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その質問には戸惑う。

だって、私が中田部長のことを男の人として見てるとしたら変だと思う・・・。




中田部長が私のことを女として見てくれているのは良いかもしれないけれど。

私が中田部長を男の人として見てるとしたら・・・変だと、思う・・・。




変だと思うし、そんな自分に戸惑う・・・。





どう返事をするか悩んでいると・・・





中田部長がゆっくりと立ち上がり、鞄の所へ歩き、ゆっくりと鞄を持った。





それを座ったまま見ているしか出来ず・・・





「帰るね・・・。

いつかでいいから返事をして欲しい・・・。

俺と結婚してくれるか、返事をして欲しい・・・。」




そう、悲しそうに言って・・・。




なんで急に結婚と言い出しているのか分からないままで・・・。

私も、さっきの質問には答えられないままで・・・。




中田部長が玄関に向かっていくのを見て、私も立ち上がった。





その時、部屋の壁に掛けていたカレンダーが目に入った。

そして、思い出した・・・。

私はあと2ヶ月弱で26歳になる・・・。





私は、26歳になる・・・。





26歳になってしまう・・・。





また1歳、歳を取る・・・。





また1歳、歳を取ってしまう・・・。






それを考え・・・






震える口を、無理にでも開いた・・・。






「中田部長・・・」





玄関に着いた所だった中田部長がゆっくりと私に振り向いた。

少し呼吸を整えて、中田部長の元まで歩く。




そして、見上げた・・・。




「12月3日・・・私の誕生日まで2ヶ月弱・・・念の為、お付き合いさせて貰えませんか?」




中田部長は驚いた顔をした後、悩んでいる様子になり・・・




「それ、どこまでしていいの?」




「どこまでとは?」




「男女のこと。」




その質問には、戸惑い・・・




そんな私を、中田部長が真面目な顔で見下ろし・・・











「俺、避妊しないけど。」









と・・・。








その発言で・・・




その、発言で・・・




中田部長が何で急に結婚の話をしているのか少しだけ分かり、小さく笑った。




そして伝えた。




「私、低用量ピルを飲んでいるので大丈夫です。」




中田部長は凄い驚いた顔をしていて、でもすぐに真面目な顔になった。




「分かった・・・誕生日までの2ヶ月弱。

念の為付き合うのに、付き合う。」




「ありがとうございます・・・。」




「それ、今日から?」




「それでも、大丈夫です・・・。」




「キスしてもいい・・・?」




「私、お酒飲んでいるので・・・。」




「そうだった。」





中田部長が困った顔で笑った後、思い出したかのようにスーツのジャケットのポケットからスマホを取り出した。





「瑠美たんの連絡先、教えて?」




「はい・・・。」




「メッセージも電話もするから。」




「はい・・・。」




「また、家に来ていい?」




「はい・・・。」





連絡先の交換が終わり、中田部長が甘い顔をもっと甘くして私を見下ろした。





「“瑠美たん”って、やめてもいい?」




「そうして貰えると嬉しいです。」




「“瑠美”も、2人の時は敬語やめてよ。」




「分かった・・・。」




「名前も“一成君”よりも、“一成”がいい。」




「じゃあ、一成・・・。」





中田部長のことを当たり前だけど初めて“一成”と呼び・・・満足そうな顔で笑っている一成に、私も少し笑い掛けた。




一成が帰って行った後の扉をしばらく眺める。

眺めながらも、まだ戸惑っていた・・・。

26歳になる2ヶ月前に、彼氏というかなんというか・・・





そういう人が、初めて出来た。






急に、出来た・・・。






急に、出来てしまった・・・。






まだ、戸惑う・・・。






だって・・・






「私は、変かもしれない・・・。」






でも、念の為・・・






私の誕生日までの2ヶ月弱は、付き合って貰うことになった・・・。

そのことはやっぱり、女としては嬉しい・・・。

女として、嬉しい・・・。






私は、嬉しい・・・。






私が変だとしても、私は、嬉しい・・・。

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