9話 求める強さ

 五人は山の中腹にたどり着いた。地図に印がある場所だ。開けた場所になっていて、中心に豪華な緑に輝く神殿のような物がある。神殿の真ん中には日本刀の様に細長い、緑色の刀が見える。


「あれが、聖剣…。」


「あれ、僕欲しい!強くなりたい!」


 タクヤが聖剣に向かって走って行った。その時だ。神殿の裏から大きな緑色のワイバーンが現れた。高さは2~3メートルはあるだろう。翼を広げればもっと大きく見える。胸には緑色の四角い大きな宝石がついている。


「これが、守り主…。」


「そうだ。私の名はエメラルド・ワイバーン。簡単に聖剣を渡すわけにはいかない。」


「いやいや、渡してよ~。お、ね、が、い♡」


 タクヤが投げキッスをして、皆身震いをした。


「引き返すなら今のうちだ。手加減はしない。今まで800年間、この聖剣を手にした者はいない。」


「800年…。」


 ハルキは腕組みをして何か考えている。一方のカツヒロとタクヤはというと、戦う気満々だ。


「私は、聖剣を手に入れる!」


 ルカが腰の剣を抜いてワイバーンに立ち向かっていった。ワイバーンは翼を振る。すると、竜巻が巻き起こり、ルカは吹き飛ばされてしまった。


「うぅ…。」


「その程度か?」


 ワイバーンは笑い声をあげた。口の中には鋭い牙が並んでいる。


「いや、、まだまだだ!」


 タイキが炎を出し、ワイバーンを燃やそうとした。しかし、ワイバーンが起こした風に吹き消されてしまう。


「その力、まさか、イトコが蘇ったのか…?」


 ワイバーンは一瞬呟いた。すると、ワイバーンの胸の宝石が光った。


「ならばこちらも本気で行こう。変身、エメラルド・ナイト!」


 ワイバーンは頭からつま先まで緑と金の鎧に包まれた騎士の姿になり、聖剣を手に取った。


「この姿になるのは久しぶりだな…。」


「そっちが武器使うなら、こっちも使うぜ!」


 カツヒロが斧を持ち、エメラルド・ナイトに向かって行く。しかし、聖剣がカツヒロの斧を斬った。


「え、俺の斧がぁ!こうなったらやけくそだ!オラァ!」


 カツヒロは雷を纏い、エメラルド・ナイトにぶつかって行った。バチバチバチっと音が鳴り、閃光が走った。


「クッ、何…?」


「剣も鎧も金属だろ?電気をよく通すんだぜ!」


「燃やし尽くしてやる!タクヤ、頼んだ!」


 タイキは炎を出した。タクヤは竜巻を起こし、炎の渦でエメラルド・ナイトを包んだ。


「僕の弓矢、初登場!」


 タクヤは弓矢を構え、エメラルド・ナイトに向かって矢を連続で放った。エメラルド・ナイトは倒れた。


「よっしゃー、勝った!」


 四人はハイタッチをして喜んだ。信じられない、といった顔で、ルカはそれを眺めている。しかし…。


「これで終わりだと、思うな。」


 なんとエメラルド・ナイトは立ち上がり、再び聖剣を構えた。


「え、強すぎないか?」


「聖剣の守り主の力を侮るな。そもそも、何のためにお前たちは聖剣を手に入れようとしているんだ?」


「それは…。」


 四人は言葉を失ってしまった。そもそも何の為に聖剣を手に入れようとしていたのだろうか。ただ単に目的も無くルカについて来ただけじゃないか。その時だ。


「僕は力が欲しいんだ!」


 タクヤが叫んだ。


「僕たちは、幹部Aに家族も友達も奪われた。だから、あいつらを倒したい!皆を苦しめようとするダーク・ゴッドも、倒してやりたい!だから聖剣が欲しい!もっともっと強くなりたいんだ!」


「そうか、なるほどな。」


 エメラルド・ナイトは仮面の下からタクヤを眺める。


「だが忘れるな。強さだけが力ではないし、力だけが強さではない。お前ならいつかその意味が分かるだろう。ここはサービスしておいてやろう。エメラルドソードはお前に託す。」


 次の瞬間、強い風が木々を揺らした。エメラルド・ナイトは消え、その場には緑聖剣エメラルドソードだけが残されていた。

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