4. 異世界ほのぼの日記2 136~140


-136 きっかけを思い出す-


 真希子の突然の登場により動揺しつつ乾杯の音頭という大役を務めた結愛は冷えたジョッキの生ビールを煽りながら自らの席に戻った、着席するなり肴として提供されている揚げたての鳥のから揚げを頬張り冷えたビールで流し込んだ。


結愛「ああー、やっぱりこういった祝いの席で呑むビールは格別に美味ぇな。」

光明「おいおい、お前が主役みたいになってんじゃねぇか。」


 今日の主役のはずの夫はジョッキ片手に顔をヒクヒクさせている、目の前では真希子が豚の角煮に壺から辛子を出してつけようとしていた。

 小さな匙でちょっとずつ加えていく。


真希子「あんたら結婚してからも相変わらずだね、高校時代とちっとも変わらないじゃないか。」

結愛「おば・・・、おば様。私達はいつまでも私達ですから、変わらなくて当然だと思いますよ。」

真希子「そうなのかね、という事はうちの守はいつまでもド変態という事だね。」


 母の言葉が聞こえてしまった息子は鼻からビールを吹き出しかけた、隣で好美が首を縦に振っている。彼女が言うのだから間違いない。


守「母ちゃんも好美も皆の前で何言ってんだよ。」

好美「だって本当の事だもん。」


 テーブルを囲む全員が好美の言葉で爆笑していた、良い話のネタになった様だ。


結愛「あはは・・・、あいつら相変わらずだよな・・・。それにしても光明、どうしてラルクが犯人って分かったんだ?義弘とパントリー・クァーデンの事は疑わなかったのか?」

光明「そうだな、この事件が発覚する前にリランから会社に理不尽な電話があったの覚えているか?」


 魔獣保護養育施設の事で言い掛かりの電話をして来たことを嫌々ながら思い出した。


結愛「嗚呼・・・、あの面倒くせぇクレーム電話な。」

光明「義弘は未だに豚箱ン中だし、クァーデンは刑が軽くなって釈放されているけど義弘と共謀してまで娘の為に動いた奴だぞ、娘が疑惑を持ち始めたのに犯行を続けると思うか?それに刑務所ン中で更生したって聞いているし、ただ勿論あいつらの事は信用してないけどな。」

結愛「でもラルクがこっちに来てたなんて思いもしなかったぜ。」

光明「そうだな、神様もミスするんだな。何か親近感湧くぜ。」


 すると天界から聞き覚えのある声が、あのビクター・ラルーだ。


ビクター「だから悪かったって言っているだろう、約束通りラルクもちゃんと幽閉しているんだから許してくれよ。」

光「えっ、この声誰・・・?」

ビクター「おっと久々だな、光。元気にしてたか?」

光「いや、どちら様ですか?」

ビクター「悪い、こっちじゃ分からないか。(元々の声で)私だよ。」

光「神様?!光明君と何かあったんですか?」

ビクター「一緒に事件を解決したんだよ、元々私の手違いでラルクをこの世界に送ってしまったからな。そうだ、席空いているか?」

好美「大丈夫ですよ、椅子持ってきますね。」

ビクター「助かるよ、俺も今日は楽しく呑みたい気分だからさ。今すぐ行くわ。」


 すると、空から「三つ巴の三姉妹」の3人より一回り大きなドラゴンが降りて来た。煌びやかな鱗が月明りに照らされ輝いている、その輝きに順番待ちをしていた客が男女関係なくうっとりとしていた。


客①「上級古龍だわ、こんなに近くで見る事が出来るとは。」

客②「向こう5年はいい年になりそうだ、ありがたや。」

ビクター「さてと、何処に座れば良いかな。」


 ただ1つ問題が。


好美「すみません神様、その姿のままだとお席をご用意しづらいのですが。」

ビクター「そうだな、申し訳ない。それと今日のお代は全部俺が持つから。」


 今の言葉が聞こえたからか、空から別の古龍が降りて来た。なかなか見えない光景に感動の涙を流す客が沢山いて「暴徒の鱗」前は騒ぎになりかけていた。


-137 恐怖が始まる-


 店前で古龍がまた降りて来て店前で並んでいる客がざわついていたので、調理場での作業を離れたイャンダが行列の整理に向かっていた。


イャンダ「お客様、落ち着いてお並び下さい。従わない方には麺1本も売りませんよ。」


 馬鹿な台詞を吐く店長に拳骨をする副店長、どっちが上の者なんだか。


デルア「脅してどうするんだよ、お客様申し訳ございません。他のお店の迷惑にならない様に端によってお並び頂きます様、ご協力お願い申し上げます。」


 2人が行列の整理とお客の抑制を済ませた横で先程降りて来た2体目の古龍が人化していた、手に財布を持った「三つ巴の三姉妹」の次女であるセリー・ラルーであった。


セリー「お父様、先程お代を全部持つと仰っていましたが財布を忘れては1円も払えないではないですか。」

ビクター「私とした事が、面目ない。」

セリー「もう、この前の洗濯物と言い、今回の忘れ物と言い、最近ケアレスミスが目立ちますわよ。」

ビクター「お恥ずかしい限りです。」


 この世界でも父親は娘にタジタジな様だ、古龍と言う存在を少しだけだが身近に感じた。

 セリーから財布を受け取ったビクターは改めて席に着いた、ちょうど次女のバイトが休みで助かったとほっとしている。

 父親は礼がしたいらしく娘を自らの隣に誘うと、セリーは好美の方をチラッと見た。


セリー「オーナーさん、宜しいのですか?」


 勿論新規のお客様は歓迎だし、神様が呑み食いしに来たとなると心から自慢できる事実となるだろう、断る理由などない。


好美「勿論です、すぐにお席をご用意致しますね。」


 素面だと言える位に冷静な判断をする好美、ただ呑みに来ただけだというのに従業員の1人の様に対応する。ただいつになったら落ち着いて呑めるのだろうか、ただ渚と光だけは何もなかったかのように親子の盃を交わしている。

 騒ぎが落ち着くと全員屋外のテーブル席に着席したが知らぬ間に酒の肴の殆どが減ってしまっており、代わりに何故か茶碗が何重にも積まれている。


好美「どういう事?」


 理由は即座に発覚した、渚に光、そしてナルリスがいるのだ。そうともなれば・・・。


光「ごめん、夕飯代が浮くと思ってガルナス呼んじゃった。」


 好美含めた「暴徒の鱗」のメンバーは愕然としていた、今現在の在庫不足と以前の事を思い出したからだ。友人であるマーメイドのメラがいないのが唯一の救・・・い・・・。


ガルナス「メラ、お代わり貰おう!!」

イャンダ・デルア「お・・・、終わった・・・。詰んだ・・・。」


 この大盛況の状態でこの大食い2人がいるという事は確実に今の在庫では不足してしまう、一先ず落ち着きたいので店長と副店長は今回の事態が起こった時の様に増台した炊飯器内の白飯を確認しに行った。

 普段は炊飯器が2台あれば十分なのだが、念の為に12台まで増台させている。一先ず全てをフル稼働して大食いたちに対抗・・・、いや対応することにした。

 屋外テーブルの近辺に満タンの炊飯器を6台設置し、セルフでのお代わりし放題の状態にしておく。これでホールの者が動く心配はほぼほぼなくなるだろう、まぁ料理が無くならない限りなのだが。


デルア「こりゃ全部を大盛りで作るしかないかも知れないな。」

イャンダ「明日の仕入れを倍にしないとだな、ちょっと電話しとくわ。」

デルア「お前は作る方を優先しろよ、この状況で電話なんてする余裕なんてないだろうが。」

バイト①「通します、屋外席に叉焼⑤唐揚げ⑩麻婆豆腐④です。それと炊飯器4台追加お願いします!!」

バイト②「通します、屋外席に生中⑥焼き餃子③春巻き⑩です!!」

イャンダ・デルア「来やがった・・・、もう今日は伝票置くだけで良い!!」


 調理場で重たい中華鍋を振り始めた2人、その表情は完全に職人そのもので「竜騎士(ドラグーン)」の面影はこれっぽっちも無くなっていた。


-138 試練の後はまた試練-


 先程から滝の様に溢れ出て来る伝票の注文を2人で手分けして何とか捌いていくイャンダとデルア、しかしその勢いはとどまる事を知らない。それもそうだ、この大忙しのタイミングで大食いである女子高生2人が馬鹿食いしているから当然の結果といえよう。

 明朝の時点での在庫について全く考える余裕も無く、2人はずっと包丁を握り中華鍋を振りまくっていた。ただデルアは知らぬ間に制服に着替えていたのだが。

 勿論追加の白飯も間で用意する、ただ決して余裕を持って行えているとは言えない。多分外では空っぽの炊飯器がズラッと並んでいるに違いないので、合間を縫ってバイトに取りに行く様に頼んでいた。

 厨房で数台もの炊飯器が同時にフル稼働している様子は中々見ない光景だ、ただその光景を見る余裕など全く持って無い。

 その2人に新たな試練がやって来る、何処からどう見ても他の客からの注文とは言えない伝票を見て副店長は愕然としていた。


デルア「屋外テーブルに五目炒飯⑩、焼豚炒飯⑤、キムチ炒飯⑤だって?!どんだけ飯食うんだよ。」

バイト①「副店長、炊飯器2台持って行きます。」

デルア「まさか、おかず扱いか?!」


 しかしそれ所ではない、普段炒飯には一度冷まして水分を飛ばした白飯を使っているのだが元々白飯を用意出来ていなかったので当然の様にそこまで出来ていない。


イャンダ「仕方ない、これを使うか。火力強くしたら大丈夫だろう。」


 目の前の炊飯器に手を延ばす店長、ただその炊飯器をバイトが目の前でひょいっと持ち上げてしまった。


バイト②「店長持って行きます、後屋外テーブルの五目炒飯⑩急ぎだそうです。」

イャンダ「そのご飯だけは・・・。」

バイト①「店長大丈夫ですって、まだ数台炊けてますから。」


 しかし疲労で倒れそうなイャンダから見れば炊飯器までの距離が近くて遠く感じる、店長は1口水を飲んで炊飯器を取りに行った。普通は炊飯器の所に白飯を取りに行くのだが、今日だけは炊飯器ごと運ばないと正直追い付かない。

 ただ水分を多く含んだ炒飯がパラパラになるのだろうか、現在コンロ限界の火力で調理しているので十分な強さだと思われるがやはり弱く感じたのかイャンダは悩みに悩んだ末に中華鍋と飯の焦げ覚悟で最終手段(と言うより賭け)に出た。

 熱々のはずの中華鍋を右手で掴んで左手を差し出す。


デルア「お前、まさか・・・?!」

イャンダ「『火球(ファイアボール)』!!」


 すると10人分の白飯の上に手のひらに比べて一回り大きな火の玉が浮かんだ、2重の火力で白飯の水分が一気に飛んで表面に油と卵を纏った白飯が醤油や塩胡椒で味付けされて美味そうな炒飯に調理されていった。


イャンダ「流石に熱い(あちい)な。」

デルア「そりゃそうだろ、お前火傷するぞ。」

イャンダ「そんなの覚悟の上だよ、それよりキムチと焼豚頼めるか?」

デルア「大丈夫だ、他の客足が落ち着いたから任せとけ。」


 女子高生2人の食欲と酒呑み達の勢いが爆発したまま数時間経過した頃、先程まで行列をなしていた客たちを全員捌き切ったのに伝票はまだ勢いよく印刷されていた。


デルア「今日1日で何回紙変えないといけないんだよ。」

イャンダ「でももうすぐ交代の時間だ、デルもよくやったな。」


 しかし不自然な事が発生している、通常シフト上でこの曜日の夜勤を担当しているニクシーのピューアが好美の横で呑んでいる。嫌な予感がした店長はシフトを確認した。


イャンダ「アイツ・・・、今日有休だった・・・。」

デルア「嘘だろ、これがまだまだ続くって事か?!」

イャンダ・デルア「ちょっと待ってくれ・・・。」


 水をがぶ飲みする2人を横目に未だに勢いよく印刷される伝票、女子高生達の胃袋はブラックホールなのだろうか。

 そんな中、そろそろ対策を練らないといけない事態が起きていた。一応バイト1人を調理場に置き食器洗浄機をフル稼働させていたが容器の洗浄が追いついていない上に、そのバイトも注文を取りに屋外テーブルの方へと行ってしまう始末。

 絶望した2人の元竜騎士達は白目になり、その場に倒れかけていた。


-139 燈台下暗し~救世主はすぐそこに~-


 行列をなしていた客足がやっと落ち着いたので、合間を見てこまめに水分を取りながら皿洗いをしていた2人は汗だくになっていた。息切れしつつずっと鍋を振り続けていたのだ、そうなっても決して不自然ではない。

 2人はずっと辺りを見回していた、まるでいなくなった猫を探すかの様に。


イャンダ「こんなに皿が積まれるのは久方ぶりだな、俺ら明日生きているかな。」


 ふと調理場内の掛け時計を見ると22時を指していた、アルバイトの帰る時間だ。今からは夜勤のピューアも有休なので2人でずっと対応する事になってしまったのだが注文された料理を作ろうにも器が無いので出せない、そんな中でデルアは通路を挟んで隣接する「コノミーマート」の方を見ていた。


イャンダ「なぁデル、この世界に救世主って・・・。」

デルア「いた。」


 デルアは最後の力を振り絞り藁にも縋る思いで救世主の元へと向かった。

 丁度その頃、「コノミーマート」ではバイトを終えたスライムのプルが携帯を片手に店から出て来た。


プル「お疲れさんです、お先に失礼します。」

イェット「お疲れ様、明日は休みだったね。ゆっくりしなよ。」

プル「はーい、ん?光はんからや、何やろ・・・。」


 プルがふと携帯の画面を見ると光からメッセージが届いていた。


光(メッセージ)「「暴徒の鱗」の屋外テーブル席で呑んでます、バイトが終わり次第プルもおいで。」

プル「何やて、すぐに行かな。ふふふ・・・、ビールビール。」


 その時、息切れしながら「暴徒の鱗」店内で1人にやけが止まらないプルを必死に引き止める声がした。「暴徒の鱗 ビル下店」の副店長、デルアだ。

デルアが必死にプルを引き止める横でイャンダが必死に中華鍋を振っている。伝票の勢いは落ち着いてきたが未だに注文が来ているのは間違いではない。ただ1つ今言える事は、デルアの見つけた救世主とはプルの事だったのだという事。


デルア「プルちゃん・・・、助けてくれ!!皿洗いが追いつかない、頼めるのはプルちゃんだけだ。無理も承知なのは分かってる、勿論給料色付けて出すから頼むよ。」

プル「えっ?!でも私今から光はんと呑むんです。」


 すると、未だに中華鍋を振っているイャンダがとあるチケットを懐から出した。その光景を見たプルは目を輝かせていた。


イャンダ「折角呑みに来ているのを無理矢理引き止めているのはこっちだ、給料も渡すがこれも欲しくないか?」

プル「それは・・・、まさか伝説の?!」


 10枚綴りになっているそのチケットは通常1杯(または1本)単位で売っている生ビールや瓶ビールがたった500円で好きなだけ呑み放題になる採算超度外視と言われた超レア物だった、勿論大赤字覚悟のチケットなのでこの「ビル下店」で手渡せるのは店長のイャンダのみとなっている。光やオーナーの好美どころかこの世界の殆どの住民が喉から手が出るほど欲しがる憧れの珍品・・・。


イャンダ「店長権限であげようじゃないか、勿論今日の分は手伝ってくれた場合への礼にするからこのチケット無しで好きなだけ呑んで良い。」

デルア「でも流石にプルちゃんバイト後だから・・・。」

プル「やります、やらせて下さい!!」


早速プルは調理場に入り人化を解除してスライムの姿になると大きく膨張して食器の汚れを捕食し始めた、先程まで汚れたまま積まれた器がどんどん綺麗になっていく。


イャンダ「凄いな、もう終わるじゃないか。」

プル「スライム舐めんとって下さい、汚れ食うだけなんでこんなん一瞬ですよ。」

デルア「熱いままなのだがこの中華鍋も大丈夫か?」

イャンダ「流石に無茶だろ、流石に火傷するぞ。」

プル「ウチ自身温度低いですし、中身は水なんで平気ですよ。」


 デルアから中華鍋を受け取ったプルはギトギトの油汚れを捕食してすぐに副店長に手渡した、どうやらイャンダ達の不安はプルからすれば小さい事だったらしい。ただ2人は大助かりだと汗を拭っていた。


-140 余裕の救世主と仲間達-


 ものの10分足らずで積まれた皿汚れの洗浄(と言うより捕食)を終えたプルは早速人の姿に戻りイャンダから報酬の入った封筒と例のチケットを受け取った、未だ伝票は止まっていないが先程までと比べて勢いは弱まっているので後は自分達で何とかするという。


プル「あの・・・、こんなんでいいんですか?」

イャンダ「勿論、約束だからな。ありがとう。」

デルア「ほら、俺からのお礼だ。呑んでくれ。」


 調理場からデルアが自らキンキンに冷えた生中を持って来てプルに手渡した、今日の1杯目を受け取ったスライムは勢いよく煽った。


プル「ぷはーっ、これの為に生きてますわ!!」

デルア「大仕事を終わらせた後だからよっぽどだろう。」


 プルからすれば全くもって大仕事とは言えなかったが、目の前の副店長が言ったのでそういう事にしておいた。

 プルがジョッキ1杯を吞み干すと、今度はイャンダが生中を持って来た。


イャンダ「俺からもだ、ほら。」


 プルは1杯の様に受け取った生中を煽る、よっぽどと言える位今日のビールにありつきたかったのだろう。

 お礼のビールを呑み干したプルはジョッキを店長に返却して光達の待つ屋外テーブルへと向かった。

 屋外テーブルでは光達が美味そうな料理を肴に様々な種類の酒を呑んでいた、奥では大食いで有名な女子高生達が注文用のハンディ片手に食事をしている。


光「プル、遅かったじゃない。」

プル「すんまへん、ちょっと色々ありまして。」


 光はプルの左手に目をやった、例のチケットと今日の給料が握られている。


光「あんた、何でそれ持ってんの。」

プル「実はさっきここの調理場で皿洗い手伝ったら店長はんがくれたんです。」

好美「という事は・・・、本物?!」

プル「勿論、直接貰ったんで。」


 実はこの「ビール吞み放題チケット」、本物は札の様に透かしなどといった偽装防止策がなされているのだがそれでも何とかビールを好きなだけ呑もうと偽者を作ろうとしている大馬鹿者が多数存在しており、それに伴い偽物が多数出回っていた。しかしプルが貰ったのは紛れもなく本物だ。


光「やったじゃないか、大事に使いなよ。ほら、今日は神様の奢りだから好きなだけ呑みな。」

プル「はい、早速頂きます。」


 熱々の鶏の唐揚げを小皿に取って1口、そこに冷えたビールを流し込んだプルは何とも嬉しそうな表情をしていた。


プル「これの為に生きてる様なものです、人生最高の瞬間ですわ。」

光「あんた、スライムだし産まれてから1年も経って無いのに言うじゃないの。」

プル「ええやないですか、嬉しいんですから。」


 楽しい席にまた1つ笑顔が加わった、本当にこの世界の者達は酒が何よりも好きらしい。

一方その頃、光の横で夫のナルリスが料理を噛みしめる様に味わいビールを呑んでいる。


光「どうしたの、真剣な顔して。」

ナルリス「どうしたらこんなに美味くなるのかなと思ってさ、ほらガルナスがあんなに食らいついているだろ。」

光「あれはいつもの事じゃない。」

ナルリス「あ、忘れてた。」


 こういった笑いが絶えないこの世界がやはり何よりも大好きな光は星空をも肴にして呑んでいた、好美はこの場で酒の勢いを借りて守との同棲を決めたという。

今日の主役である渚と光明は互いを称え合いお酌をしながら呑んでいる、どうやらずっと日本酒を酌み交わしている様だ、真希子は焼酎をロックで1人呑んでいる。

結愛は女子高生達が馬鹿食いしている様子をずっと眺めながら楽しそうに呑んでいる、しかし食べても太らない体質に驚きを隠せない。

この世界は不思議に溢れているが人間味も溢れて楽しい事はずっと変わらない。≪完≫

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夜勤族の妄想物語 佐行 院 @sagyou_inn

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