4. 異世界ほのぼの日記2 131~135


-131 神様のミス-


 光明と結愛には盲点があったようだ、確かに義弘や義弘派閥、クァーデンは関与していない。しかし日本の貝塚学園で義弘と共謀した奴の事を完全に忘れてしまっていた。


光明「あいつはラルク・・・。まさかアイツの顔を見る事になるとは、しかしどうやってこの世界に来たんだ。」


 そう、「お頭」の正体は当時国際的に指名手配されていた凶悪犯のラルクだったのだ。

光明が頭を抱えていると潜入メンバー全員の脳内に聞き覚えのある声がして来た、どうやら『念話』と同じシステムの様なので犯人グループ達には聞こえていないらしい。


声(念話)「すまない、私のミスなんだ。」

光明(念話)「もしかして、神様ですか。」

神様(念話)「嗚呼・・・。普段は善良な日本国民に第2の人生をと思って、この世界での便利な生活をプレゼントしていたんだ。ある日、とある日本人を送った際に霊魂として現れた奴が紛れ込んでしまってな。お前は駄目だと必死に止めようとしたんだが、速すぎて止める事が出来なんだ。ミスとは言え、こちらの世界では善良に生きてくれると信じていたんだがな。これに関しては私に責任がある、私もこやつの逮捕に協力させてくれ。そうだ、私が警部として地上に降りて奴を逮捕しよう。すぐに行くから待っていてくれ。」


 作戦の為、失礼も承知で神様を必死に止める光明。


光明(念話)「神様、申し訳ございません。お気持ちは嬉しいのですが、実は敢えて泳がせて奴らの目的と証拠を押さえてから逮捕しようと思っていたのですが。」

神様(念話)「そうか、しかし洞窟側の犯人グループ達が逮捕されては泳がせても仕方がない上に証拠の為の下級魔獣達も渚達が解放してしまったぞ。ミスリル鉱石も王国軍が回収しておるみたいだ、その場で逮捕するのが最善策では無いのだろうかと思うぞ。光明よ、今ならまだ逮捕できる、決意を決めるのだ。」

ドーラ(念話)「それにしても神様もミスをするものなんですね。」


 神様が返事をしようとすると、ある女神の声がした。どうやら神様同士だと言うのにかなり家庭的な原因でお怒りの様だ。


女神(念話)「お父様、脱いだ服はちゃんと裏返してから洗濯に出す様にいつも言っているでしょう。」

神様(念話)「すまぬ、娘よ。明日からちゃんと守るから。」

女神(念話)「もう、今度やったら皆にビール1本ずつ奢って貰いますからね。」


 そう言うと女神はその場から離れて行った様だ、神様は改めて光明に聞いた。


神様(念話)「失礼・・・。それで光明よ、どうするのだ。」


 光明は潜入メンバーの目を改めて見まわした、皆光明の判断に従うと言う表情をしている。どうやらドーラも同じらしい。


光明(念話)「神様、宜しくお願い致します。」

神様(念話)「相分かった、それと皆が無事に作戦を遂行できる様に私が加護を与えよう。」


 一瞬、潜入メンバーの体が光った。光明は授かった加護を確認すべく、ステータス画面を出した。そして、画面上の文字を見て驚きを隠せなかった。


光明(念話)「「ビクター・ラルーの加護」・・・、「ラルー」ですって?!」

ビクター(念話)「何だ、いつも私の娘達が皆に世話になっているから知っておるのかと思ったぞ。」


 そう、この世界に日本人達を送って来たのは「一柱の神」で「三つ巴の三姉妹」の父親である上級古龍(アーク・エンシェント・ドラゴン)のビクター・ラルーだったのだ。

 そのビクターが自ら操作に協力しようと言っている、こんなにありがたい話はない。


ビクター(念話)「では、私が外から突入するので潜入したまま待っている様に。よく頑張ってくれたな、これで終わりだ。」


 その瞬間、外でサイレンの音がけたたましく鳴っているのが聞こえた。パトカー数台分聞こえる、それに何処から呼んで来たのか分からないがヘリコプターの音もした。


ビクター「お前ら、警察だ!!大人しくしろ!!」


 人化して警部の恰好をしたビクターが古龍と思われる部下(らしき人物)達を引き連れて突入してきた、必死に逃げようとするラルク達を神達が囲んで足止めする。潜入メンバー達はマスクを取り、そしてドーラは懐から拳銃を取り出し逮捕劇に参加し始めた。


-132 逮捕-


 数人の部下(らしき人物)達が先程から囲んで足止めしているラルクに上からのしかかり動きを制限している中にビクターも参戦し始めた、胸ポケットから警察手帳らしき物を取り出している。ご立派にも中にはしっかりと制服姿で撮影したと思われる写真が入っていた。


ビクター「天界警察のビクターだ、ダンラルタ王国における外界への違法で不当な下級魔獣とミスリル鉱石の売買及びバルファイ王国での魔学校生誘拐と婦女暴行、そして殺人未遂と人身売買容疑で逮捕する。(※スラスラと台詞を言っていますが天界警察というものはございませんので悪しからず)。」

ラルク「くっ・・・、どこで見てやがった・・・。」


 上から部下(らしき人物)たちが体重をずっとかけているので苦し紛れに質問する元国際指名手配犯、そのラルクを自らのミスでこの世界に送ってしまった上級古龍は力を強めながら答えた。


ビクター「俺含め天界にいる者をナメてんじゃねぇ、お前がこの世界に来てからずっと空から見張ってたんだ。」

ラルク「この世界に来た時からだと・・・?!」

ビクター「お前は行っては駄目だと止めたのに制止を振り切って無理やりこの世界への門に飛び込んだだろう、私の顔を覚えていないか。」

ラルク「やっぱり見覚えあると思ったら、あの時の・・・。」

ビクター「思い出したか、ミスとは言えこっちの世界では善良な市民として真面目に生きてくれると信じていたのにいとも簡単に裏切りやがって・・・。」

ラルク「俺を信じてくれていたのか・・・、そんな奴は初めてだ。くっ・・・。」


 ラルクは顔を背けて涙を流し始めた、体が小刻みに震えている。


ラルク「長くなるが、昔話を語って良いか?」

ビクター「何だ、聞こうじゃないか。」

ラルク「俺は幼少の頃に親からの虐待を受けた挙句に捨てられてな、1人泣きながら真っ暗な夜道を歩いて毎晩の様に公園で寝泊まりしていた。流石に怪しまれたさ、そして警察に保護されて施設に入った、ただそこの奴らも担当教師も親を失ったボロボロの俺の言葉を誰一人信じてくれなかったどころか口を開けば罵倒される日々だったんだ。俺は何度も施設を飛び出そうとした、その度にまた警察の世話になって施設に戻される。施設長は俺の顔を見る度に怒り、そして俺を殴った。そしてずっと「お前は信頼できない」と言われ続けた、施設長が担当教師や他の奴らと共謀して俺をいじめた。俺は耐える事が出来なくなってまた施設を飛び出した、出来るだけ遠くに。流石に最後飛び出した時は教師たちも無理だと思ったんだろうな、誰も探しに来なかった。俺は寂しかったのかもしれないが、自ら捨てられる事を選んだ。それからは自分を守れるのは自分だけだと思い、金の為なら何でもやろうと犯罪に手を染めてしまった。後悔ばかりの毎日だったが、生きる為だったんだ・・・。」

ビクター「馬鹿野郎、お前に人生があるのと同じように誘拐され売られた子達にも人生があるんだ。それが分かっていたら人身売買なんて出来なかったはずだ。」

ラルク「いくら金の為とは言え、本当に悪い事をしたと思ってる。本当に申し訳ない。」

ビクター「反省しているか?」

ラルク「嗚呼・・・、勿論だ。」


 すると、ビクターは洞穴の出入口に向けて指パッチンをした。すると部下(らしき人物)たちが子供達を連れて来た。


ラルク「何でだ・・・。」

ビクター「お前の人身売買の相手はもう既に警察が逮捕している、お前が子供達を売り続けていた奴は警察の人間が変装していたものなんだ。少しでもお前の罪を軽くするために皆に協力してもらっていたんだぞ、感謝しろよな。」

ラルク「うう・・・、あり・・・、がとう・・・!!」


 ラルクは大声で泣き叫びながらお礼をし続けた、そして大人しく護送車に乗り込もうとした。そのラルクを光明が引き止める。


光明「俺の顔を覚えているか、ラルク。」

ラルク「お前・・・、あん時のガキか・・・。」

光明「嗚呼・・・、うちの学園でもこの世界でも好き勝手に暴れやがって、俺達貝塚財閥は絶対お前を許さないからな。」

ラルク「そうか・・・。」


 一言呟き護送車に乗るラルクの横で被害者となった子供達が家族との再会していた、両親と思われる大人たちが涙ながらに子供達を抱いて迎えていたのを見た副社長は・・・。


光明「子供か・・・。」


-133 軍隊長の表裏-


 光明が親子の再会を目の当たりにして干渉に浸っている横で、後から合流したプニ率いるダンラルタ警察とムカリト達王国軍の手によって犯人グループ達が逮捕されていった、ただ主犯格(リーダー)のラルクはビクターが連行するとの事だった。

 一先ずドーラがプニに大丈夫なのだろうかと尋ねてみたのだが・・・。


プニ「流石に「一柱の神」である上級古龍(アーク・エンシェント・ドラゴン)に逆らう訳にはいかないだろ。」


 との一言だった。

 これは後から分かった事なのだが、ラルクは元の世界で犯し続けた犯罪の事もあるので天界にあるこの世界で最も厳重とされる牢獄の奥深くに幽閉される事が決まったそうだ。その厳重さにはネルパオン強制収容所など足元にも及ばない。この世界での最高神の集まりとも言える「一柱の神」の意志に背きこの世界に無理矢理転生し、犯罪を繰り返していたのだから当然の罰とも言えよう。


ラルク「なぁ警部さん、1つ質問して良いか?」

ビクター「どうした?」


 元国際指名手配犯は未だ警部の姿をする上級古龍に質問した、ラルクは未だにビクターの事を本物の警部だと思い込んでいる。


ラルク「天界ってのは・・・、あの世の事なのか?俺はやっとあの世でゆっくりと過ごせるのか?」


 上級古龍はあまりこういった質問をされた事が無かったので少し考え込んだ。


ビクター「うーん・・・、難しい質問だな・・・。ただあの世ではないと思うぞ、この世界での死者が天界へと向かう訳ではないからな。」

ラルク「そうか・・・。」


 ラルクの両手首に手錠を取り付け、ふんわりと浮かび上がって天界へと連行して行くビクター達を地上の王国軍隊や警察官たちが敬礼しながら見送った。「一柱の神」と共に大きな一仕事を成し遂げた事を誇りに思っているのだろう、プニやムカリトを含めた数人は感動の涙を浮かべていた。


ムカリト「これで世界が救われるんだな、神に感謝だ。」

プニ「そうだな、兄貴。」

ムカリト(変声解除)「馬鹿、「姉貴」だって言ってんだろ。俺は女だぞ。」


 プニはムカリトの事を未だに男性だと勘違いしているままの王国軍隊員もいるだろうと気を遣ったつもりだったのだが、姉からすれば自らの性別などもうどうでも良い事らしい。軍隊長は『変声』を解き、軍帽を脱いで堂々とした姿で立っていた。ただ、ムカリトが女性だと発覚したが故に驚愕した王国軍の隊員(ホークマン)達がいない訳が無い。

 実は隊員たちはずっと違和感を覚えていた、実は王国軍の王宮での入浴時間は規則で決められているのだが何故かムカリトだけは時間をずらして入る事が許可されていたのだ。


軍隊①「そう言う事だったのですね、軍隊長とてもお綺麗です。」

軍隊②「一目ぼれしました、俺と付き合って下さい!!」

ムカリト「お前らは馬鹿か、公衆の面前だぞ。」


 逆にプライベートの時間なら良いのだろうか、ただムカリトが顔を赤らめている事は間違ってはいない。どうやら急に男性達にモテだしたのでどうやら満更でもない気分になっている様だ、少しウハウハとした気分になっていた。しかし冷静さを取り戻したムカリトは隊員たちに打ち明けた。


ムカリト「お前らすまん、俺には今彼氏がいるんだ。」

軍隊②「えっ、誰なんですか?」


 そう言うと遠くから軍隊長の制服を着たバルタンが遠くから飛んで来た、ムカリトにずっと手を振っている、どうやら例の彼氏らしい。

 ムカリトが彼氏に手を振り返すと、そのバルタンは着陸してムカリトを抱いた。先程まで男性の様にキリっとして仕事をこなしていた軍隊長がいつの間にか互いに服装を変えて涙目で甘え合い長々とディープキスをする様子を見て隊員たちが驚愕し、落胆した。


ムカリト「ウィダン、会えなくて辛かったし寂しかったよー。早くよしよしして!!」

ウィダン「頑張ったな・・・、よしよし。」

軍隊①「隊員同士の恋愛ってありだったんだな、ウィダン軍隊長が羨ましいぜ。」

軍隊②「おいおい・・・、見せつけてくれるじゃねぇかよ・・・。」

プニ「皆さん、姉たちが何かすみません・・・。」


-134 犯人逮捕の影響-


 王国軍の軍隊員が軍隊長カップルに呆れかえっている中、光明が親子たちの感動の再会をずっと眺めて感傷に浸っていた。


光明「子供、親子、家族か・・・。」


 今思えば結愛と結婚して以来仕事ばかりの日々がずっと続き夫婦らしい事をした覚えが全くない。

 正直、そろそろ自分達も家族を持つべきでは無いかと少し考え始めた。それを『察知』したのか、好美と屋上の露天風呂での入浴を続けながら酒に酔った妻から『念話』が。


結愛(念話)「おい光明・・・、今「子供」とか考えていなかったか?」

光明(念話)「確かに、少し考えていたな。」


 光明は『念話』で話しながら少し顔を赤らめている、まだ酒が抜けていないのだろう。


結愛(念話)「今夜・・・、いや今からどうだ?丁度、俺今「ピー(自粛)」で「ピー(自粛)」だぜ。」

光明(念話)「今、結愛が・・・。」


 良からぬ想像をしてしまった光明は1人鼻血を出していた、正直満更でもない気分だったという。


光明(念話)「ば・・・、馬鹿野郎。何言ってんだよ、お前。」

結愛(念話)「欲しいんだろ、構わねぇぜ。」


 結愛も酒に酔っているので満更でもない気分だったそうだ、ただその『念話』を横から聞いてしまった好美が妨害した。


好美(念話)「馬鹿!!そう言う話は家でして、私だって「ピー(自粛)」で「ピー(自粛)」なんだから守と・・・。」


 同刻、豚舎で豚の餌をせっせと作っていた彼氏は好美の思考を『察知』したが故に何故か悪寒がしていた、彼女の方からあの様な台詞が出たのは珍しかった上に非常に久々だったので正直焦っている。

 隣で一緒に餌の準備をしていたケデールが守の異変に気付いた。


ケデール「守、顔色が悪いぞ。何があった。」

守「店長、今夜辺り雪が降るかも知れません。いや吹雪が来ます!!」

ケデール「おいおい、こんな暑い日に有り得ん事を言うな。」

守「そうですね、俺もバスタオルを用意しておきます。色んな意味で。」

ケデール「馬鹿か。」


 そんな中、好美達が露天風呂を楽しむビルの1階にある「暴徒の鱗 ビル下店」では先程までずらっと並んでいた客を捌き切った店長のイャンダと結愛の兄である海斗が賄いを食べ、一服しながらテレビで流れたニュースの速報を見ていた。

 「下級魔獣違法売買の元国際指名手配犯逮捕、貝塚財閥副社長と拉麵屋台店主達に感謝状か」との内容だった。渚が事件解決に協力したので「暴徒の鱗」の名前が流れたが故に、宣伝効果出ると予想した店長は一言呟いて立ち上がった。


イャンダ「今夜辺り忙しくなるかもな・・・、好美ちゃん呼んだ方が良いかも。」

海斗「好美ちゃんってここのオーナーの?」

イャンダ「うん、たまに手伝って貰っているんだ。それにここが深夜も営業できるのは好美ちゃんのお陰なんだよ。」


 店長はすぐさま連絡を入れようとしたのだが、先手を打ったのはオーナーの方だった。


好美(念話)「イャンダ、今夜19:00に店でお祝いするから外のテーブル席とっといて!!」

イャンダ(念話)「え?!手伝ってくれる訳では無く呑みに来んの?」

好美(念話)「当たり前じゃん、光明さんや渚さんのお祝いしなきゃでしょ。叉焼とお酒大量に用意していてね。」

イャンダ(念話)「う・・・、うん・・・。」


 イャンダは痛い所を突かれた様だ、実はビール含めた酒の在庫が尽きかけていたのだ。焦った店長は急いで食事を終えると副店長のデルアを連れ、契約先であるゲオルの店に直接酒を買いに行った。その隙に海斗も食事を終えたのでそそくさと・・・。


海斗「お・・・、俺帰ります・・・。」


 海斗の背中を見ながら店長と副店長は落胆していた、今夜人数的には大丈夫だろうか。


-135 お楽しみ後の祝勝会-


 好美が予約を入れた19:00、イャンダの予想通り「暴徒の鱗」には行列が出来ていた。しかし今夜の好美達には関係の無い事だ、好美と守は一足早く『瞬間移動』で店に到着して「予約席」と書かれた札が置かれた屋外のテーブル席に座ろうとしたのだが。


イャンダ「好美ちゃん、何で2人とも少し汗ばんでんの?しかも顔が赤いし。」

守「腹空かせる為に運動してたんだよ・・・、な?」

好美「そうそうそう・・・。」

イャンダ「ふーん・・・、でも主役は渚さんと光明君だろ?」

好美「いいじゃん、別に。」


 オーナーが少しいじけかけているので急いで宥める店長。


イャンダ「悪かったよ。ほら、特別にビール1杯サービスするから許してよ。」

好美「全員にも1杯ずつなら良い・・・。」


 少し笑顔を見せながら答えた好美、どうやら現金な女性に育ってしまったらしい。


イャンダ「好美ちゃんには頭が上がらないや、分かったよ。」


 イャンダの言葉を聞いたデルアは結構な量を仕入れたつもりだったが足りるかどうかが正直不安だった、何も聞かなかった事にして店内で食事したり順番待ちで並んでいる客を捌きつつ酒の肴の準備に入る。

 調理場にイャンダも加わり、ホールには魔学校生のバイトのみとなった。そして出来上がった肴と酒を持ったバイトが屋外テーブルにやって来た。


バイト「お待たせしました、自家製叉焼とビールです。」


 好美が涼しい顔をして仕事をこなすバイトに感心していた時、『瞬間移動』で今夜の主役の1人を連れた大企業の社長がやって来た。ただこの2人も先程の好美達と同様に顔を赤らめさせ汗ばんでいた、不自然にも衣服が少し崩れている。


結愛「腕立て伏せと腹筋をしていたんだよ、呑み食いの前のいつもの習慣なんだ。な?」

光明「そうそう、お陰で腹減ったよ。早く座ろうや。」

デルア「いらっしゃい、みつもんニュース見たよ。凄かったね。」


 知らぬ間に仲良くなっている2人、一緒に遊びにでも行った事があるのだろうか。ただ不自然な点が・・・。


デルア「これは俺からのサービスね。」

光明「ありがとよ、というかさっきから聞きたかったんだけど何で鎧なの?」


 店にはちゃんと制服があるのでデルアの不自然さが物凄く目立っている、焦った副店長は言い訳を考えた。


デルア「コ・・・、コスプレ・・・。」


 実は先程仕込みをしていた際に制服に醬油ダレをぶちまけてしまい、着る物が無かったデルアは何故か店に偶々あった鎧でごまかす事にしたのだ。因みにこの事にはイャンダが爆笑しながら許可している。

 そんな中、もう1人の主役である渚が光夫婦とやって来た。渚本人は至って普通の表情をしている、しかし何故か光とナルリスが4人以上に汗ばんでいた。


光「店の手伝いをしてたのよ、皿洗いが多くてね。」

ナルリス「そうそうそう・・・。」

守「あれ?母さんは?」

ナルリス「きゅ、休憩してもらっていたんだよ。朝からずっと仕事していたからね。」


 焦った様子のオーナーシェフを『察知』した副店長からそこにいる全員に『念話』が。


真希子(念話)「何言ってんだい、ずっと「ご休憩」してたのは店長だろ。」

ナルリス(念話)「真希子さん、聞いてらしたんですか。リアルな単語を出さないで下さいよ、食事前ですよ。」

真希子(念話)「自業自得ってやつだよ、観念しな。」


 皆に笑われながら席に着く光夫婦、そして全員にビールが行き渡った。


結愛「渚さん、光明!!2人共よくやったぜ!!皆お祝いしよう、乾杯!!」

真希子「こら結愛ちゃん、私無しで始めないでくれるかい!!」

結愛「お、おば様・・・。いつの間にいらしたんですか?」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る