エピローグ

 僕は、一人残った教室で俯いていた。


 ___「それは、いじられキャラってことじゃないかな?」___


 担任の先生に言われた言葉。思い切って相談した勇気ごと、切り裂かれた気がした。


 僕は太りやすい体質で、周りの子よりも一回り大きな体つきをしている。そのことを、小学生の頃からいじられていた。それが中学生になって、「デブ」「臭い」「あっちいけ」なんていう言葉に変わっていった。

 決して殴られたりする訳では無い。体にはあざ一つ無い。でも、日々浴びせられる言葉たちは、刃物となって心に傷をつけていった。

 荷物を背負っても、帰る気になれない。

 ゆっくり窓辺に近づいた。木漏こもれ日が眩しい。


「ねえ、そこから飛び降りようとでも思ってる?」


 驚きで肩を上下させた後、恐る恐る後ろを振り向く。


「もし凶器をもった変質者が学校に入ってきたらって、考えたことある?」


 そのは、こちらに歩みを進めて隣に肘をかけた。


「私はね、暇なときにそれを想定して逃げ道を考えるの。」


木実このみ 遥香はるか』と書かれた名札が揺れる。


「一緒に逃げ出しちゃおっか!」


 そう言って、木実このみ先生は白い歯を見せて笑った。

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青春冒険隊 桜 師恩 @chikawalove

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