそんなことしたわけじゃないから否定しておく。


「いや、除け者にしたわけでは……」

「ならなんで!あたしと南城をよばないのです!」

「……南城は今日来てないだろ。君はなんか、クラスメイトと話して忙しそうだったから」

「好きで話しかけられてるわけじゃないです!ファンクラブなんか勝手に作られて、いい迷惑なのよこっちは!」


 ……同じくアイドルみたいな人がここにいた。というから迷惑なら、


「……ファンにそう言えば?」

「邪険にしたら可哀想じゃない。あたしのファンなんて言ってくれるんだから」


 なんか変なところで気を使う娘だな……。迷惑なんじゃないのか?


「ところで、最後の比賀士くんを探してるのよね。その子、あたしのファンクラブに入ってきたからクラスわかるわ」


 ……なんともラッキーな話だ。


 さっそく向かい、話かけに行くことに。





 そして俺たちは彼の元へ来た。

 比賀士はいきなりの訪問に驚いた表情をする。


「な、なんだいき、君たちは」


 少しおどおどしてる。

 中肉中背で、容姿も普通な子だった。見た目だけなら怪しくはないが……


「君に聞きたいんだ、について。……いや、それより前に、昨日休んだ理由は?」

「え?いや、その、ちょっとしたイベントがあってさ」


 つまりサボりと言う事か。話をつづける。


「誰かと一緒にか?」

「いや、一人だけど」


 じゃあ立証できるものはいないか。


「そうか。じゃあ最初に聞こうとした存在についてだが」

「魔の、なんとかって奴?し、知らないよ!そ、そんなの。そ!それより」


 九竜を見て、目を輝かせる比賀士。


「く、九竜さん!こ、このおれに会いに来てくれたんだね!おれにも優しくしてくれてたし、やっぱり!運命の」

「え、ええ!?ちょちょっと何!?」


 おどおどしてた態度が一変。

 九竜を前にしたら、づけづけと話しかけ、満面の笑みを浮かべている。

 ドルヲタなのだろうか。


「あ~あ、気のない人に必要以上に優しくするからですよ……」


 少し呆れ気味なルミア。


 仕方ない。……困ってるし助けるか。


「……悪いな比賀士くん、話は終わりだ。ありがとう」


 そういうと九竜を連れ出し、その場を後にする。


「あ~!九竜さ~ん!」





「驚いた。……急に態度かわっちゃって……」


 九竜は驚きを隠せなかった。

 彼、やけに九竜を崇拝するように見ていたな。


「……比賀士くんになにかしてあげたのか?」

「いえ、その、まったく憶えがないのだけど」


 普段から誰にでも親切にしているのだろうか?そのせいで、いちいち誰になにかしてあげたとか憶えてないのかもな。

 良いことだとは思うが。


「八方美人も困りものですね。少し控えたほうがいいんじゃないですか?」


 と、ルミアは警告というか注意した。九竜は、


「えっと、そんな大したことしてきた憶えないのだけど……」


 ……九竜の事は一旦置いといて、話を整理することに。


 三人が休んだ理由の証拠はおそらく誰もない。魔族についても知らないという話。

 ……まあ、そこはとぼけてるだけかもだが。


「証拠とかは軍に調べてもらうのはどう?」

「頼む。……」


 俺は考える……


「なにか気になることでも?」

「いや……。三人共怪しすぎる気がして。……本当に一人は人間なのか?」

「そのはずだけど、なんで?」

「いや、ただの直感なんだが」

「気にし過ぎよ」


 なら、いいのだが……

 とりあえず次はどうするか。


「放課後、三人をつけるか。俺と九竜と北山の三人で手分けして」

「それが一番ね。バレないようにしてね」

「じゃあ誰が誰を担当する?」


 俺は決めている。


「……東田は俺が見る、二人は誰でも構わない。……いや、九竜は比賀士くんは避けたほうがいいか?」

「そうね……。そうしてほしい」


 あの様子じゃ九竜が見つかったら面倒くさいことになるだろうし。それに東は九竜と会ってないし、とぼけやすいかもしれない。


 三人は別れ、行動開始した。



 ――つづく。



「今回出番多かったですね〜。さすがメインヒロインルミアちゃん!」


「次回 儀式 これはどういう意味でしょうかね」

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