第6話 新キャラ登場
東山は関を打ち負かしてやったと爽快感に満ち溢れていた。
小さくコンビニのトイレでガッツポーズをしてしまう。
トイレから出て、500mlのストロング缶を3本手に取りレジに向かう足取りは軽かった。
この時の東山の財布の中には親からくすねた金ではなく、Youtubeで稼いだ金が入っていたのだ。
締め日近くから配信を始めたとは言え、振り込まれた金額は50万円となっていた。
店を出て早速、プルタブを開くと、綺麗な音色が聞こえてきた。
爽快感から早くも二本目の缶を手にする。
一本目の缶は途中の家と家の隙間に投げ込んでいた。
部屋に入ると、ムッとした空気を感じる。
四六時中この部屋にいたので気にならなかったが、外に出たことと、爽快感から感覚が正常になっていたのかも知れない。
目が覚め、カーテンの隙間から外を見るとオレンジ色になっていた。
さてさて、今回の出張設定で視聴者はどんな反応をしているのか?
俺も先輩たちみたく、金を持っていると思ってくれるのか?
さあ、どうだ。
高揚した気持ちのままスマホを操作しながら、器用に焼酎の水割りを作り一口。
飲み込もうとする動作と、驚きの余り「なぜ」と発しそうな動作が重なり、むせ返りそうになる。
コメントには
捲れたな。
嫌、あれは相手にしていないだけ。
ただのお茶目。
嘘は良くないな。
庇った発言と擁護の発言が半々だった。
手が震えだす。
脳の処理が全く追いつかない。
心臓が暴れ出す。
どういうことだ。
登録チャンネルをチェックする。
指の動きは、関のチャンネル欄で止まる。
関がリポーターの恰好をしてマイク片手に笑顔のサムネイルだった。
それだけなら、別にいつもの関だ。
ただ、背景が昨日のコンビニのトイレと全く同じだったのだ。
どういうことだ。
なぜバレた。
心臓が破裂しそうになる、嫌な汗が止まらない。
風呂なしアパートがゆえに何日も入っていないので、むせかえる室内に悪臭が漂うのが自分でもわかる。
振るえる指で動画を開くと、満面の笑みで「ここは何処でしょうか?沖縄のホテルです。」と言いながら、コンビニのポスターが写り込むように撮影をしていた。
更には、沖縄まで来たんだから会ってくれるんじゃないの?と小ばかにした口調で言っている。
最後は…
俺の背後に映ったポスターの一部と、関の背景が並べた状態で映し出され、コンビニの扉が開いた際に鳴るメロディが流れていた。
胃の奥からむせ返るものを感じながら、どうすれば良いんだ。
考えろ。
恐らく奴は俺の家の近くまで把握している可能性がある。
でも、正確な場所までは知らないはずだ。
配信を辞めて以前の生活に戻ることもできるが、親の財布からくすねて小言を言われ続けるのも嫌だ。
親父に小言を言われ続け、アパートの窓から飛び降りて自殺を試みたこともあった。
ただ、部屋がアパートの一階だったから軽くコケて擦りむいただけで終わった。
まだ、完全にバレていない。
視聴者も擁護してくれている。
この時の東山は、捲れたという発言を全てアンチと捉え、怒りを爆発させていた。
怒れば怒るほど、自分に都合の良いストーリーを脳内で作り上げていく。
まずは、含みを持たせ、「違うな」とYoutubeのコミュニティに書き込むことにした。
視聴者の反応を見ることにした。
この先、関と関わってはどんどん捲られ、ドツボにハマってしまう恐れもある。
まず、自分のチャンネルを固めて行かなくてはいけない。
ヤードを使用し、視聴者参加型のライブにすることで、関の介入を遮断しよう。
そして、アイツが一方的に触れてきても無視をすれば良い。
そうこうしている間に、コミュニティ欄に多くのコメントが書かれていた。
いくつかは批判的な内容もあったが、粗方は肯定派だった。
早速、ヤードを使って配信をしてみる。
視聴者から関の動画について聞かせたが、アイツの印象操作だ、と一蹴した。
早速、視聴者がヤードにアクセスをしていた奴がいた。
関だったので、拒否をする。
他にももう1人いた。
ハンドルネーム、ブラックX。
ヤードに上がるとブラックXは早口でしゃべりだす。
「東山さんはご存知かわかりませんが、Youtubeで喧嘩三万戦無敗を豪語し、格闘家をアイアンクローで頭蓋骨割ったと言っている人がいるんです」
この時点で眉唾だとおもったが、どこがオカシイのか具体的なところはわからなかったが、うん、と相槌を打つ。
更にブラックXは続けて話す。
「昨日の配信で、過去に暴走族連合の奴をワンパンで肋骨と前歯全部をへし折ったと言っていましたが、聞いたことありますか?」
東山は過去の記憶を呼び起こすも、そんな話なんて聞いたことがなかった。
待てよ…。
なんかおかしいな…。
何がオカシイのか具体的なことはわからない…。
「聞いたことねえな。なんて奴なの?」
「狭山のタイソンって人です。」
なぜか同じ匂いを感じた。
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