4. 異世界ほのぼの日記2 121~125


-121 証拠発見-


 岩陰から光が漏れるプレハブの窓を睨みつける3人、すると犯人グループの連中が出入口から麻袋を持って出て来た。


犯人グループ①「ひひひ・・・、これだけありゃ頭も満足するはずだぜ。3千万は下らねぇんじゃねぇのか?」

犯人グループ②「ば、馬鹿野郎!!大きい声出してんじゃねぇよ、誰が見てるか分からんだろうが!!」

犯人グループ①「お前もだろうが、興奮してんじゃねぇよ!!」


 コントの様な会話を交わす奴らには目もくれず、麻袋を凝視する鳥獣人族の2人。重要なのは中身なのだ。

 そんな中、別の方向からもう1人。麻袋の中身はバタバタと動いている。


犯人グループ③「おい、これどうしておく?」

犯人グループ①「そこに置いとけよ、疲れて動かなくなるのを待っておこうぜ。」

犯人グループ②「袋から出しておかねぇか?死んだらまずいだろ。」

犯人グループ①「そうだな、適当にそこに繋いでおけよ。」

犯人グループ③「ん。」


 犯人グループの1人が麻袋から取り出した下級魔獣を見て警部は驚愕した、体を小刻みに震わせている。


プニ「あ、あれは!!」

ムカリト「うん・・・、間違いないな。」

渚「どうしたってんだい?」


 全然状況を把握出来ていない拉麵屋台の店主、本当に何をしに来たのやら。


プニ「今朝母親から被害届と捜索願が出ていたヘルハウンドのミル君だ、まさかこいつらが誘拐していたとは・・・。」

ムカリト「あんな所に繋がれて・・・、可哀そうに。」


 人化した上で両手を縄で縛られ、繋がれたヘルハウンドを見て拳を握る軍隊長、本人の表情から国民を守るという王国軍たるが故の使命感を感じさせられる。

 そんな中、犯人グループの1人が手を滑らせて持っていた麻袋を落としてしまった。中から大量のミスリル鉱石がぶちまけられた。


犯人グループ②「おっと、まずいまずい。」

犯人グループ③「馬鹿野郎、お頭が来るまでに戻しとけって!!」


 その光景を見て、確信を得たムカリトは腰にさげた剣を鞘から抜き出そうとしていた、その隣でプニが拳銃に手を掛ける。


ムカリト「プニ、これで確定だな。3つ数えたら行くぞ、覚悟決めろよ。」

プニ「ああ・・・。」

ムカリト「渚さん、ミル君をお願い出来ますか?」

渚「任せな、最初からそのつもりだよ。」


 ムカリトはゆっくりと呼吸を整え、カウントを始めた。


ムカリト「3・・・、2・・・、1・・・。」

プニ「警察だ!!お前ら全員手ェ上げろ!!」

ムカリト「王国軍だ!!神妙にお縄につけ!!」

犯人グループ③「誰だ、てめぇら!!構うな、撃て!!」


 犯人グループは持っていた拳銃を2人に向けて撃ち始めた、2人は慣れているのでするすると避けて行く。

 犯人グループの奴らが2人に気を取られている間に渚がミルに近付き、縄をほどいた。


渚「もう大丈夫だからね、お姉さんと一緒に来な。」

ミル「まだ・・・、兄ちゃんが・・・、奥に・・・。」

渚「何だって・・・!!」


 かなり殴られたのだろう、苦し紛れのミルから出た言葉に驚く渚は暗い洞窟のまだ奥の方向を見た。大量の麻袋が並べられており中身がうごめいている、きっとミル同様に誘拐された下級魔獣だろう。

 渚はミルを岩陰まで逃がすと、残りの下級魔獣の救出に向かった。


渚「もうすぐ兄ちゃんに会えるからね、外まで逃げな。」


-122 鳥獣人族の逮捕劇-


 犯人グループと鳥獣人族兄妹も戦闘が繰り広げられている広場の端をゆっくりと進み、被害を受けた下級魔獣の救出を試みる渚。岩場の壁を手で辿りながら2人の無事を祈った。


渚「この平和な世界にまだバカやるやつらがいるなんてね、でも今はあたしの戦いをするしかないさね・・・。」


 先程の3人の声を聞き、プレハブから潜んでいた数人が拳銃を持って戦闘に加わったが、ろくに戦闘訓練をしていない人間に対し王国軍と警察に所属する上級鳥獣人族では差が大きすぎる。

 「生きたまま逮捕する」をモットーにしてきた警部は敵の体力消耗を最低限に抑えつつ攻撃を加えていた、「3国間戦争撲滅平和協定(及び戦闘禁止条例)」もあるので魔法での攻撃を加える訳にもいかないが「犯人逮捕(仕事)において相手の体力を消耗させる」範囲でなら話は別である。

 警察の者として渡されている拳銃も正直犯人に対する「脅し」の範囲でしか使う訳にはいかない、というより使えない。正直不利な戦闘だ。


プニ「おい・・・、まだこっちにゃ弾ァあんだよ・・・。ただ、もう撃たせんじゃねぇ。もう、やめねぇか・・・。」


 口元から血を流しながら苦し紛れの言葉を犯人にかけるプニ、それを見てムカリトは心底怒っていた。


犯人グループ①「はぁ?まだまだ俺たちゃこれからなんだよ、お前らに邪魔される訳にはいかねぇ!!」

犯人グループ②「んな所でくたばってちゃ、お頭に合わせる顔がねぇ!!」

ムカリト「俺の妹をこんなにしやがって・・・、お前らの頭共々全員とっ捕まえてやる・・・!」


 ムカリトは剣を鳥獣人族特有の棍棒に持ち替え、飛び上がった。そして犯人達に向かって振り下ろそうとする。


プニ「兄貴、やめろ!!それだけは絶対にするな、一生後悔する事になるぞ!!」

ムカリト「お前をそんなにボロボロにされて兄として見逃す事が出来ると思うのか?!」

プニ「でも魔法を使って復讐すればお前もあいつらと同罪だ、分かるだろ!!落ち着いて降りて来い!!お前がそこまでする必要は決してねぇ!!」

ムカリト「くっ・・・。」


 妹の言葉により自分の気持ちを抑えつけた軍隊長はゆっくりと地上へ降り立った、それを見た犯人達は顔をニヤつかせたがその瞬間奴らの体が光る何かで拘束されたかの様に動かなくなった。


渚「やっと『拘束』出来たよ、あんた達演技が長いさね。」

プニ「悪かったって、こいつら全員ずっとうじゃうじゃしているんだもん。」


 今回の逮捕の為に『拘束』というスキルを『作成』してみたが、ずっと戦闘シーンが続いていたのでなかなかしよう出来ずにいたのだ。


渚「それにしても血のりまで用意するなんて本格的すぎやしないかい?」

ムカリト「本当だよ、お陰で演技を通り越してガチかと思ったぜ。」

犯人グループ③「演技・・・、だと?じゃあその拳銃は何だコラァ!!」


 2人は手に持つ拳銃らしきものから弾を取り出して見せた。


プニ「本当にこんな物で騙せれるやつがいたなんてな、これは音と弾が大きめに設計された特製のBB弾だ。」

犯人グループ①「お・・・、おもちゃ・・・、だと・・・?!」

ムカリト「さて、お遊びはここまでだ。お前らの頭の場所まで連れて行って貰おうか。」


 2人は犯人グループ全員に手錠を掛けようとした、この手錠は紛れもない本物だ。すると、慌てたように1人が責任逃れをし始めた。


犯人グループ②「待ってくれ、俺は金で雇われただけなんだ!!何も悪くねぇ!!」

犯人グループ①「お前!!裏切る気か!!」

犯人グループ②「関係ねぇよ、俺は責任も関係もねぇ。逃げさせて貰うぜ。綺麗な警部さん、良いだろ?」


 プニはそんな犯人にデコピンして答えた。


プニ「バーカ!!お前にも話は署で聞くし、俺には彼氏がいるから嬉しくねぇやい!!」

ムカリト「お前、俺も知らなかったぞ。後さ、俺「兄貴」じゃなくて「姉貴」だからな。」


-123 被害者兄弟と渚の関係-


 様変わりしたムカリトの姿を遠くから眺めていた渚は開いた口が塞がらなかった、先程まで軍服を着ていた「男性」がいつの間にか綺麗な「女性」に変わっている。


渚「おかしいね・・・、さっきの「お兄さん」は何処に行ったのかね。それとあの人はお兄さんの部下か何かかい?まぁ、後で聞いてみるか。」


 そう独り言をこぼしながら犯人グループが潜んでいたプレハブのある広場から少し奥へと進み、中身がうごめいている麻袋へと近づいた。

 空気が入る様に数個の穴を開けた麻袋からは捕らえられたと思われる下級魔獣の一部が見えている、渚は袋に駆け寄って閉じている紐を解いた。

 袋から落ちる様に出て来たヘルハウンドは少し警戒気味に渚を睨んだ。


ヘルハウンド「てめぇ、ここは何処だ。どうしてこんな事を。」

渚「ミル君のお兄さんだね?助けに来たよ。」

ヘルハウンド「人間の言う事を信用しろと?弟を何処へやった、言え!!」


 すると渚の後ろから人化してこっそりついて来たミルが顔を出した。


ミル「カラン兄ちゃん、この人の言う事は本当だよ!!」

カラン「ミル、無事だったか。じゃあ本当にこの人は・・・。」

渚「そうさ、警部さんと軍隊長さんと一緒にいつも来てくれるあんたらを助けに来たんだよ。本当失礼しちゃうね、それに今夜の売り上げどうすりゃいいんだい。」


「いつも来てくれる」、そして「売り上げ」という言葉に反応した兄弟、よく見てみればいつも小銭を握りしめて仲良く辛辛焼きそばを半分ずつ食べに行く屋台の店主だ。


カラン「悪かった・・・、今度は定食で食べに行くよ。勿論1人前ずつな・・・。」

渚「何言ってんだい、いつも金が無くて半分ずつ食べてるくせによく言うよ。一先ず、後で話があるからここを出るよ。」


 そう言うと、人化したカランを含めた3人は協力して残りの麻袋を開けて被害者を解放した。中にはヘルハウンドだけではなくドラゴンやグリフォンがいたのだが、どうやら皆「暴徒の鱗」の常連らしく、渚の顔を覚えていた。ただサイズ的にどうやって麻袋に入れたんだろうか、そこに関しては何となく感心してしまう。

 ただそんな暇は少しもない、一刻も早くこの洞窟から出なければ。その一心で渚達は広場の端を通って洞窟の出入口を目指した、塞ぐように駐車してあったエボⅢを瞬時に『転送』して通り道を作り脱出した。

 数秒後、覆面パトカーらしき乗用車数台と王国軍隊の鳥獣人族達が到着した。覆面パトカーから刑事らしき者達が数人降りて来た。


刑事「プニ警部、ご無事で何より。」

プニ「これのどこが無事だってんだよ、本当は今日俺非番なんだぞ。帰ってシャワー浴びさせてくれや、あとビール奢れ!!」

軍隊「あれ?そう言えばご一緒だったはずの軍隊長はどちらに?」

プニ「あね・・・、いや兄貴なら・・・。」

ムカリト「私はここだが。」


 元通りの「ムカリト兄ちゃん」にすっかり戻ってしまっている、それにしてもどうして女性だという事を隠しているのだろうか。

 警察や軍隊の者達が覆面パトカーに犯人達を押し込んでいる所を横目に渚はムカリトを少し離れた所に引っ張り込んだ。勢いよく引っ張られた軍隊長は女性の声に戻ってしまっている。


ムカリト「渚さん、痛いですよ。私一応か弱い女子なんですから。」

渚「さっきまで声も姿も男の人だったじゃないか、どういう事だい。」

ムカリト「軍隊長として舐められない様に軍帽と『変声』で男に変装しているんです。」


 そんな中、渚の電話が鳴った。なかなか最後の販売ポイントに姿を現さないと客からクレームが来ていたので心配して電話してきたそうだ。


シューゴ(電話)「渚さん、やっと出ましたか!!何しているんです、お客さんからの電話が止まらないのですが!!」

渚「忘れてた、すぐ向かうよ。」


 犯人グループの逃げ込んだ洞窟がたまたま最後の販売ポイントの近くだったので渚は屋台を『転送』してすぐに『瞬間移動』しようとした、ただそんな渚をカランが引き止めた。


カラン「渚さん、さっき言ってた話って何なんだよ!!」

渚「後で屋台に来てくれたら話すよ、捕まってた皆で来な!!話は食べてからだよ!!」


-124 一生もののツケ-


 渚は『瞬間移動』して最終の販売ポイントへと到着し、急ぎ屋台を展開した。幸いスープ等の用意は1つ前のポイントで販売を行った時の物がそのまま残っていたのですぐに販売を開始出来た。


渚「悪かったね、今からで良かったら作らせて貰うよ。」

客①「おばちゃん、腹減ったよ!!早く叉焼麺頂戴!!」

渚「あんた、「渚さん」か「お姉さん」と呼ばない奴に叉焼あげないよ、これはルールだからね!!」

客②「渚さんは相も変わらず綺麗だな、俺は叉焼丼と辛辛焼きそば。」

渚「焼きそばの辛さはどうする?」

客②「そうだなぁ・・・、今日は辛めにして欲しいから⑥番にしようかな。」

渚「あいよ、分かってるあんたにはキムチをおまけしとくからね。」

客①「ずりーよ、お・・・、お姉さん!!焼き餃子とビール!!」

渚「今更だけど、許してやるさね。ほら、あたしも鬼じゃないから餃子1個おまけしといたよ。」


 「今は」だが、渚は友人や家族の様にお客と楽しそうに会話を交わしながら働いている様だ。これが屋台の人気に繋がっているのだろう、そんな中で見覚えのある「あの2人」がこそこそとやってきた。1人は手に1000円札を握りしめており、もう1人は陰に隠れながら渚の屋台の方に近付いて来た。


渚「あんたら来たね、ほら座んな。」

カラン「ごめん、今日も辛辛焼きそばを半分ず・・・。」

渚「約束通り、辛辛焼きそば定食1人前ずつね。」

ミル「でも渚さん・・・、俺達2人で1000円しか・・・。」


 その時渚がミルの口に人差し指を付けて言葉を止めた、屋台の店主はにこやかに笑っている。


渚「実は申し訳ないんだけどあんた達の事、友人に頼んで調べて貰っていたんだよ。」


 必ずボロボロの衣服を着た兄弟が揃ってゴミ置き場で拾ったであろう金属を売り手に入れた1000円を握りしめてやって来ているので、本人達には内緒で家庭の事情を結愛に調べて貰っていたのだった。大企業である貝塚財閥の代表取締役が言うには2人は早くに両親を亡くし、金も無かったので住んでいた家も追い出されたそうだ。下級魔獣が故になかなか働き口も見つかる訳もなく、ゴミ捨て場を漁りながら路上生活を続けていた折、今回の被害を受けたらしい。


渚「あんた達、貝塚財閥の施設で勉強して来な。あたしの方から推薦をしておいたし、社長の許可は下りてるからすぐにでも入れるよ、全寮制だから食事にも困らない。そこで一生懸命勉強して、立派に稼げる様になったら今日の食事代を支払いに来ておくれ。それまで永久的にツケにしといてやる。ほら、分かったらここにサインをしておくれ!!」


 2人はテーブルの定食をチラっと見た後、互いの顔を見て互いに頷き合った。そして兄がペンを取り書き慣れない文字で伝票に書き始めた。


カラン(メモ)「かならずあたまよくなっておかねはらいきます、まっててください。カラン・ミル。」

渚「ちゃんとこの伝票は置いとくからね、約束忘れんじゃないよ。」

兄弟「はい!!」

渚「ほら、冷めない内に食べな。それとも焼きそばの辛さが足らないのかい?」

ミル「俺はもうちょっと・・・。」

カラン「こら、今は我儘言うんじゃない。」

渚「何言ってんのさ、辛さ足すくらい容易な事さね。それとも自分でするかい?」


 渚はテーブルに添えてある唐辛子を指差した、兄弟が入れ物を取り合いしていたので蓋がパッカンと開いてしまった。大量の唐辛子が辛辛焼きそばどころか炒飯にまで振りかかった。何処からどう見ても激辛料理のチャレンジ定食だ、そこで渚が爆笑しながら提案した。


渚「あははははは・・・・・!!あんた達、新メニューのアイデアをくれたお礼だ、それ完食したら無料にしてやるよ!!デザートも付けてやる!!」


 ミルは黙り込み、息を飲み込んでから蓮華を手にして炒飯に食らいついた。よっぽど辛いのか、それともまともな(?)食事が嬉しいのか、目には涙を浮かべていた。


ミル「くっ・・・、舌が焼ける・・・。でも・・・、美味い。」

カラン「お前・・・。」

渚「食べないのかい?早くしないと制限時間を設けた上で唐辛子追加するよ。」


-125 嫌な予感-


 ヘルハウンドの兄弟が激辛定食に挑戦する数時間前、ブロキント率いるゴブリン達が働く採掘場にて国王達が息を潜めて突入の機会を伺っていた。


光明「ゴブリンさん達、バリケードをゆっくりと解いて下さい。」


 ゴブリン達はそう聞くと互いに頷き合い、ゆっくりとその場から離れて行った。光明たちは西日が差す洞穴にこっそりと入って行った。

 少し歩いた所に麻袋が積まれていた、中には皆の予想通り盗まれたミスリル鉱石が。


デカルト「ビンゴですね、それで奴らの姿は?」


 すると少し奥の方から賑やかな声がして来た、どうやらそう遠くない所で盗難成功を祝して晩酌をしている様だ。ただ奴らが呑んでいる酒も盗まれてた物だろう、最近近くのスーパーから大量のビールや日本酒が盗まれたという被害届が出されていたからだ。

 盗まれた大量のミスリル鉱石の山を見てブロキントが体を震わせている、自分達が力を合わせて集めた鉱石なのだから当然である。


ブロキント「あいつら・・・、許せまへん・・・。」


 ブロキントは可能な限り小声で言っていたが、光明が抑えつけた。今バレてしまっては作戦がおじゃんだからだ。

 犯人グループが晩酌をしている所を見て光明は作戦の変更を提案した、ブロキント以外は皆想像していた様だが。


光明「やつらの仲間に化けて情報を集めつつ、酔い潰しちゃいましょう。」


 光明が犯人達の様子を凝視しながら奴らが腕に付けているバンダナ等細かい所も含めて奴らの服装を『作成』し、その場にいた全員が着用した。デカルト、光明、ブロキント(人化)、そしてゴブリン数人(人化)で1グループ。そして残りの王国軍隊とゴブリン数人(人化)に分かれて潜入を開始した、可能な限り自然な形で。

 酒に酔った犯人達は上手く呂律が回っていない様だ、正直これはチャンス・・・。


光明「先輩お疲れ様です、俺達も参加して良いですか?」

犯人グループ①「おお、お前らD(れぇ)グループの奴らだ(ら)な、お前らも加われ。」


 どうやら犯人達は何個かのグループに分かれていて各々の区別は腕に付けているバンダナらしい、敵味方が分かる様に色分けしていた事が功を奏したらしい。

 因みに洞窟内にいるこいつらはCグループだそうだ。


犯人グループ②「ほらお前らも呑めや、今日も祝杯が美味いぜ。リーダ(ら)ー、良いで(れ)すね!!」


 リーダーらしき者も真っ赤に酔っぱらってしまっていて敵味方の区別もつかなくなってしまっている、ただ本人にとってはまだ酒が足らないらしいので瓶ビールをラッパ飲みしていた。

 リーダーは光明に隣に来るように指示した。


リーダー「ほら、特別(とくれつ)にお前にも1本やろう。」

光明「あ、はい・・・。」


 光明は恐る恐る瓶の王冠を開けて一気に煽った、これが盗んだビールの味かと涙ながらに覚えてしまった。意外と・・・、美味い・・・。いや、それじゃダメじゃん!!


リーダー「良い呑みっぷりだな、名は何と言う。」

光明「は・・・、ハンジです。」


 犯人グループにこちらの情報を漏らす訳にも行かないので、こうやって「名前を聞かれたら偽名を即座に作る事」も光明の作戦だった。

 さてと、良い具合に酔いが回って来たので本題に移ろうではないか。


光明(ハンジ)「リーダー、そう言えばお頭を見ませんね・・・。」

リーダー「お頭なら屋敷にいるだろ、今頃捕まえた下級魔獣の売買契約でも行っているんじゃねぇのか?」

光明(ハンジ)「お屋敷ですか・・・。」

リーダー「ハンジお前、何も知らないんだな。ほら、山ん所に屋敷があるだろ。」

光明(ハンジ)「あそこねぇ・・・(嫌な予感が当たり始めたな)。」


 まさかと思うが刑務所にいる「アイツ」絡みの事件なのだろうか、光明は早速あの人に『念話』を飛ばして刑務所に向かう様に頼んだ。

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