11話 海底神殿とハルキの覚醒

「この海域を超えた先の島に、青聖剣が…。」


 五人を乗せた船は、青い波に揺られている。聖剣の力の影響だろうか、天気は良いのに波は強い。遠くの方に、小さく島が見えた。確か青聖剣はあの島の辺りにあったはずじゃ。メガネくるくる博士は言った。


「うぅ、僕船酔いしそう…。」


 乗り物酔いしやすい体質のタクヤは、苦しそうな顔をしている。


「ここから行くしか無いのか?もっと波が穏やかな場所とか…。」


「いや、あの島の周辺はどこも同じじゃ。今ならまだ引き返せるが、どうする?」


「答えは、一つ。進むだけだ。行くぞ、みんな!」


 ハルキは威勢よく言った。やっぱり、青聖剣が欲しいんだな。船は荒波に飛び込んで行く。五人は必死で、大きく揺れる船にしがみつく。三十分ほどの間暴れる海をかき分けて、船はなんとか小さな島へと辿り着いた。


「本当に、この島に青聖剣があるんだな?それにしては全然何も見えないが…。」


 小さな無人島は、真ん中になだらかな丘があるだけ。後は何も見えない。


「おかしいのう、昔はこの辺りに青い神殿があった気がするんじゃが…。」


 メガネくるくる博士も首を傾げている。


「島を間違えたんじゃねぇか?仕方ない、もう一回探すか。」


 タイキは砂浜に座り込んだ。流石聖剣があると言われる海域。透き通るように綺麗な海だ。海底までよく見える。おや、あれは…?


「おい、ちょっと来てみろ!早く!」


 なんだなんだ?ハルキたちは慌ててタイキの方へ向かった。


「ほら、あそこ。海底に遺跡みたいな物が見えるぞ!」


 指さした方向には、間違いない、遺跡だ。神殿のような建物が真ん中にあり、周りにあるのは家の残骸だろうか、大きな石の破片があちこちに転がっている。


「あれじゃ。きっとあの神殿の中に聖剣がある…。」


「でも、海の中だぜ。どうやって行くんだよ?」


 カツヒロは言った。海岸から急に深くなっているため、島のすぐ傍であるにも関わらず、海底までは水深15メートル程もある。簡単に潜れる深さではない。


「俺は泳ぐのは得意じゃないしな…。博士、何かいい道具とか無いのか?」


 タイキが尋ねた。


「海に潜る道具は、無いことはない。じゃが、海の中で聖剣の守り主と戦うだけの耐久力は無いじゃろう…。」


「そんな、じゃあ、青聖剣は手に入らない…。他の聖剣を回るか…。」


 ハルキはしょんぼりとした様子で言った。


「本当に、それでいいのか?」


「…?」


「ハルキ、お前は水のイトコだろ?水を操ることが出来るんじゃないのか?」


「どういうことだ、タイキ…?」


「お前が本気になれば、水中呼吸が出来るかもしれねぇってことだよ。」


「無茶言うなよ!いくら超能力じみたことが出来るとは言っても、水中呼吸なんて俺には無理だ。」


 ハルキは諦めた様子だ。


「やって見なきゃ分からねぇだろ。お前はいつも理性的だ。その作戦でいつも俺達を助けてくれる。だが、時にはぶっ飛んだことをしてみてもいいんじゃねぇか?俺達は選ばれしイトコだ。水中呼吸も出来ないようじゃ、お前は水のイトコとは言えねぇよ。お前なら出来る。」


 タイキはハルキを見た。ハルキは強く頷いた。


「分かった、やってみる。」


 ハルキはゆっくりと、海の中に足を踏み入れて行った。足、膝、腰、胸、首…。ついに、頭まで全てが水の中に沈んでいった。ハルキは息を吐きだすと、勇気を振り絞って水を吸い込んだ。その時、ハルキの身体が青く光った。


「この感覚…、体が水と一つになったみたいだ…。」


「あれは…、800年前の彼らと同じじゃ。懐かしいのう…。」


 水中を眺めていたメガネくるくる博士は、少し驚いたような懐かしい表情で呟いた。ハルキは海底遺跡の中を一人、神殿へと進んで行く。

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