1. 家康の上洛と降伏宣言 -6
「ところで、そちらの調子はいかがでしょうか。畿内と四国を抑え、次は九州と伺っておりますが」
「うむ、中国の毛利も儂に従うようになったのはいいんじゃが、九州の島津はこちらの言うことを聞く気がなくてな。戦を止めるよう言っても歯牙にもかけず、仕方なくこちらも侵攻を進めておる。軍の陣容を比較すればこちらの勝ちは間違いないんじゃが...」
「えっ、本気で秀吉殿に抵抗しているんですか?」
「その通り。外交面でも話は進めているが、どうにも畿内の勢力状況を把握してないようでな」
「...誰と戦をしているのか理解していないと?」
「それっぽい」
「うわぁ...」
いくら島津家が九州で勢力を拡大しようと、畿内・中国・四国を傘下に治めた相手との戦は流石に無謀すぎる。
兵数や装備も圧倒的に違うはずだが、現場での情報が上層部に正しく伝わっていないのか、それとも後に引けなくなってしまっているのか。
田舎の弊害というか、中央の情報を把握できていないのはやはり不味い。間違った認識のままでは外交の成果もまともに上がらないだろう。
そういう意味では関東の北条もかなり怪しい。あいつらも本気で豊臣家と戦うつもりだ。
「とはいえ、九州は時間の問題じゃろう。次は関東にも戦を止めるよう命令を出して、戦の世を本格的に終わらせていかねばならん」
「東国の大名で目立ったところでは北条・上杉でしょうか。陸奥の方も争いが絶えないようですし、あの辺りも何とかしなければ。とはいえ、言うこと聞きますかね。特に北条...」
「外交面でも準備はしておるが、正直北条とは1度は戦わないと話を聞かなさそうじゃな」
「あの関東引きこもり勢は関東にしか興味ないですからね...」
「どうせ攻めて来ないじゃろうし、上杉を含めて小田原を包囲するしかあるまい」
やはり北条を頼みに対豊臣戦を始めるとか、やはりどう考えても無理があったな。
周辺勢力と殴り合いながら援軍を出せるのは流石だが、畿内の政情に興味を持たないようでは正しい政治的判断も期待できない。
大軍を送り込む度に真田家に叩きのめされているのが悪いのかもしれんが。
「北条は降伏しますかね」
「分からん。早い段階で諦めてくれれば領地を残すことも考えておるが、あやつらがそう簡単に諦めるとは思えん。小田原で勝った後であれば、降伏されたとしても領地は大半を召し上げねばならん」
「なるほど。北条旧領には豊臣家の一門衆か与力大名を送り込むわけですね」
「いや、実は関東は徳川にお願いしようと思っていてな。家康殿には関東の治安維持を任せたい」
「ほー、徳川家を送り込むと。徳川家.........我々をですか!?」
ちょっと待って欲しい。いきなり何を言っているんだ。
徳川家に小田原入りしろと?関東とか貰っても困るんだが。
領地を加増するには北条領は大き過ぎる。
となると転封、つまり国替えしかないが、そうなれば三河や遠江といった徳川家の主要地域を失うことになる。
慣れ親しんだ三河を失うのは耐え難...いや待て、あの面倒な三河武士の生産地から離れられるのか。
むしろちょうど良い機会の可能性が?むむむ、これは悩むな...。
「その場合、ウチは小田原に入ることになるのでしょうか。実は駿府に拠点を移すことを考えているのですが...」
「そうではない。家康殿には江戸に入って貰いたいと考えておる」
「...江戸?小田原を超えたところにある、あのド田舎の江戸でしょうか?」
「そう、その江戸じゃ」
「はあ、一応存じてはおりますが...。湿地帯と野盗しかいないと噂ですが、あんなところに何の用事があるのですか」
江戸。
北条の本拠地である小田原を越えたところにあるド田舎。
一応、城と城下町はあった気はする。
とはいえ、川だらけの上に入江に面した湿地帯ばかりで、持っていても扱いに困るだけの土地。
川沿いの領地は氾濫に苦しめられることも多く、田畑を耕してもダメになることが多い。
ましてや、人を住まわせようとすれば色々と無理が出てくる。
あんな土地をどうしようというのか。
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