13話 新たな仲間

 再び神殿に入ったハルキは、驚きのあまり声も出なかった。


「これは…。」


 そこにあったのは、石化したサファイア・ゴーレムの姿だった。何かに身構えた姿のまま、石になって固まっている。そして何より、青聖剣が無くなっている。先を越されたか…。ハルキは俯いて呟いた。考えられるのは…。


  ○ ○ ○


「じゃあ、青聖剣を奪ったのは、ブラックイトコ…?」


「ああ、恐らくな。何よりあの雷が証拠だ。緑聖剣を奪おうとしていたブラックイトコ、ルカは炎の力を持っていた。雷の力を持ったブラックイトコがいてもおかしくない。それに、俺と同じ様に水中呼吸ができる、水の力を持ったブラックイトコがいる可能性も否定はできない。」


 船の中で、ハルキは腕組みをしながら言った。厄介なことになったな。もし予測が正しいとするなら、ダーク・ゴッド陣営に聖剣を奪われてしまったことになる。取り返さないとマズい。


「とにかく、一刻も早く他の聖剣も手に入れてパワーアップしなきゃ。僕の緑聖剣も奪われないようにしないと。」


 タクヤは緑聖剣を手に取って言った。


「そうだな。博士、ここからはどの聖剣が近いですか?」


 タイキが博士に聞いた。


「どこも結構距離があるが、赤と白がまだ近い方じゃな。じゃが、その前に少し寄りたい場所があるんじゃ。」


「寄りたい場所?」


「ああ。この船はしばらく整備しておらんのじゃ。さっきの荒波で部品がかなり痛んだじゃろう。幸いにもこの近くの町に信頼できる職人がいるんじゃ。」


「なるほどな。確かに船の整備は大事だ。でも、メガネくるくる博士から信頼されるような職人って、誰なんだろう。」


 四人は首を傾げた。


  ○ ○ ○


「それじゃあワシは職人を呼びに行ってくる。お前たちはここでしばらく待っていてくれ。頼むぞ。」


 船を小さな波止場に泊めると、メガネくるくる博士は町の方へと歩いて行った。後に残されたイトコたちはしばらく港をぶらぶらしていた。しかし、商業が発展していないこの町では店は少なく、市場らしき場所はすぐに回り終わってしまった。退屈になった四人がじゃんけんをしていると、町の方から突然悲鳴が聞こえた。


「ば、化け物だぁ、助けてくれ!」


「聞いたか、今の?行くぞ。」


 四人は頷き合うと、声が聞こえた方へ走り出した。そこには怪人と、ブラック戦闘員がいて、町を襲っていた。


「ああやって、各地で人々を苦しめて闇エネルギーを集めていたんだな、ダーク・ゴッドの奴、許せねぇ!」


 カツヒロが腕まくりをして武器を取り出そうとした。


「そうだった、俺の斧斬られたんだった…。ブラックイトコめ、許さねぇぞ!」


「待て、素手で突撃するな!一旦相手の能力を分析するために…」


 その時、ダーク戦闘員が吹き飛んだ。


「大丈夫かぁぁぁ、君たち!ここは俺に任せて安全な所へ!」


 ハルキの言葉を突然遮ったのは、素手のマッチョな男だ。健康的な褐色の日焼けした肌の上に直接、赤い生地に黒い模様の描かれた陣羽織のような服を羽織っている。そして顔には、目元の部分だけが開いた赤いヘルメットのような物を被っている。なんとも不思議な格好だ。


「だ、誰…?」


 マッチョな男は次々とダーク戦闘員を吹き飛ばしていく。


「テメェ、よくも邪魔をしてくれたな。こうなったら必殺技だ…。」


 怪人が、マッチョな男に身構えた。危ない、四人はマッチョな男を助けようと、走って行った。


「おっと、君たちは危ないから下がってな。筋肉は全てを解決する!」


 何か必殺技を撃とうとしていた怪人に、マッチョな男は殴りかかった。男の拳がまるで岩のように固くなり、怪人の身体に直撃した。怪人は呻き声をあげると爆発した。


「鍛えた日々は裏切らない。筋肉は嘘をつかない!」


 マッチョな男は豪快に叫んだ。四人は顔を見合わせ、謎の男を眺めていた。この男、何者だ…?

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