4. 異世界ほのぼの日記2 86~90


-86 貸切の宴-


 好美の『瞬間移動』で店舗部分へと移動してから3分程経過したが今日の主人公は未だに状況を把握しきれずにいた、落ち着いて人化したのはいいものの店が見慣れない状態に変わっているので少しの焦りをも隠しきれていない。


ピューア「あ・・・、あの・・・、これ・・・。これは夢なのかな・・・。」


 寝ぼけている事も手伝い、ピューアはまだまだ夢の中だと勘違いしている。普段はシフトの関係で顔を合わせる事の無いメンバーまで集まっているので訳が分からなくなっていた。

 そろそろ本人に今いる場所が夢の世界ではなく現実世界である事を認識させてあげる必要があるようだと皆が空気を読むと、一斉にクラッカーの紐を手に取った。オーナーの好美が代表して音頭を取る。


好美「せーの・・・。」


 皆が紐を引くと想像以上に大きな爆発音と同時に紙紐が飛び出した。


全員「誕生日おめでとう、チェルドナイトマネージャー!!」


 貸切にしているが故に皆が顔見知りで心から主役の人魚をお祝いした、お祝いと優しさの気持ちの籠った拍手がそこら中から鳴り響いた。

 その拍手喝采のお陰でやっとピューアは目を覚ました、そして目の前のメンバー全員が自分の為に集まってくれた事に心から感謝していた。


ピューア「あ・・・、ありがとうございます。皆さんにどうお礼を言ったらいいのか。」

イャンダ「おいおい、礼は俺達にじゃなくて言い出しっぺに言いな。」

好美「本当、本人が内緒にしろって言うからずっと隠すの大変だったのよ。」


 ピューアが辺りを見回すと目線の先で妹が大きな花束を持って待ち構えていた、その後ろには決して大きいとも立派とも言えないが苦労して作ったと思われる誕生日ケーキが用意されていた。具材としてピューアが好きなフルーツが沢山飾りつけされている。しかし好美は少し違和感を覚えていた。確か「ロールケーキ」と言っていたはずだが、目の前に鎮座しているのはどう見ても「ホールケーキ」だ。聞き間違いだったのだろうか、でも気にする事も無いかとそのままにしておいた。

 好美の心を読み取ったのか、イャンダが小声で説明した。


イャンダ「元々横長に焼けていたケーキを切り分けて、ピューアちゃんが大好きなフルーツを沢山盛れる様に重ねたんだよ。」

好美「ふふ・・・、悪くないじゃない。」


 その瞬間、店舗全体の電灯が消えて皆が驚いていた。停電だろうか、と思ったらケーキの蝋燭に向かって小さな火の玉が数個。どうやら闇の魔術を使った副店長・デルアの演出らしい。蝋燭の火の光で辺りが温かく照らされると、そこにいた皆がケーキに注目した。


メラ「お姉ちゃん、吹き消して。でないと用意した折角の料理が冷めちゃう。」


 実際その心配は無かった、デルアが先程と同様の魔術を利用して金属で出来た容器の下に火をつけて保温出来る様にしていたが皆待ちきれなくなっていたので黙っておいた。


ピューア「う・・・、うん・・・。」


 ゆっくりと息を吸って蝋燭に優しく吹きかけた、普段の生活には支障は無いのだが人魚が故に吐く息が強過ぎると一緒に水を吐いてしまい折角のケーキを台無しにしてしまいそうなのだ。

 心配は無用だった、無事に蝋燭の火が消えて店の電灯が点灯していく。


ピューア「あ・・・、ありがとうございます。こんなの生まれて初めてです、この国とこのお店とこのマンションに来れて本当に良かった。」

好美「まだ呑んでないのに大袈裟じゃないの、ほら。」


 好美からビールで満たされた大ジョッキを受け取ると一気に煽った、店の営業でも出さない大きさのジョッキなので特別感がある。


ピューア「このケーキ、あんたが作ったの?フルーツたっぷりで美味しいじゃない。」

メラ「これね、イャンダさんに教えて貰ったの。ほらお姉ちゃん、中華も沢山あるから食べよう。」

ピューア「凄い豪勢じゃない、よし!!呑むぞ!!食べるぞ!!」


 楽しい宴はこれからが本番だ。


-87 一家からの贈り物-


 宴の主人公は大好物の中華料理を肴にビールをどんどん吞んでいた、乾杯してから数分した後にお祝いに参加しようと元々その場にいた渚以外のダルラン家のメンバーが大きな皿を持ってやって来た。


好美「光さん、いらっしゃい。その大きな皿は何ですか?」

光「実はパーティーにぴったりな中華料理を一応手配してきたんだけどね、やっぱり焼きたてが良いかなと思って敢えて焼く前の物を持って来たのよ。オーブンって借りても良い?」


 好美は調理場にある業務用のオーブンへと案内した、まだ焼く前のその料理の姿を見て驚きを隠せずにいる。

 蓋を開けた中には・・・、土の塊が。


好美「あの・・・、おままごとでもするんですか?」

光「何言ってんの、これが極上の料理になるんじゃない。」

好美「?」


 未だに中身が想像できない好美は少し嫌がっていたが、光の事は信用しているので言われた通りにオーブンへと入れた。

 次に油を中華鍋で熱して潰した米を揚げていく、その横で中華スープで作ったうま煮に片栗粉を加えていく。

 瞬く間に餡が出来ていくと出来立てのおこげと別の皿に入れて提供し始めた、サクサクのおこげと餡がピッタリで美味しい料理を今日の主役の下に。


ピューア「餡掛けおこげ、丁度食べたかったんです。紹興酒があれば良かったんですが。」

好美「言うと思った、用意しているよ。」


 普段この店には紹興酒を置いていなかったのだが、今日は特別に用意した。

 これは好美から中華料理が好きなピューアへの誕生日プレゼントであった、しかもただの紹興酒ではない。


ピューア「これ、「永昌源の古越龍山陳年10年」じゃない。高かったでしょ。」

好美「思ったより安かったし、丁度箱入りがあったからネットで買ったの。」

ピューア「凄く嬉しいよ、ありがとう。料理にも合うね。」


 少し離れた所から様子を伺っていたナルリス・ダルランが恐る恐る近づいて来た、手にはビールの入った緑色の小瓶を持っていた。


ナルリス「おめでとう、ただ俺のプレゼント出し辛くなっちゃったね。」

ピューア「ありがとうございます、何を持って来て下さったんですか?」


 美味しい本格中華にピッタリなあのビールをケースで取り寄せていた様だ。


ピューア「青島ビールじゃないですか、頂いても良いですか?」

ナルリス「勿論です、お嬢様。宜しければ、私の娘からお酌をさせて頂きます。ガルナス、お願いします。」

ガルナス「はーい。」


 父からグラスを受け取ったハーフ・ヴァンパイアがゆっくりと綺麗な泡を出しながら注いでいった、ナルリスの店でソムリエを兼任するサブシェフ・ロリュー指導の下で練習したのだろうか。


ガルナス「お待たせしました、ごゆっくりどうぞ!!」

ピューア「ありがとう、頂きます。」


 主役の人魚が注ぎたてのビールを楽しんでいると、ガルナスが綺麗に包まれたプレゼントを手渡した。中には酒にピッタリなあの商品が数種類。


ピューア「チー鱈の詰め合わせだ、ありがとう!!」

ガルナス「お家で呑む時に良かったら。」

ピューア「いや、今開ける!!」


 ピューアは興奮しながら包みを開けて2~3本口に入れた、そこに一気にビールを流し込む。人魚は親子からのプレゼントを存分に楽しんでいた、そこに調理場から「あの料理」が運び込まれる。

 目の前に焼けた土の塊を目の前に置かれた主役は、光から何故か金槌を受け取った。未だに訳が分からなそうな表情をしているピューアに光が声を掛けた。


光「それで塊を割ってみて、美味しい物が待っているよ。」


-88 想定外のとんでもない事実-


 皆の酒が進む中、「暴徒の鱗」の端でとある出来事が起こった。事件の発覚のきっかけは気を利かせた光の行動だった。

10分程前に遡るのだが、光がジョッキを片手に主役のピューアに一言聞いた。


光「何かご飯もの欲しくない?」

ピューア「そうですね、石焼ビビンパ的なやつ食べたいですね。」


 実はその数十分前から七輪を取り出してピューアを取り囲むように数人で焼き肉をし始めていたのだ、ただタレ代わりに皆豆板醤のみという変わった状態だったが皆気にしていなかった。塩だれという案もあったのだが、今日の主役の人魚はとことん激辛を貫きたいと聞かなかったらしい。


好美「作って来ましょうか、確か石焼鍋あったと思うので。」


 偶々なのだが新商品として叉焼とスープ、また醤油ダレを使った「石焼鍋チャーハン」と渚が開発した「辛辛焼きそば」をベースにした「辛辛チャーハン」を開発しようかと考えていたのでそれ用に購入しておいた石焼鍋があったのだ。

その石焼鍋を取り出して、ご飯を・・・ん?!何?!炊飯器が空っぽだと?!


好美「えーーーーーーーーー?!嘘でしょーーーーーーーー?!」


厨房中に悲鳴を響かせたオーナーの記憶が正しければ最低でも5升は炊いていたはずだ、しかし目の前の炊飯器は明らかにすっからかん・・・。

「そう言えば」と思い出した理由となる事実が。そう、あのガルナスとメラが揃ってしまっているのだ。

 しかも恰好のおかずとなる激辛中華が大量に、特に麻婆豆腐なんて最高のおかずになるからご飯が無くなるの想定の範囲・・・外だった!!

 5升あれば大丈夫だろうと思っていたのに2人でペロリと平らげてしまったらしい、2人の胃袋はブラックホールなのだろうか。


光「ごめん、2人抑えるの忘れてたわ。それどころか多分私やらかしたわ。」

好美「ど・・・、どうやらかしたんですか?」


 数分前、酒が進む中、給仕役として酒を各々の席に運んでいた女子高生達2人に光が一声かけた。


光「2人共お疲れ様、もう大丈夫よ。ほら、ご飯沢山炊いてるらしいから「何日か食べなくてもいい位に食べちゃいなさい」。」


光の言葉を聞いた2人は喜び勇んで炊飯器に食らいつく、大量の中華料理に焼肉と最高のおかずがあったのでご飯が進まない訳が無かった。


好美「光さん、本当にやらかしているじゃないですか!!どうするんですか、在庫もう無いんですよ!!」

光「取り敢えずおかずと一緒で『作成』と『複製』で何とかしよう、倍の量用意しておけば何とかなるって。大丈夫、流石にあの2人でも15升は食べないって!!」


 すると調理場の外か「あの2人」の声が・・・。


2人「ふいはへーん(すいませーん)、ほははひはいへふはぁ(おかわり無いですかぁ)?」

光「もうあんた達、食いしん坊なのは前々からだけど飲み込んでから喋りなさい。」


 2人は口いっぱいの白飯を一気に飲み込んだ、慣れているのか全く喉に詰まらなかったらしい。まるで球状で有名なあの「吸引力が変わらない」掃除機みたいだ。


ガルナス「ごめんごめん。それよりお母さん、おかずが美味しすぎてあと炊飯器2つ分食べれそうなんだけど。」

メラ「あ・・・、あたしも炊飯器2つ分で・・・。」


 2人の言葉を聞いた大人達から歓声が沸き上がった、もう大食いで有名人だ。「大食いキャラ」は元々光のポジションだったはずなのだが。

 そんな中、『作成』と『複製』を繰り返して一先ず20升分を用意した、人間の食べれる量ではない。


光「あ、今思えばハーフ・ヴァンパイアと人魚だったわ・・・。」

好美「いや、関係なくないですか?どう考えても「何日か食べなくてもいい位」って言葉が故ですよね。」

光「あ・・・、やっぱりそう?」

ガルナス「お母さん、おかわりまだぁ?」


-89 餌やりと新たな招待客-


 ハーフ・ヴァンパイアの一言に焦りの表情を見せる母親、自分の娘の腹の底が未だに見えない光は一気に酔いが冷めてしまった様だ。

 自棄になってしまったのだろうか、辺りを見回して酒のお代わりを求めていた。店のオーナーも同様に感じていたので席に戻って一緒に呑む事にした、ただ主役が欲しがっていた石焼ビビンパの事はすっかり忘れてしまっている。

 しかし問題はなかった、ピューアが酒が進んで石焼ビビンパの事はすっかり忘れてしまっていたからだ。


好美「助かりましたね、石鍋温めるの結構時間かかるんですよ。」

光「ただね、さっき追加したご飯も下手したら・・・、じゃない?」

好美「流石に20升はすぐに無くならないでしょう。」


 心配する2人をよそにまだ飽き足らない女子高生達は釜の中の白飯をどんどん胃袋へと入れていく、今度はおかずが足らなくなって来た。

 流石に美味しい物でもずっと食べていたら飽きて来るだろうと、流石に時間が解決してくれるだろうと待っていたのだが一向に2人の箸は止まらない。それどころかペースアップしている様に見える。

 どうやら別席で焼肉をしながら2人の光景を見ていたナルリスが自分達の席に呼んで焼肉を食べさせていたらしい、飽きが来ないように予め味変を用意していたのだ。

 焼肉のたれは甘口と辛口を用意しており、また塩だれに味噌だれまで。これは流石に飽きが来る訳が無い。

 まさかの山葵まである、これはまた炊飯する必要があるのではなかろうか。


光「ナル、まだ食べさせる気?この2人どんだけ食べたか分かってんの?」

ナルリス「今日くらい良いじゃないか、祝いの席だぞ。」

光「だからって・・・、田んぼ何反分なの・・・。」


 全てガイの田んぼで育った物(の『複製』)なので地元産、不味い訳が無い。しかも全て炊き立ての最高の状態だからなおさらだ。

 黙々と食べる女子高生達は焼き肉のスタイルが違っていた。ガルナスはご飯にタレを付けた肉をバウンドさせるタイプ、対するメラは肉でご飯を巻くタイプであった。ただ共通して言える事として2人は20升分の白飯を我が物の様に取り合っている、その光景を楽しそうに吸血鬼が眺めて肴にしていた。日本酒の熱燗が入った盃を片手に笑い続けている、一応目の前の漬物をつまみながらだが殆ど必要なさそうな様子だ。


 もう調理場で料理を作る気も起きなかった、やけくそになった光達は全て『作成』で新たな料理を出していた。流石にずっと中華が続いていたので次は和食料理、全席で皆が日本酒を呑んでいたので魚料理を中心に。


好美「私達も早く呑みましょう、一先ず鮪の刺身からで良いですか?」


 即興で『作成』した魚を数種類並べてやけくそになった2人は改めて乾杯し、互いの盃に日本酒を注いだ。


光「はぁ・・・、やっぱり日本酒には魚よね。あ、鯖とホッケの塩焼きだ。食べたかったのよ。」


 光の「鯖とホッケの塩焼き」という言葉を聞き逃さなかった女子高生2人が目を光らせてテーブルにやって来た、手には未だ箸と茶碗が。これは正直やらかしてしまっている。

 急いで『複製』したので難を逃れたが、まだ安心して良いのか分からない。恐る恐る調理場を覗いたが天高く積まれた茶碗により好美は呆然とするしか無かった。

 しかし日本酒で酔ってしまっていたのですぐにどうでも良くなってしまった、「まぁ何があっても大丈夫だろう」という気持ちの方が大きくなっていた。

 一先ず塩焼きを数十人分『複製』しておいて女子高生達のテーブルに置いておく、その様子は「食事」というより「餌やり」。

 「餌やり」を済ませた光は今日の主役やオーナーと合流して女子会を始めた、日本酒の大瓶がどんどん空いていく。後片付けの事を想像したくはないが、今はもうそんな事お構いなし。


光「いっその事あの2人にさせれば良いじゃない。」


 それも考えたが今は酒が美味いからどうでも良い、塩焼きに飽きた好美は次の肴から味噌煮に切り替えていた。

 それを目の当たりにした女子高生達は味噌煮でも白飯を食べていた、20升がなくなりそうだ。どっちメインか分からなくなったが主役はピューア、しかし皆気にしていない。

 夜がどんどん更けていく中、どうやら新たな招待客が。ただ既に出来上がっているのでロックが外れている。


結愛「おいピューア、来てやったぞ。」

ピューア「こっちこっち、待ってたよ。」


-90 洗い物の事実-


 時刻は23:30、結愛との再会を果たした主役の人魚はしっぽりと呑みだした。流石に呑みすぎたかと感じた客たちはピューアに一言告げて帰って行った、ただ未だ女子高生達は白飯を食べ続けている。

 そんな中、まさかの厨房呑みをしていた好美と光は大量の食器類と対峙していた。こうなる事は予想していたが流石に食洗器だけでは追いつかない。

 しかし心配は無用だった、ここは日本ではなく異世界なので異世界らしい解決方法がある。白飯をずっと食べ続けていた人魚の妹が指を1本動かして大きな水泡の様な物を出した、よく見てみるとスライムだ。


メラ「汚れならこの子が食べてくれますよ、放り込むだけでオッケーです。」


 人魚特有の『メイクスライム』と言う魔法らしく、ダンラルタ王国に住む人魚族は大抵使えるらしい。ただ食洗器が気に入ったのか店での業務中にピューアが使わなかったので好美は初めて知った、かなり便利な物の様だ。

 全ての洗い物を放り込まれたスライムは体内で汚れを消した(いや食べた)後、丁寧に乾燥まで終わらせて綺麗に皿を整理整頓して並べていた。

 好美は正直このスライムを雇いたくなった、しかしその思いと裏腹にメラは魔法を解除してスライムを消してしまった。


好美「あ・・・。」

メラ「どうしました?」

好美「いや、別に大丈夫。」


 今思えば自分には『作成』がある、早速『メイクスライム』を『作成』して見様見真似で指を動かしてみた。

 指先から出始めたスライムがどんどん大きくなっていく、そして最大のサイズになった瞬間に指先から離れて独りでに汚れた皿を探していた。

 幸い、未だ白飯を食べていた女子高生達が茶碗やおかずの皿を重ねていたので迷わずそっちの方へいったのだが。


メラ「このスライム、お姉ちゃんが出したの?」


 話に夢中なのかメラの言葉はピューアの耳には届いていない、それどころか2人の会話の声量はどんどん大きくなっていく。


結愛「だろ?そんでうちの光明がよ・・・。」

ピューア「何それ馬鹿みたーい。」

メラ「お姉ちゃんたら・・・。」

ガルナス「良いじゃないの、誕生日位楽しませてあげようよ。」


 好美は未だに首を傾げるメラの方へ近づいて行った、そろそろ自分がスライムを出した事を伝えるべきだと思ったからだ。


好美「ごめん、紛らわしい事して。私がスライムを出したの。」

メラ「あれ、好美さんって人魚でしたっけ・・・?」

好美「うん、がっつり人間!!」

メラ「どういう事ー・・・。」


 意味が分からなくなったメラは白目になりその場に倒れてしまった、さり気なく人化が解けかけている。


ガルナス「しっかりして、こんなのよくある事じゃない。」


 同級生のハーフ・ヴァンパイアは母親や祖母のお陰で慣れてしまっていた、ただメラにとっては初めての出来事な上に人魚特有魔法の『メイクスライム』を人間が自分の物の様に使っている。『作成』を目の前で見たので驚くのも無理も無い。


好美「ごめんごめん、落ち着いた?」

メラ「・・・、はい。」


 受け取った水を飲んでようやく落ち着きを取り戻したメラは食事を再開した、まだ食欲が残っていて腹は減っているらしい。

 何があってもどうでも良い様子で姉は呑み続けていた、先程の妹もそうなのだが正直言って人魚が魚を肴にしているので共食いになっている。


好美「お陰で楽に片づけできたよ、ありがとうね。これは私からのお礼だから食べて。」


 好美は餃子数皿を差し出してメラに感謝した。

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