14話 筋肉は噓を付かない

「待たせたのう、イトコたち。」


 町の方から数人の男たちと共に、メガネくるくる博士が急いで戻って来た。


「おや、メガネくるくる博士じゃないですか。お久しぶりです!」


「こんな所に。探したぞ、ムッキー。」


 ムッキーと呼ばれたマッチョな男は嬉しそうに博士の方を見て笑った。


「師匠、どっか行くならきちんと言ってくださいよ。探したんっすよ。」


 メガネくるくる博士の隣にいた男が言った。


「すまんすまん、ちょっと怪人退治をしていただけだ。」


 ムッキーはヘルメットを脱いだ。日焼けした短髪の顔。年齢は三十代ぐらいと思われる。


「博士、もしかして職人ってこの人?」


 タクヤが尋ねた。


「そうじゃ。紹介が遅れたのう。こちらがムッキーじゃ。建築や修理が得意な上に、格闘家としても素晴らしい腕前じゃ。まさに文武両道といったところじゃな。」


「いやいや、それほどでも…。」


 ムッキーは頭を掻いた。


「この四人は博士の知り合いですか?」


「そうじゃな。この四人は選ばれしイトコ。ワシはそのサポートをしておる。色々話せば長くなるから、先に船の整備を頼む。」


「分かりました。よしやるぞ、道具を持ってきてくれ!」


「オッス、師匠!」


 弟子たちが町の方へと戻って行く。四人は再び顔を見合わせ、ムッキーを眺めていた。


  ○ ○ ○


「そうなのか、じゃあ君たちは世界の平和の為に、人々を苦しめるダーク・ゴッドって奴と戦っているってことか。まだ若いのにすごいな!」


 ムッキーは感心したように言った。修理が終わり、イトコ四人と博士はムッキーの家に招待された。テーブルには大量の肉料理が並んでいる。


「いやいや、まだまだ俺達は修行が足りない。もっと強くならないと、ダーク・ゴッドどころかその手下の幹部Aにすら勝てない。」


 タイキは拳を握り締めて言った。


「うん、僕はもっと強くなりたい。」


 タクヤも頷く。


「そうか、ならば俺が君たちと一緒に旅をして、特訓してやろう。こう見えて、弟子は百人いるんだ。」


 そう言ってムッキーは豪快に骨付き肉にかぶりついた。


「本当?じゃあ、僕はもっと強くなれる?」


 タクヤは目を輝かせて言った。


「ああ、だが特訓は厳しいぞ。でも、君たちならきっと強くなれると信じている。まずは基礎体力を上げる。これだけできっと強くなれるはずだ。」


「ありがとうございます、ムッキーさん。」


 ハルキが丁寧に礼を言った。


「呼び捨てでいいんだよ。俺も一緒に旅がしたいんだ。仲間に、友達になってくれるかい?」


「もちろん、よろしく、ムッキー!」


 タクヤはムッキーと握手を交わした。


「心強い仲間が出来て嬉しいよ。よろしく。」


「俺は修理技術も教えて欲しいな。」


「特訓が楽しみだぜ!」


 タイキ、ハルキ、カツヒロも、新たな仲間を歓迎した。


「お前ら、いい奴だな、ありがとよ!ほら、もっと食え食え!」


 ムッキーはイトコたちに肉料理を次々と勧めた。日付が変わるまで、イトコたちとムッキーは楽しく会話をしていた。


  ○ ○ ○


「青聖剣サファイアブレードを回収いたしました。」


 暗い広間に、若い女の声が凛々しく響いた。闇の中、四人の少女たちが何者かのホログラムと話している。


「よくやった、ナギサ。それは相性の良いお前が使えばいいだろう。」


 闇の中でホログラムの目が赤く光り、低い声がした。


「ありがとうございます。」


「いーな、お姉ちゃん。私も聖剣欲しい。」


「フウカ、あんたは風のイトコから聖剣を奪いなさい。ルカが失敗した分を取り戻すためにもね。」


 ナギサと呼ばれた少女は、妹、フウカに言った。


「しょうがないじゃない、聖剣に相性があるなんて分かんないじゃない。最初からフウカが行けば成功してたのに…。」


 不満そうに口を挟んだのはルカだ。この四人の中では彼女が一番年長者のようだ。


「まーいいじゃん、ルカ姉は一人だったからさ。ナギサも、アタシの手助けがなきゃ聖剣取れなかったんじゃない?」


 そう言ったのはルカの妹だろう。


「上手いこと水のイトコを利用した甲斐があったわね、ミナリ。」


 ミナリと呼ばれた少女、ルカの妹は得意そうに笑った。


「アシュラ様、次のターゲットは何ですか?絶対に成功させてみせます。」


 ルカがホログラムに向かって尋ねた。


「お前、イトコが憎くないか?」


「…はい。」


「ならば白聖剣を奪いに行け。ギラファの奴が下ごしらえをしている。面白いものが見れるだろう。」


「分かりました。それでは行って参ります。」


 四人の少女は立ち上がる。彼女たちが、ダーク・ゴッドから力を与えられた存在、ブラックイトコだ。

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