第2話 Youtubeデビュー
東山はタクシーで大田区にある公園についた。
突撃したら動画に残ってしまう。
少し不安に駆られるも、別に失うものなんて何もなかった。
唯一、恐れたのは今の自分が晒されてしまうことだ。
暴走族時代の仲間たちの多くはビジネスで成功している、中には刑務所暮らしもいるが、今もビッグネームとして脚光を浴びている。
自分はと言えば、アルバイトすら長くできず、父親の年金にパラサイトしている子供部屋おじさんだ。
現実は痛いほどわかってはいるが、暴走族時代の仲間たちと今も同格であると信じたいプライドもある。
コンビニでアルコール度数の高いストロング缶を買い、一気に飲む。
大量にアルコールを摂取したことで、呂律も怪しく、千鳥足になっている。
現実世界なのか、妄想なのかの判断もつかなくさせ、自分に言い聞かす。
大山だけは、許せなかった。
確かに渋谷で有名なチームのリーダーをしていた。
けれども、その後は期間工として工場を転々とし、タクシードライバーをしていたが、解雇され部屋にこもっていた。
別にビジネスで成功したわけでもなんでもない。
しゃべりは面白いのは認めるが、お前も俺と同じ子供部屋にこもり、地中にいるモグラだろ。
地上を目指したくでも、目が日の光に耐えられない生き物だろ。
なのに、なんで日の光を浴びているんだ。
そんなことを思っていると、怒りが沸々と湧いてきた。
大山の家は一軒家だった。
一周まわってみると、裏側の二階に光が差している。
おそらく、そこの部屋で配信をしているはずだ。
スマホを取り出してみると、捲り屋関がライブを始めたという通知が来ていた。
少し気になりながらも、今は大山だと、ライブを確認すると気持ちよさそうにしゃべっていた。
まずは、チャットを打ち威嚇をする。
そして、電話をしながら威嚇しつつチャイムを連打。
これで行こうと、すかさずチャットを打ち込む。
大山は反応をした。
「俺がフカシているってコメントはブロックしますねぇ。王様が負けるわけねーだろ!」
高圧的な発言に怒りが更に湧いてきたので、電話をするとすぐに出てくれた。
「先輩がお前なんて雑魚に負けるわけないだろ!お前、俺に会えるのかよ。俺がこの目になったら止まらね~ぞ」
少しドスを利かせた声で威嚇をする。
「君は誰なの?そんなアンチいらいないから。何もわかってないね。」
「俺は暴走族連合鬼緑党の東山だよ。面倒だからお前の家まで行ってやるよ」
そう言いながら、大山の自宅チャイムを連打する。
画面越しに、大山は驚愕した顔を見せていた。
完全に怯えた顔を見て心が満たされていく、これでアイツのメッキも剥がれ視聴者離れも進むだろうとほほ笑む。
ふいに後ろから肩を叩かれ振り向く。
そこには、少し小柄な男性がスマホ片手に立っていた。
よく見ると、その人物は捲り屋関だったのだ。
急な展開に脳が処理しきれず硬直をしてしまう。
関は笑顔で語り出す。
「面白い展開だね。次のターゲットを大山君にしようと思って現地調査ライブをしていたんだ。少し、その先輩の事を聞かせてくれないかな」
東山は関が捲りにくる可能性は感じていたものの、こんなに早く来るなんて思っていなかったので、心臓が暴れ出す。
冷静になれ、冷静に…。
ポケットからスマホを取り出し、関のチャンネルを確認すると、タイトルに「捲り屋次のターゲットの自宅へGO!」と書かれていた。
脳が処理しきれていない。
俺はどうすれば良いんだ。
顔まで出されてしまった。
困惑していたら、関が笑顔を見せしゃべりだす。
「大山君のライブ凄いことになっているよ。閲覧が1万人を超えている。暴走族連合は警視庁に半グレ組織として認定もされているから話題沸騰だよ。
俺のライブで顔まで出ちゃったから君も配信してみたらどうだ。」
関はスマホを奪い勝手にライブ配信を始めてしまった。
「君の先輩の話は今度でいいよ、せっかくだから、このまま配信をするといいよ」
完全に何が何だかわからない。
勝手にスマホを取られ配信ボタンを押され、しかも、大山と関の視聴者が流入してたことで、閲覧人数が3000人を超えていた。
関にはムカつきながらも、泥酔状態だったこともあり、大山の家の前で、ただただ暴言を吐き続けた。
スマホを見ると、それだけなのに多くの喝采が、今までにない快楽を与えてくれたのだ。
大山がライブ中に警察に電話を始めたので、急いで逃げ、タクシーを拾い帰路に着く。
本当に意味不明な状況だが、地中から地上へ出られた気がした。
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