第14話「いじめた側が100%悪い」

「うーん…じゃあ、席とかを離して欲しいってことかな?」


 教育相談の時間。

 そんな、曖昧な返事をしたのは担任の先生だ。


 思い切って、いじめのことを打ち明けた。七夏ななかに敵視をされるようになり、無視など悪口がエスカレートしていったこと。仲のよかった月晴つきはが私にとった行動のこと。それらのことで、自分がどう感じたのか。

 冷静になりたくても、口にすればするほど、怒りの感情があらわになった。

 相談というよりも、一方的に私の気持ちをぶつけただけになってしまったのかもしれない。

 …けど、けれど、その感想はあんまりではないか。『寄り添う』ということが能にないのかと思った。

「辛かったね」

 の一言もない。この怒りは、先生に対してのものなのか?と、不思議に思いながら、諦めた。


「…はい」


 そう言って、俯くことしかできなかった。




「生徒の気持ちに寄り添えないのかなっ!?」


 私はスクールバッグを乱暴に置き、叫んだ。


「ちょっと、はるはる!かばんへこんじゃうよっ」


 あおは慌てて地面から私の鞄を持ち上げ、表面を手で払った。


「もう別に、鞄なんてどうでもいい」


「よくないでしょ!まだあと三年使わなきゃいけないんだよ?」


 確かに、一年生のうちにボロボロにはしたくない。


「ものに罪はない!」


「た、確かに…」


 正論を突きつけられ、何も言い返せなくなる。


「それより、『生徒の気持ちに寄り添えないのか』って、何?」


「あっ、それが、さ……」


 本題を思い出し、学校であったことを話す。


「はぁ?!何それ!!」


 あおの持ち上げた石が、大きな音を立てて地面に打ちつけられた。


あおちゃん!ものに罪はないよ!!」


「あ、そうだった……にしても、なんなのそれ」


「なんか、さ。まるで、いじめられてる私にも原因がある、みたいな目されて。私、自分が悪いのかなって、よくわからなくなっちゃって」


「悪くない!!」


 力強く手を握られる。


「はるはるは、なんにも悪くないよ。いじめた側には、『うざかった』とか、『嫌いだから』とか、何か理由があるのかもしれない。けどね、例えどんな理由であっても、いじめた側が100%、いや1000%悪いんだから!!」


「うんっ、うん。…ありがとう」


 あおにそう言い切ってもらえて、とても安心した。

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