4. 異世界ほのぼの日記2 126~130


-126 一方、学園では-


 これは夫・光明からの『念話』が来る数十分前の話、貝塚学園理事長である結愛は偶然なのだが入学試験の作成を手伝う為にセンター長を兼任しているリンガルス警部のいる入学センターにいた。


リンガルス「理事長の御手を煩わせて、本当に申し訳ありません。」

結愛「いえいえ、私もたまにはこういった業務に関わらないといけないなと思っていましたので丁度良かったですよ。未来の学生を決める為の大事な試験ですから、しっかりと目を通しておかないと。」


 貝塚学園の入学試験は基本的に日本の大学入試センター試験(今で言う大学入学共通テスト)と同様にマークシート方式となっており、普段結愛は結果が書かれた書類を見るのみだったので問題に目を通す事が無かったのだ。


結愛「思ったより難しい問題ばかりですね、私でも解けない物ばかりです。」

リンガルス「ははは・・・、そりゃそうですよ。当校の入試倍率は3国中の学校でもトップですからね、職員が腕によりをかけ、資料を読みまくって作っているんですよ。」


 本物のセンター試験ばりに分厚い問題冊子に丁寧に回答用紙を挟んでいく、他のセンター職員と行っているのだが数が数なので中々終わりそうにない。

 まさかのリスニング問題まであった、転生者たちは『自動翻訳』があるので問題なく全てを話せるのだが、実はこの世界には皆が普通に難なく話せる共通語(人語)以外に種族毎に独自の言語が存在するのだ。

 自分が属しているものとは「別の」種族の言語を選択して勉強し、試験に臨む。因みにハーフ・ヴァンパイアである光の娘、ガルナス・ダルランは勿論ヴァンパイア語を選択できないので致し方なくドワーフ語を選択しているそうだ。


ガルナス「私はヴァンパイアでも「ハーフ」だからヴァンパイア語でも良いんじゃないの?」


 と言うクレームが本人から出たのだが、試験上での不利有利を出さない為のルールだ。世の中そこまで甘くは無い。不正行為の防止の為、全言語で解答の番号を変えた上で試験でも机は別の言語同士の者を隣に座らせるという徹底ぶり。これには結愛も驚いていた。

 そんな中、事件の調査に向かった光明から例の『念話』が飛んで来る。情報漏洩を防ぐために結愛にだけ聞こえる様に飛ばされた旦那の声を聞いて汗がどっと出た理事長は顔が一瞬にして蒼ざめ、持っていた問題冊子を真下に落としてしまった。その表情を見たリンガルス警部が急ぎアイスコーヒーを淹れ、結愛に手渡した。グラスを受け取った結愛はまだ手を震わせている。


リンガルス「理事長、大丈夫ですか?理事長?!社長?!結愛さん?!」


 どんな呼び方をしても結愛は全く反応しない、警部は目の前の理事長を落ち着かせるため普段はあまり行わない『ヒーリング』を行った。アーク・ワイズマン自身は正直自信が無かったそうだが、成功したみたいだ。やっと、結愛は落ち着きを取り戻して深呼吸して渡されたアイスコーヒーを1口飲んだ。

 因みに落とした問題冊子は警部が『浮遊魔法』で咄嗟に浮かせたので無事だそうだ。


リンガルス「結愛さん何があったのです、汗が凄いですよ。」

結愛「すみません・・・、実は夫から今『念話』が来たのですが。」

リンガルス「光明さんからですか、何と?」


 出来るだけ結愛が話しやすい雰囲気にする為、敢えて「理事長・副理事長」では無く名前で話しかけるリンガルス。その行為に結愛はとても感謝していた。


結愛「リンガルスさん、奴が・・・。「あいつ」が動いているかも知れません・・・。」

リンガルス「「あいつ」がですか?!あり得ませんよ、今はネルパオン強制収容所に収容されているはずです!!」


 勿論「あいつ」とは結愛がこの世で最も憎む実父、貝塚財閥前代表取締役社長・貝塚義弘の事だ。リンガルス警部が言った通り現在は強力な魔力を用いて罪を犯した受刑者達が収容されるネルパオン強制収容所にいて、身につけた者の一切の魔力を奪い取る無魔力石を使った手枷を付けられているはずだ。特に警部の話だと何度も逃走を図った「あいつ」はもう逃げ出せない様にと足枷で繋がれていると聞いている。


結愛「「あいつ」なら十分有り得る話なんです、少し席を外しても宜しいですか?」

リンガルス「勿論、私は光明さんと話して見ます。」


 結愛は警部と離れると、『通話』で日本にある貝塚財閥本社へと連絡を試みた。社長の結愛が不在となっている現在、大株主である乃木建設社長の乃木幸太郎が兼任していた。


幸太郎「貝塚財閥本社、社長室です。ん?!まさかその声は結愛さんですか?!」


-127 可能性を潰す-


 長年行方不明(もしくは死去)となっていた代表取締役からの突然の電話(というより『通話』)に驚きを隠せない大地主である乃木建設社長の幸太郎は、門限になってもなかなか帰って来ない小学生をずっと探していた親の様に涙を流していた。十数年も音沙汰無しだったのだ、当然の反応であろう。


幸太郎(通話)「無事だったんですね、本当に心配してたんですよ!!結愛さん、今どこにいるんですか?!副社長は?!」

結愛「そうですね・・・、とても言葉では説明しづらい所なのですが旦那も一緒です。」

幸太郎(通話)「でも声が聞けて嬉しいです、実はあれから筆頭株主の真希子さんや息子の守君、そして海斗さんも姿を消しちゃって大騒ぎだったんですよ。」


 「異世界にいる」といっても「はい、そうですか」と納得してくれる人なんてとてもではないがいる訳が無い。


結愛「おば様も守もこっちにいますから安心して下さい、それより1つお聞きしたい事があるのですが。」

幸太郎(通話)「な、何でしょう。」

結愛「義弘派閥の2人は今どう動いていますか?」


 「義弘派閥の2人」と聞いて社長代理は数秒程沈黙した、何があったのだろうか。


幸太郎(通話)「これは真希子さんがいなくなった直後の事です、あの2人は貝塚財閥の株券を全て売却して行方をくらましました。しかし、あらゆる場所での八百長事件が次々と発覚して今は刑務所にいると聞いていますが。」

結愛「そうですか、分かりました。急ぐので、ではまた。」


 早々と『通話』を切ろうとする結愛を急いで引き止める幸太郎、そりゃあっさりと切られては困る。


幸太郎(通話)「また会えるんですよね、帰って来るんですよね!!」

結愛「すみません、私からはお答え出来ないんです。でも、また絶対お電話しますから。」

幸太郎(通話)「絶対ですよ、約束ですからね!!」

結愛「今度はおば様や旦那を呼んで一緒にお電話しますよ、ではこれで。」

幸太郎(通話)「必ず・・・、お願いします。」


 幸太郎の『通話』を切るのに思った以上の時間を要してしまった結愛、深呼吸すると表情を変えて急ぎ次の行動を始める事にした。正直、余り気乗りしないそうなのだが。

 一先ず、先程から行っていたリンガルス警部との作業を終わらせながら質問してみた。


結愛「ネルパオン強制収容所って何処にあるんですか?」

リンガルス「ダンラルタ王国から船で北東に数十キロの所ですが、まさか・・・。」

結愛「はい、可能性は潰しておきたいので。」


 翌日、結愛は所用で一度訪れたダンラルタ王国の最北端の村へと『瞬間移動』して『作成』したモーターボートで北東へと向かった。直接『瞬間移動』してもいいのではと思うがあまり目立った行動をしたくない様だ、ただモーターボートの轟音が大きいので目立ってしまっている様だが。


結愛「うっせぇな、足漕ぎのアヒルさんボートよりマシだろ!!」


 あ、聞こえてたのね。すんません、ただ大声出しちゃ目立ちますよ、社長さん。


結愛「あ、そうか。悪い(わりい)。・・・ってお前誰だよ!!」


 さて、マイクを切って・・・、よし。


結愛「何だよ・・・、ったく・・・。」


 結愛はモヤモヤしつつモーターボートを走らせた、数十分後経つと霧と断崖絶壁に囲まれた孤島が見えて来た。どうやらあそこがネルパオン強制収容所らしい、結愛は陸に上がり係員に声を掛けた。


結愛「こんにちは、お電話した貝塚です。」

係員「こんにちは、よくぞこちらまで。面会のご連絡伺っております、ご案内いたしましょう。どうぞ、こちらです。」


 暗く静かな建物内を歩く、暫くするとドラマでよく見る真ん中が分厚いガラスの板で仕切られた小部屋に到着した。

 数分もしない内にガラスの向こう側のドアが開き、「あいつ」が入って来た。


-128 作戦の途中で-


 貝塚学園で好き勝手にしまくっていたあの頃とは打って変わって、ボロボロの制服を着て入って来た結愛の父・義弘。

 何度も逃走を図った為、手枷を付けて後ろで刑務所員が持っている紐で繋がれている状態であった。

 刑務所員が持っていた紐を解いて椅子に座らせ、外からドアの鍵をかけながら一言。


刑務所員「10分だ。」


 そう言うと部屋から出てすぐ近くでこちらに背を向けて立っていた。


義弘「どう言う風の吹き回しだ、お前から顔を出すなんて。まさかここで馬鹿娘の顔を見る事になるとはな、とんだ不幸だ。」

結愛「俺だって望んで会いに来た訳じゃねぇよ、くそ親父。お前の事は今でも末代までの恥さらしだと今でも思っているからな。」

義弘「ふん、そんな恥さらしに何を聞きに来た。」

結愛「2点だけ答えろ、この世界で茂手木と重岡に会ったか。それとあれからクァーデンに会ったか。」


 目の前のくそ親父は結愛からの質問に対して何故か鼻で笑った


結愛「なんだよ。」

義弘「そんな事かと思ってな、両方ノーだ。」

結愛「そうか。」


 そう言うと現代表取締役社長は立ち上がり、部屋を出ようとして一言吐き捨てた。


結愛「お前とはこれで終わりだ、ここにも一生来るつもりはない。」


 ドアを強めに閉めて強制収容所を出た、残り時間が十分残っていたので係員が声を掛けて来た。


係員「もう、宜しいのですか?」

結愛「ええ、元々本人とは一生顔を合わせるつもりはなかったので。」

係員「そうですか、では道中お気を付けて。」


 結愛は係員に別れを告げると乗って来たモーターボートに再び乗って沖へ出た、係員の顔が見えなくなる位まで離れるとボートごと『瞬間移動』した。


女性「ひゃぁ!!何?!」


突然の驚く女性の目の前で大きな音と飛沫を上げて結愛を乗せたボートが到着し、女性含めそこら辺が一気にびしょびしょになってしまった。


結愛「悪い(わりい)な好美ちゃん、この辺りでまともにこいつを置けるのここだけなんだよ。」

好美「馬鹿!!ウチのプールを何だと思ってんの、さっき着替えたばかりなのに・・・。」


 夜勤明けでシャワーを浴びて着替えたばかりの好美からすればとんだ災難だ、このままでは間違いなく風邪を引いてしまう。


結愛「お、おい!!何やってんだよ!!」


好美はその場で服を脱ぎ捨て露天風呂に飛び込んだ、頬を膨らませながら鼻から上のみを湯から出して睨みつけている。


結愛「な、何だよ。」

好美「タオルとビール2人分!!持ってこないと絶対許さない!!」

結愛「もう・・・、分かったよ・・・。」


 仕事中なので元々今日は好美の家に長居するつもりは全くなかったのだが、これは何となく長くなりそうな雰囲気なので仕方なく従った。

 一先ず『アイテムボックス』にモーターボートを無理矢理入れる様子を見た好美が一言。


好美「遅い、何やってんの!!」


 未だ素面のはずなのだが妙に絡んで来る好美、結愛は光明に「義弘は関係無かった、ちょっと離脱する」と『念話』を飛ばすと頭を数回搔いて渋々家主に従った。


結愛「うーん・・・、すぐ持って来るから待ってろ。」


-129 動き出した隣国-


 許せないからと言ってまさか結愛をパシリに使うとは、好美はかなり肝が据わっていて度胸があるらしい。ただ、一応その人、大企業の社長なのだが。


好美「だって本当に許せないんだもん!!」

結愛「と言うか「一応」って何だこら、俺はちゃんとした社長だぞ。」


 す・・・、すんません・・・。また聞こえてやがった、怖い怖い。・・・ゴホン。

 所有するビルの最上階にあるプライベートプールに突如モーターボートが現れ、そこら辺がびちゃびちゃになったので好美が怒るのも分からなくもない。まぁ、正直言って過去に誰も経験した事が無いはずなのだが。最低でも俺(作者)は経験なし。


結愛「ほら、持って来たぞ・・・。」

好美「結愛も入んの!!」


 どうやら一緒に呑みたかったらしい、ただ素直に「呑みたい」とは決して言わずに今回のハプニングをチャンスに変えようとしている様だ。

 結愛自身にとったら予想通りなのだが、一先ず改めて旦那に連絡を入れておく事にした。


結愛(念話)「今回の事件に義弘は関与無し、義弘派閥の(元)株主2人やクァーデンもシロみたいだ。さっき言った通り俺は一時離脱する、今日は好美んちにいるからそのつもりで。」

光明(念話)「分かったぁ・・・、後は任せろぉ・・・。」

結愛(念話)「お前、どうした?」

光明(念話)「俺は大丈夫だぁ・・・。」


 『念話』での様子から見てどうやら出来上がってしまっているらしい、結構強い酒を犯人グループに呑まされているのだろうか。まぁ、作戦の内だろうと許容した結愛は脱衣して湯に浸かった。

 一方、今夜は王宮での夜勤が休みの好美はビル1階部分にある「暴徒の鱗」、そして「コノミーマート」の両店舗共に人数が足りているとの事でヘルプに入る必要もなく今日は心置きなく呑むつもりらしい。ただ1人で呑むのもつまらないと思っていた所に丁度良く結愛が出現した、これは好美にとって絶好のチャンスだった。

 日の光が差し込み、別の方向では虹が出ているビル屋上の露天風呂で2人は缶ビールを開けて一気に煽る。因みに冷蔵庫に在庫はたっぷりあるので『転送』を使えばお代わりし放題だ。

 その頃犯人グループの洞窟にいる光明たちは「お頭」らしき人物が現れないままリーダー達に今でも呑まされているらしい、そんな中で野郎だらけの中でマスクをした女性らしき人物が1人副社長に気付いてにこやかに笑っていた。親指で少し離れた場所を指し、コクコクと頷いている。


光明(ハンジ)「リーダー・・・、ちょっとお手洗いに。」

リーダー「そうか、すぐ戻れよハンジ。」


洞窟内で犯人グループ達が使っているであろう人気のない仮設トイレの前で先程の人物と2人きりになり、酒の力もあって光明はまんざらでもない気分になっていた。


光明「駄目だ、何考えてんだ俺は。俺には結愛と言う嫁がいるじゃないか。」


 それを察知したその嫁からもれなく脅しの『念話』が。


結愛(念話)「おいお前、変な気起こすんじゃねぇぞコラ。」

光明(念話)「わ・・・、分かってるって。」


 少し焦る光明の様子を見てクスリと笑う女性はマスクを外しながら話しかけて来た。


女性「光明君、私よ。」

光明「ああ、あなたでしたか。」


 目の前にいる女性は「冒険者ギルド名物のドーラお姉さん」ことネフェテルサ王国警察警部補のアーク・エルフ、ノーム・マーガレット・林田だった。

 今回の事件について友人のデカルトから応援を要請された署長である義父の希からの指示で先立って潜入していたのだという。


光明「でも男だらけの場所でよく今までバレませんでしたね。」

ドーラ「なぁに、服装を合わせて『変声』すれば簡単なもんよ。」


 ムカリトがしていたのと全く同じ作戦で犯人グループを騙していた様だ。


ドーラ「さぁ、怪しまれない様に早く戻らないと。」


-130 お頭-


 「潜入作戦」と言う名の宴に警部補と副社長が戻った時、プレハブの前では最高潮と言っても良い位に盛り上がっていた。

 犯人グループのリーダーは戻って来た光明(ここではハンジ)とドーラを見つけると、すぐに絡み酒を始めた。


リーダー「お前ら別グループ同士なのに偉く仲が良いんだな、連れションか?」


 何故か顔を赤らめ、マスクを上げるドーラ。その横で光明がフォローする様に返事をした。


光明(ハンジ)「偶然トイレの前で出くわしただけですよ、俺が長かったからずっと待ってくれてたんです。ほら呑みなおしましょう。」

リーダー「分かっているじゃないか、ほら2人共開けろや。」


 例の「お頭」が来るまであまり酔わない様にセーブしておこうとしていたが、ここで断るとリーダーに何を言われるか分からない。と言っても先程の『念話』で結構酔っていた気もするが。

 自分達を犯人グループの一員だと勘違いしている内にリーダーを酔い潰し、改めて作戦会議をしようと考え始めた潜入メンバー達。

 そんな中、リーダーは嬉しそうに語っていた。


リーダー「お頭絶対喜ぶぜ、何せ上物のヘルハウンドといつもの倍の量のミスリル鉱石が手に入ったんだからな。」


 夜中に渚達が洞窟で救出したミルとカランの事だと思われるが、この言葉を聞いたデカルトが怒りでビールの缶を潰しかけているのを見て、ドーラが何とか落ち着かせた。今はとにかく堪えるべき時だ。

 光明は下級魔獣達を捕まえ、ミスリル鉱石を手に入れてどうするのかを聞きたかったが何も知らないのかと疑われそうなのでやめておいた。

 それから1時間程経過しただろうか、外が完全に明るくなっている。全員昨晩からずっと呑んでいたのでつい時間を忘れてしまっている。


リーダー「おっと、もうこんな時間か。そろそろいつも通り拉麵で〆て寝ておこう、昼間にはお頭達が来るはずだ。」


 リーダーの言葉を聞いて皆プレハブの中からカップ麺と寝袋を持って来た、ただ潜入メンバーのお陰でカップ麺は大丈夫だが寝袋が足らなくなっている。


リーダー「あらら、どうしよう。」

光明(ハンジ)「俺達は大丈夫ですよ、もうちょっとだけ呑んでいたいし。」

リーダー「皆、お前ら良いやつだな。俺からのお礼だ、これも呑んでくれ。でも早く寝ろよ?」


 作戦会議の為とは言え、受け取らない訳には行かない。

 一先ず受け取ったビールを片手に犯人達が寝たのを確認すると改めて作戦会議を始めた。


ドーラ「やはり「お頭」が来たらすぐ逮捕する方が良いかな。」

光明「いや、やめておきましょう。奴らの目的と証拠を押さえる為に敢えて泳がせるべきだと思うんです。」

デカルト「私も光明さんに賛成です、ブロキントさんはどうですか?」

ブロキント「泳がせましょ、わいらのミスリル鉱石が何処に行っているのかが気になりますんで。」


 光明の作戦が可決になった所で、潜入メンバーは受け取った缶ビールを一気に煽ると眠りについた。

 数時間後、犯人達がぐっすり眠る洞窟に男性の怒号が。


男性「お前ら何寝てやがんだ、起きろコラ!!」

リーダー「その声はお頭・・・、何があったんですか?」

お頭「あっちの洞窟で見張っていたAとBが警察に逮捕(パク)られたんだよ!!てめぇら行くぞ、あいつらは兎も角、物(ブツ)が気になるだろうが。」


 リーダー達が眠い目を擦りつつ動き始めたのを察知し、潜入メンバー達は無理くり体を起こして「お頭」の顔を確認しようとした。

 フラフラな意識の中、目に飛び込んできた顔に驚きを隠せない光明。


光明「どうしてあいつがこの世界に?」

デカルト「お知り合いですか?」

光明「ちょっとね・・・。」

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