12話 サファイア・ゴーレム

「な、生身の人間が海の中に…?」


 突然、ハルキの前に半魚人のような姿をした3体の人影が現れた。人間の身体をしているが、全身が水色と銀の鱗で覆われ、顔や肩にはヒレが生えている。魚の形に似た金色の兜を被っており、先端が三つに分かれた槍、トライデントを持っている。しかし、驚いたのはハルキではなく、魚人たちの方だった。


「我々は蒼玉魚人。何者だか知らないが、ここから先は通さない。」


「俺は聖剣が欲しいんです。ここを通させてください。」


「それは出来ない。引き返せ。」


「仕方がない、戦うしかないか。」


 ハルキはお気に入りの槍を構えた。


「俺は、聖剣を手に入れて、必ずダーク・ゴッドを倒すんだ!」


ハルキは海水を巻き上げて渦を起こした。3人の蒼玉魚人たちは水流に巻き込まれて遠くに流されかけた。


「危ない所だった。だが我々は魚人。水中戦なら我らが上だ!」


 3人の魚人は素早く泳ぎまわり、ハルキを翻弄する。その時だ。ピカッ!突然閃光が輝いた。次の瞬間、魚人たちの動きが鈍った。


「し、痺れる…、何が起きたんだ…?」


 魚人たちは混乱した様子で、完全に動きが止まっている。カツヒロだな、海水はある程度は電気を通すことを利用して助太刀をしてくれたのか。ハルキは心の中で感謝を呟くと、神殿の中に入って行った。


  ○ ○ ○


「久しぶりの客だ。」


 太い声が神殿内に響いた。ハルキは思わず身構えた。その時だ。床が割れ、下から巨大なゴーレムが現れた。青い体に、城壁のような金色の鎧を着ている。そして胸には、大きなサファイアが埋め込まれている。


「我はサファイア・ゴーレム。青聖剣サファイアブレードの守り主である。」


 サファイア・ゴーレムの後ろに、青聖剣が見える。あれを使えば、強大な力が手に入る…。


「俺は水のイトコ、ハルキ。青聖剣が欲しい。」


「一人で我に挑むとはいい度胸だ。だが手加減はしない。」


 そう言ってサファイア・ゴーレムはハルキに向かって手をかざした。


「うっ、凄い水圧だ…。」


 ハルキは必死に歯を食いしばって耐える。しかし、水圧はますます高くなるばかりだ。前から激しく水が流れてくる。


「その程度ならお前に聖剣を渡す資格は無い。帰れ!サファイア・ボンバー!」


 サファイア・ゴーレムはハルキに向かって拳を突き付けた。拳の形をした巨大な衝撃波がハルキに直撃し、彼の身体を海面まで押し出した。


「うっ、痛ってー…。」


 海岸にいた四人の元に、突然ハルキが海の中から背中から飛び出して来た。ハルキは砂浜に打ち付けた背中をさする。


「おいハルキ、大丈夫か…?」


「流石に一人じゃキツかった。でもカツヒロ、途中で手助けしてくれてありがとう。」


 ずぶ濡れのハルキは、息を切らしながら言った。


「え、俺?何もしてねぇんだけど…。」


「いやいや、お前、雷落としてくれただろ。あのおかげで魚人は倒せたんだぜ。」


「いや、俺ずっとタイキとタクヤと一緒に砂のお城作ってたんだけど…。」


 見ると、すぐ傍に作りかけの砂のお城があった。


「お前ら、暇かよ!でも、それじゃあ、あの雷は一体…?」


 ハルキはしばらく宙を見上げ、考えていた。そして突然叫ぶ。


「まさか、マズい!ちょっと確認してくる!」


 どうしたんだ?四人は慌てて海に入っていくハルキの姿を眺めていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る