4. 異世界ほのぼの日記2 91~95


-91 深夜突然の来客と相談-


 メラのお陰で想定の半分の時間で片づけを終わらせる事が出来た好美は真っ暗な夜の街を眺めていた、周囲で明かりがついている店は「暴徒の鱗」と「コノミーマート」しかない。ただこの世界でも夜更かしをしたり好美みたいに夜勤をする人々が増えたお陰で深夜の時間帯の売り上げは上々だった。

 外の空気を深く吸い込んで改めて店舗に入ると、中では人魚が酔い潰れており人化も解けかけている。

 光が好美にコーヒーを勧めたが好美は改めてゆっくりと呑みたくなっていた、冷蔵庫に入れていた日本酒を涼し気なガラス製の徳利に入れるとガラス製のぐい飲みと共に店舗部分へと運んで行った。この徳利とぐい飲みは両方とも好美のお気に入りで、切子による柄が入っていた。

 今日は通常営業を止め、ずっと貸切にしているので朝になるまで誰も来ない・・・、はずだった。

 店舗の出入口から眩しい光が差し込みだした、不自然だと思った光が屋外に出てみる。

 数秒経過した後、体を震わせながら中に入って来た光は顔を蒼白させていた。


光「好美ちゃん・・・、夜も遅いし呑みすぎたのかな。外に何か大きいのがいるんだけど。」

好美「え?大きいのって何ですか?」


 用意していた冷酒を冷蔵庫に入れなおして光と共に恐る恐る外に出た好美は空を見上げた、神々しく光りながら一体の龍(ドラゴン)が空から降下して来ていた。


龍「おう、いたいた。好美ちゃん探してたんだよ。」

光「好美ちゃん、この龍と知り合いなの?」

好美「いや、私は記憶にないですね・・・。」


 幻覚を見ている様に感じた好美達は、一旦落ち着こうと店内で改めて呑みなおそうとしたが龍が引き止めた。


龍「おいおい、どこに行ってんだよ。ニコフさんに聞いたらここにいるって言ってたから来た・・・、ごめんよ。この姿だと分からないよな。」


 龍が人化しながら地上に降り立つ、すると見覚えのある女性が目の前に。


好美「あ、トゥーチ神様!!」

トゥーチ「やっと気付いてくれたか、すまねぇが中に入って良いか?」


 神に背くわけにいかないと貸切にしていた店内に古龍を迎え入れた、トゥーチは中に入るとゆっくりとテーブル席に腰かけた。

 一気に酔いが冷めた光と好美は飲み物を勧めると、日本酒の冷酒を求めて来たので好美は冷蔵庫で冷やしていた自分用の冷酒を持って来た。好美はまだ口を付けてなくて良かったとホッとしながらぐい飲みを渡した。


光「それ、今好美ちゃんが呑もうとしていたやつ・・・。」

好美「良いんですよ、まだありますし。それに神様に呑んで頂ける事なんて光栄な事じゃないですか。」

トゥーチ「そうなのか?何か悪い事しちゃったな・・・、そうだ。」


 すると古龍は魔法で綺麗な瑠璃色をしたぐい飲みを出して好美に手渡した、好美は緊張しながら受け取った。


好美「綺麗・・・。」

トゥーチ「良かったらそれで呑んでくれ、お気に入り同士で交換しようじゃねぇか。」

好美「勿体ない、私にはとても使えません。」

トゥーチ「良いんだ、それに俺こっちのぐい飲みも気に入っちゃってよ。」


 切子の柄を物珍しそうに眺める古龍、ただこの冷酒セットは日本の雑貨屋で2000円で買った物なのだが良いのだろうか。

 そんな事を考えている好美の横でトゥーチが目を輝かせている、冷酒セットの持ち主はその神にぬるくならない内にと冷酒を勧めた。

 好美の酒を受け取った古龍は、徳利を手に取り好美が持つ瑠璃色のぐい飲みに注いだ。2人は静かに乾杯すると1口目を一気に煽りおつまみとして用意した落花生を割り始めた。

 改めて日本酒が入った琥珀色のぐい飲みがキラキラと輝いていた中、目の前の古龍が咄嗟に切り出した。


トゥーチ「夜遅くなのに本当にありがとう、実は今日ここに来たのは人探しに協力してもらおうと思ってなんだ。」

好美「人探し・・・、ですか?」


 好美はぐい飲みをテーブルに置いて神の相談を聞くことした。


-92 来訪の理由-


 深夜のビル前に降り立った「一柱の神」の一人で「三つ巴の三姉妹」の三女こと古龍(エンシェント・ドラゴン)のトゥーチ・ラルーは以前王宮で食べたカレーやハヤシライスの味に感銘を受けたらしく、自分でも作れない物かと天界で試行錯誤していたらしいのだがどうしてもあの時の味の秘訣を知りたいと降り立ったそうだ。

 ハヤシライスを作ったニコフからは既に恩人である焼き肉屋の板長・御厨を紹介されていたのだが案内された焼き肉屋に行った折・・・。


光「御厨さん、いなかったんですか?」

トゥーチ「ああ、今はヤンチっていうライカンスロープが板長をやっているらしいんだが本人に居場所を聞いたら知らないって言うんだ。」

好美「どうして店を出たとかは聞かなかったんですか?」

トゥーチ「店の奴には「新しいタレを考案するヒントを探しに行く」とだけ言って店を去ったそうなんだ、だから全く見当がつかないそうでな。」


 女将には会わなかったのかと聞いてみたのだが、奥でずっと電話していたらしいので全く顔を合わさなかったと言う。

 一先ず昼頃に店に行ってみようと提案した光、それに対し好美はこの世界に焼き肉屋がある事を知らなかったので少しドキドキしていた。


光「好美ちゃん、別に食べに行くんじゃないからね。」

好美「な、何を言っているんですか?店の人にお話を聞きに行くんですよ・・・、ね?」


 昼間から焼肉でビールも悪くないと思っていた事を光に見透かされた好美、焦りの表情を見せながらもなんとか誤魔化そうとしていた。


トゥーチ「すまねぇが、俺はこの後用事があるんだ。また来ようと思うし、こっちから何かしらの方法で連絡するから一先ず頼んで良いか?」

好美「分かりました、でもどうしてあの味に拘っているんですか?」


 好美の質問を聞いた古龍は少し俯きながら口を開いた。


トゥーチ「実はよ、俺天界では一応まだ学生なんだ。深夜働くクォーツの姉御やセリーの姉御からの仕送りの世話になってばかりでさ、せめて2人の為に料理でも作れないかなと思ったんだよ。好美ちゃんも食ってた時の2人の表情見ただろ、俺もあんな料理が作りたくてヒントを得ようと今回降りて来たんだよ。」


 話を聞くにトゥーチの性格や口調はただの乱暴者が故ではなく義理と人情を大切にしているからという事が読み取れた、江戸っ子に似たようなところか。


光「カレーの方はどうしますか?一応私がいつも作っているんですけど。」

トゥーチ「あん・・・、いや貴女でしたか、本当に美味しかったです。あの、差し支えなければお名前を頂戴させて頂けませんか?」


 美味たるカレーへの敬意だろうか、それともそのカレーを作成した光への敬意だろうか、目の前の神の口調が急に丁寧になった。


光「光です、ダルラン光。」

トゥーチ「光さんですか、宜しければ弟子にして下さい!!」

光「止めて下さいよ、貴女神様なんですから!!」

トゥーチ「せめてご教授頂けたらと・・・。」


 すると奥の調理場から聞き覚えのある、しかしこの時間帯に聞くはずの無かった声が。


女性「良いじゃないか、教えてやんなよ。あたしだって知らないんだから。」

トゥーチ「あんた、光さんの何なんだよ!!」

光「母の渚・・・、です・・・。」

渚「あんた失礼しちゃうね、自分の事神様だとでも言うのかい。」

光「本物の神様・・・です・・・。」


 光の言葉を聞いた渚は夢を見ているのだろうと頬を抓りだした、痛みを感じたので現実だと知った瞬間白目になりその場に倒れ込んだ。


光「お母さん、もう大袈裟なんだから。早く起きて。」

渚「ごめんなさいね、本物の神様そのものを初めて見たから驚いちゃって。思ったよりお若い方なんだね。」

トゥーチ「こう見えて今、2136歳なんだが・・・。」


 学生の三女が2136歳という事は長女や次女はどれ位長く生きているのだろうか、想像しただけでも震えてしまう3人であった。


-93 姿を変えた人狼-


 光からカレーの作り方の書かれたメモを受け取った「一柱の神」はじっくりと読み込んで、大切に胸元にしまった。


トゥーチ「作ってから・・・、1晩・・・、置くのが・・・、ポイント・・・、なんですね?光さん。」

光「そんなに興奮する事ですか?」

トゥーチ「いや、家で作れると思うと嬉しくてうれしくて。本当にありがとうございます。」


 用事へと向かう古龍を見送るべく光、渚、そして好美は屋外へと出た。人化を解除して古龍の姿に戻ったトゥーチは大きく翼を広げて飛び立った。


トゥーチ「すまねぇが、宜しくお願いします!!」


 飛び立った古龍は鼻息を荒くさせ天界へと帰って行った、一段落したなといった様子で店内に入って行く3人。

 好美は神と交わした盃の思い出を胸にしまいつつ、トゥーチに貰ったぐい呑みを綺麗に洗って自宅(15階)の食器棚に『転送』した。


光「そろそろ帰りますか。」

渚「そう言えば今、何時かね。」

好美「もうすぐ朝の8:00ですね。」


 時間の経過をすっかり忘れていた3人、丁度いい時間帯なので焼き肉屋に話を聞きに行く前に朝風呂を楽しみに行く事にした。

 入浴後、スッキリとした気持ちで瓶入りの牛乳を煽った3人は一旦解散した。

 11:00頃になり、待ち合わせ場所になっている「暴徒の鱗 ビル下店」の前に『瞬間移動』した好美は少し興奮していた。やはり本来の目的を忘れてしまっている、本人は完全に焼肉の舌になっていた。

 そこに光と渚が『瞬間移動』でやって来た。


光「お待たせ、待った?」

好美「いや、私も今来たんで大丈夫です。」

渚「なら大丈夫だね。」

好美「それにしても何で店の前なんですか?いつもだったら私の家なのに。」


 理由はとてもシンプルだった、渚が店で使う用にストックしているキムチを肴用に持って帰ってしまっていたのだ。

 渚からキムチを受け取った副店長のデルアは安堵の表情を見せた。


デルア「無いと思った、困りますよ女将・・・、渚さん。」

渚「あんた今何て呼ぼうとしていたんだい?」

デルア「聞き間違いですよ、それより用事があるのでは?」

光「そうそう、皆行こうか。」


 3人は光の『瞬間移動』で焼き肉屋へと向かった、相も変わらず高級感溢れる佇まい。


光「ここは大穴当てなきゃ来れないのよね。」

渚「あんた、私も食べてみたいんだが。」

男性「いらっしゃいませ、今はお気軽にお召し上がり頂けるランチもしてますよ。」


 聞き覚えのある声の方向に振り向いた光、しかしそこにいた男性に見覚えは無かった。ただ水まきをしていた男性の方は光の事を知っているらしい。


男性「光さんじゃないですか、確か今はダルラン光さんでしたっけ?」

光「あの・・・、どこかで?」

男性「すみません、この姿では初めてでしたね。自分ヤンチですよ。」


 よく見てみればこの店の板長の衣服を着ている、ただ見覚えのあるヤンチは確かまんまウェアタイガーだったはずなのだが・・・。


ヤンチ「親父の代わりに板長をするようになってから、ライカンスロープ(この姿)で店に出る様にしているんです。」

光「そうだったんですか、びっくりした。」

ヤンチ「今日はお食事にですか?」


 用事を思い出した光はトゥーチの事を話した、水まきの道具を『アイテムボックス』に入れたヤンチは開店前の店内に案内して3人にお茶を出した。


ヤンチ「え?!あの人本当に神様だったんですか?じゃあ悪い事しちゃったな。」


-94 狼男の真実-


 板長は顔にかかった水と汗を拭きながらグラスに入った麦茶を飲み干し、新しく入れなおしながら自分がやらかしてしまった事に関して告白した。神に対して無礼を働いた事を悔いている。


ヤンチ「いやね、あの人がいきなり店にやって来て「自分は神だ、御厨を出せ」なんか言い出すもんですからね、突然やって来たお初で乱暴な人をどう信用しておや・・・、いや御厨さんの場所を教えろというんですか?一応は個人情報でしょ、光さん位に信用出来ない人ぐらいでなきゃ教える事なんて出来ませんよ。」

光「ふふ・・・、親父さんを大事にされているんですね。」


 それもそうだ、元々巷で恐れられていたウェアタイガーを拾い、血は繋がってなくとも自分の子供の様に育ててくれた、いわば「育ての親」なのだ。どれ位感謝してもしきれない人を大事にしていない訳が無い。

 しかし話の流れからどうやら御厨の居場所を知っている様だ。


光「それで、今本人はここにいないんですか?」

ヤンチ「はい、親父なら今弟の所にいますよ。」

光「御兄弟がいらっしゃったんですか?」

ヤンチ「はい、実は最近知ったのですが自分には弟が2人いるんです。ほら、この街中にウェアウルフが2人いるでしょ、念の為にバルファイ王国の魔学校病院でDNA鑑定をお願いしたんですよ。」

光「パン屋の店長と肉屋のケデールさんですか?」

好美「というかDNA鑑定って・・・、ここ本当に異世界なんですか?」


 疑念を持つ好美をよそに会話を進める2人、ヤンチが言うには肉屋のケデールが次男でパン屋のラリーが三男だそうだ。

 それにしてもラリーって名前が久々に出て来た気がする、作者的に光にはちゃんと働いていて欲しいものなのだが。


ヤンチ「親父が肉の解体や成形について勉強したいって言うもんですから弟に頼んでみたんです、「兄ちゃんの育ての親は自分の育ての親も同然だから」って快く了解してくれました。宝田さんって人が育てている豚の肉にも興味があるらしいので一緒に育てながら店で使わせて貰える様に交渉するって言ってましたよ。」

好美「ああ・・・、守の・・・。」


 元彼の名前を聞いて少し汗を滲ませる好美、何か秘密があるのだろうか。

 それはさておき、一先ず2人はケデールの店に行ってみる事にした・・・、のだがまさかの天から声が、どこからどう聞いてもトゥーチだ。


トゥーチ「おうおうおう!!そこのウェアウルフめ、さっきから全部聞いてたが神であるこの俺を騙すたぁどういう了見だ?!」

ヤンチ「神様、申し訳ございません。騙すつもりは無かったんです、しかし初めて会った知らない方にいきなり親の居場所を教える子がいますかね?それと私、ウェアタイガーですので。」

トゥーチ「そうだな、二重にすまなかった。光さんと好美ちゃん、ちょっと待ってくれねぇか?今降りるから良かったら俺の背中に乗ってくれ。」

好美「そんな・・・、神様の背中にだなんて。」

トゥーチ「良いの良いの、案内してもらうんだから当然さ。」


 声が止んでから数秒後、何故か焼き肉屋の天井が軋みだしたので嫌な予感がした3人は店の外に出た。予感通りトゥーチが古龍(エンシェント・ドラゴン)の姿のまま店の屋根に降り立っていた。


ヤンチ「店が・・・、親父と俺の店が潰れる!!」

トゥーチ「ん?ああ悪い。」


 自分のやらかしてしまった事を知った神は慌てて人化し、屋根から降りた。

 潰れかけた店は光が新しく『作成』した『修理』で何とかしたので事なきを得た。


トゥーチ「この前はすまなかったな、今日もだが。」

ヤンチ「いえいえ、店が無事に戻ったので私は気にしてないですよ。」

トゥーチ「そうか、それは良かった。さてと、光さんと好美ちゃん。早速行きますか。」


 古龍の姿に戻ろうとした神を慌てて制止した、いきなり店の前に「一柱の神」である古龍が降り立ったら誰だって驚くはず。

 光が『瞬間移動』でこの世界で買った軽バンを持って来た、偶にはゆっくり街並みを見回しながら移動するのも悪くないと思ったからだ。

 「三つ巴の三姉妹」の三女は光には素直らしく、すんなり後部座席に乗った。軽自動車に神が乗っている場面を見た好美は何処か違和感を感じていた。


-95 恩人登場-


 光の運転する軽バンでのんびりと肉屋へ移動する3人、ただ好美の中には疑問が生じていた。


好美「気まずくならないですかね、今から元彼と元彼女が会うので。」

光「今更何言ってんの、そんな事日本でもよくある話でしょ。それにこの前だって普通に話していたじゃない。」

トゥーチ「何だ、好美ちゃん。元彼って誰だよ。」


 光は後部座席の神に守と好美の事を伝えた、ただ話を聞いた古龍はぽかんとしている。


トゥーチ「元彼の方はもう気にしていないんじゃね、大丈夫だよ。」

好美「そうですかね、私気にし過ぎなのでしょうか。」

トゥーチ「そうだよ、もう何年も前の話だろ。今となってはいい友達同士じゃないのか?」

光「そうよ、神様がそう言っているんだからその通りよ。」

トゥーチ「何かあったら俺が何とかしてやるから安心しろって、な?」


 何となく嫌な予感がした好美達は自分達で解決できると神の気持ちだけ受け取った、そんな中好美にはまだ疑問が一点。


好美「それにしても今日はカフェラッテじゃないんですね。」

光「あの子には3人乗れないからね、何となくだけどこっちにして正解だったわ。」


 そうこうしているうちに3人の乗った軽バンが肉屋の駐車場に到着した、相も変わらず唐揚げなどの惣菜の良い匂いが・・・、増えていた。光と好美の2人にとっては懐かしく、そして古龍にとっては新鮮な料理の良い香りがしていた。どうやら守の提案で豚の生姜焼きを中心とした料理を売り始めた様だ、肉屋の中では惣菜用にショーケースが追加されていた。ほかほかの特製弁当まで数種類売り始めていたのでもう肉屋なのか惣菜屋なのか、はたまた弁当屋なのか分からなくなってしまっている。

 そんな中、奥から店主のケデールが出て来た。最近羽振りが良いらしいのか、以前とは衣服が変わっている気がした。ただ物腰の低さは昔と変わっていないらしい。


ケデール「おや、光さんに好美さんじゃないですか。いらっしゃいませ、兄から話は聞いていますよ。そちらの方が神様ですか、お目に掛かれて光栄です。私、店主のケデールと申します。」

トゥーチ「トゥーチだ、御厨さんはいるか?」

ケデール「勿論、奥の豚舎にいますよ。呼んできましょうか?」

トゥーチ「いや、見学がてら俺が見に行くよ。」

ケデール「そうですか、ではこちらにどうぞ。」


 店主は自ら店の奥へと3人を案内した、通路脇の部屋で数人のパートだと思われるエルフ達がお惣菜を作っているのが見えた。


ケデール「最近人気商品になった焼きビーフンを作っているみたいですね、唐揚げの次に売れているんですよ。本当、守君のお陰です。」

光「良い匂いですね、後で買っても良いですか?」

ケデール「勿論です、ありがとうございます。光さんの為に沢山ご用意させて頂きますね。」


 そんな会話を交わしていると通路を抜け、加工場と何故か全く牛のいない牛舎を横切り豚舎へと到着した。中で守と御厨と思われる2人が豚達にやる餌を作っていた、自然素材に拘り一つひとつの工程を大事にだいじに行っている様子が伺えた。豚舎に豚は1匹もいない、どうやらこの店ではストレスを与えない為に豚も牛も放し飼いにしているらしい。


ケデール「守君、ちょっと良いか?」

守「はいはい、どうしま・・・、好美。」

好美「元気?相変わらずみたいね、何でも一生懸命やる所昔と変わってない。」

守「お前もだろ、やっぱりつなぎが良く似合っているよ。」


 元恋人同士が何気ない会話を交わしている中、店主が御厨を神に紹介した。御厨は首にかけたタオルで汗を拭いながら寄って来た。


御厨「トゥーチ神様、ご足労おかけして申し訳ございません、本来私の方から出向くべきですのに。ニコフから話は聞きました、私なんかのレシピで宜しければ喜んでお教えしますよ。」

トゥーチ「いえいえ、私が言い出した事なので気にしないで下さい。」


 光同様、美味いハヤシライスのレシピの持ち主である御厨に敬意を払う古龍。その表情は恍惚に満ちており、とても嬉しそうにしているのが伺えた。

 御厨は丁度この日の夕飯の献立をハヤシライスにしようとしていたので作りながらレシピを説明する事にしたそうだ。

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