第12話「告げる真実」

 放課の時間。

 私はたまに、暇になると手を洗う。汗で手がベタつくと、どうしようもなく無性むしょうにそれを洗い流したくなるのだ。

 蛇口から生ぬるい液体が零れ落ちてきた。試しに他の蛇口もひねってみる。結果はすべて同じだった。

 外は真夏日。真夏日などもう、日常になってしまった。

 こんな暑い日には、冷たい水が出て欲しいと思う。暑いから水道管が暖まってしまうのだ。暖かい水は、手が凍ってしまう冬に出て欲しい。


 手に伝うぬるい水が余計に体を暑くした。



 あの後、私は親にいじめのことを告げた。

 泣きながら打ち明ける私に、母と父は優しく頷いて、あおと同じ言葉をかけてくれた。

 息苦しい程に重たくのしかかっていた何かが、すっと軽くなった気がした。


 席替えが行われ、私は七夏ななかと離れることができた。

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