4. 異世界ほのぼの日記2 66~70


-66 人魚の魚料理-


 渚が危機を脱して具材たっぷりのサラダを完成させた頃、釜から大抵の日本人が好きな香りが漂って来た。酒にも米にも合うあの素材の良い香り、それによりそこにいた転生者3人は頭がおかしくなりそうになっていた。

 ピューアが胡麻鯖を買っていた事を思い出した好美は、まさかと思い鍋を確認する。どうやら予想は当たっていたらしく・・・。


好美「これ、もしかして鯖味噌?!」

ピューア「あれ?嫌いだった?」


 好美が鯖味噌嫌いな日本人なんているのだろうかと疑問を抱いていた時、目の前の人魚がお玉で煮汁を一掬いして小皿に取り分けて味見を要求してきた。そう簡単に手の内を明かして良いのだろうかと思いながら1口、やはり大抵の日本人が大好きなあの味。小中学校の給食でも白飯が無くなる程人気だったあの味だ、当時は1人1切れだったが、今回は半身を1人占め出来ちゃうという。


渚「1人で半身ってかなり贅沢じゃないのかい?」

ピューア「かなり安く手に入りまして、ただこれだけじゃないですよ。」

好美「味見した限りは本当に大好きな美味しい鯖味噌だけど。」

ピューア「ここかにまた追加要素が入るのよ。」


 これ以上に何を足すのだろうかと頭を悩ませている好美の目を隠して、釜の反対方向へと好美自身を動かした。


ピューア「ここからは企業秘密だから、内緒。」

好美「・・・ケチ。」


 流石に勝負ごとになると、仕事仲間でも手の内を明かす訳には行かないらしい。ただ、このままでも十分美味しいのにと再び頭を悩ませていた。

 ただ、好美も見てばかりとは行かなかった。そろそろ自分も調理にかからないと全くもって間に合わない、しかし何も準備していない訳ではない。『瞬間移動』で向かった先の冷蔵庫で鰹出汁に醤油と海苔を加えたつけ汁を冷やしていたのだ、それと冷凍庫に自慢の自然薯を入れていた。


好美「そろそろ良いかな・・・。」

渚「何で冷凍庫に入れていたんだい?」

好美「ひゃあ!!いつの間にいたんですか?!」


 渚が好美の作業を後ろから覗き込んでいた、しかしどうして冷凍庫に自然薯を?


好美「冷凍庫に入れておくと調理した時痒くならないんです。」

渚「ほぉ・・・、生活の知恵だね。」

好美「へへ・・・、良いでしょ。」


 実は好美も先程知ったばかりだった、ずっとスマホを片手に調べた結果出逢えた方法。

 2人がこんな会話をしていた時、裏庭から再びいい香りがして来た。先程の鯖味噌に芳醇な何かが加わった香り。


好美「これは・・・、何でしょうね・・・。」

渚「ん?これは身に覚えがあるね・・・、嫌な予感がするよ。」


 渚は予感が外れていてくれと願いながら自分の部屋へと『瞬間移動』した。


渚「ふぅ・・・、私の宝物ちゃんは無事だったみたいだね。それにしても良い匂いさね。(念話)ピューアちゃん、もしかしてあれを入れたのかい?」

ピューア(念話)「あ、やっぱり分かりますか、かなり匂ってます?」

渚(念話)「結構漂っているよ、流石調理師免許を持っているだけあるね。そして出来る女子だね。」

ピューア(念話)「そうですか?あ、もうすぐ出来上がりますよ。」


 匂いに誘われた渚はピューアが使用する釜へと『瞬間移動』した、先程の鯖味噌がピューアの入れた「隠し味」により一層良い色に変化している。


渚「やっぱりか、あんた梅酒を入れたね?」

ピューア「やっぱり渚さんには隠し事は出来ないですね、でも味では負けませんよ?」


 そう言いながら火を止め、余熱での調理をし始めた。煮物は1度冷ましてからもう1度加熱した時が美味い事をちゃんと理解している。

 1度冷ますと具材の水分が抜け、再び過熱した時煮汁が沢山染み込んで美味くなるのだ。やはり元寿司職人は侮れない。


-67 審査員は未成年?!-


 光は今頃思い出したのだが、自分は見てばかりで何も作っていなかった。しかし、決して焦ってはいなかった。家庭菜園に行けばヒントがあるはずだと早速走って向かった、ただ『瞬間移動』すればすぐなのに何故かそれすら忘れていた。

 ルールは1品のはずだったが、光の脳内には2品ほど思いついていた。ただそれらを合体すれば何とかなりそうだ。

 光は顔と衣服を汚しながら皆が大好きなあの土物野菜を掘り起こした、じゃが芋だ。裏庭に戻った光は早速掘って来た内の数個を蒸かして潰し、粗熱を取って刻んだ胡瓜や人参を加えてマヨネーズで和えて冷蔵庫で冷やす。光が作りたかったのはポテトサラダだ、しかし何故か釜でたっぷりの油を高温に熱している。じゃが芋を薄くスライスしてゆっくりと揚げていく。そう、何故かポテトチップスを作っている。


渚「あんただけ2品なんてズルじゃないのかい?」

光「突然ルールを追加したお母さんに言われたくないもんね。」


 光はこういった会話を交わしながら揚がったばかりのポテチ数枚に塩味を付け、渚の口に突っ込んだ。揚げたてを突っ込まれた母親は熱さで顔を赤らめ、口をハフハフさせていた。


渚「もう、やってくれたね。でもこれだけでも美味しいじゃないか、これをどうするつもりだい?」

光「一度、冷ますの。」


 揚げたてのポテチの粗熱を取ると手で潰し、バットに集めていく。


光「後でトッピングにすんの。」

渚「成程、食感のアクセントにかい?でも塩味が邪魔しちゃうじゃないか。」

光「こっちのポテチには塩味を付けていないの、マヨ味を邪魔しない様にね。」


 パンを使ったクルトンにしても良いが、他の人と被るのはちょっと嫌だったのだ。

 4人の料理が揃ったので、裏庭に置いたテーブルに並べて試食する事に。早速、缶ビールを開けて高らかに乾杯をした。

 最初は、渚のサラダ。脂分の多いバラ肉を使ったのにも関わらずポン酢味のお陰でさっぱりと食べることが出来る、即席で作った渚の料理は結構好評だった様だ。

 次は好美の自然薯料理、皆自然薯といえばとろろを思い浮かべるが今回は細切りにして出汁醤油や海苔で和えている。隠し味として山葵を入れていた為、ビールだけではなく日本酒にも合った。

 ピューアの作った鯖味噌に移る、その美味さは言うまでもない。皆が知っていて大好きなあの味、隠し味の梅酒が深みを与えていた。勿論、熱でアルコールを飛ばしている。

 最後は光のポテトサラダ、ブラックペッパーで味付けして直前にパリパリサクサクのポテチをかけたので思った以上に好評で美味い。

 酒が進んだ4人は、正直勝負などどうでも良くなっていた。その時、光の旦那が経営するレストランの方向から若い声が・・・。


声「ただいま・・・、って昼間から何やってんの?」

光「あんた、学校じゃなかったの?」


 声の正体は光の娘であるハーフ・ヴァンパイアのガルナス。


ガルナス「今日、午前中までで終わりって言ったじゃん。お昼まだ?お腹ペコペコなんだけど。」


 その言葉を聞いて渚は思いついた。


渚「ガル、この4品でどれが美味いか食べ比べてみてくれない?」


 何故そうなったかという理由を知りたくはないが、4人が作り過ぎたため料理は十分に残っていた。それに今帰って来たばかりの女子高生は誰が作ったかを知らないので先入観無しで味の審査が出来るはずだ、因みに審査員には酒の代わりに炊き立ての白飯を渡している。

 ガルナスの姿を見て、ピューアが1つ思い出した事があった。


ピューア「ガルちゃん、メラも帰っているの?」

ガルナス「バスでもうすぐマンションに着くと思いますけど。」


 渚から『付与』された『探知』と『瞬間移動』を使い、バスを降りたばかりの妹を連れて来た。


メラ「何?お姉ちゃん?」

ピューア「何って、お昼ご飯よ。」


-68 試食開始-


 メラにも同様に炊き立ての白飯を渡したのだが、未だに女子高生の人魚は意味が分からなくなっていた。言ってしまえば家に帰った瞬間にいきなりやって来た姉に捕まり、移動した先で急に白飯を渡されたのだ。正直、メラの気持ちも分からなくもない。

 ただメラはテーブルに並んだ4品を見て状況を把握した、お得に美味しいランチを楽しめると思うとテンションが上がった。

 一先ず白飯を渡された女子高生2人は席に座り早速1品目に箸を延ばす事にした。やはり先入観を持たせる訳にも行かないので、作った者の名前は伏せて「(A)豚バラ肉の冷しゃぶサラダ(渚)」と称する事にした。

 早速2人は(A)の試食を開始する、ガルナスは大好きな豚バラ肉の脂の甘みとサッパリとしたポン酢味で白飯2杯をあっという間に食べてしまい、すぐにお代わりをした。そのままの勢いでサラダも完食してしまった。

 一方メラは半分食べると箸を止めてしまった、口に合わなかったのだろうか。ただ別の理由を示唆したピューアは妹に聞いてみた。


ピューア「ん?どうした?」

メラ「お姉ちゃん・・・、パン無い?食パン・・・、欲しい。」

ピューア「まさかあんた・・・。」


 渚は自らの料理を試食したマーメイドの要望に応えるべく、急いで自分用に置いてあった食パンを持ち出して来た。


渚「沢山あるよ、何枚欲しい?」

メラ「一先ず2枚下さい、サンドイッチにしたいです!!」

ピューア「やっぱり・・・、渚さんすみません。」


 そう、ピューアは美味いサラダを食べたメラがどうしてもサンドイッチにしたがるという癖が有る事を覚えていた。残った半分のサラダを渚に渡されたパンで挟むと勢いよく平らげてしまった、1斤あった食パンの半分が無くなりそうな勢いだ。


メラ「ああ・・・、このシャキシャキレタスがたまんない!!」


 それを聞いた渚は勝ちを確信した顔をしていた、表情から興奮が全員に伝わってくる。

そんな中、次の「(B)パリパリポテチのポテトサラダ(光)」の試食が始まった。メラの癖対策の為、最初からパンを数切れ備えてある。

ガルナスは白飯をまた2杯食べてしまった、光の遺伝子がここで発揮されている。慌てたピューアは予め空けておいた釜で急いで米を炊き始めた、下手したら足らなくなってしまいそうだったからだ。

予想通りメラはポテトサラダもサンドイッチにした。一応1斤半を用意していたのだが、どう考えても足らなそうなので光に頼んで急ぎラリーの店で仕入れて貰った(勿論従業員割引きでの値段を後で払っている)。

そんな事も知らず、メラは先に用意していたパンを全て食べてしまった。その横で姉が呆然としている。


ピューア「すみません・・・、パン代出しますので。」

光「良いの良いの、きっとこれ見たら店長も喜んでるはずだから。そうでしょ?」


 すると、光の横でライカンスロープとバルタンが目を輝かせている。どうやら店長のラリーとパン焼きのウェインが光の『瞬間移動』で付いて来てしまった様だ。


ラリー「あんなに美味そうにうちのパンを・・・。」

ウェイン「こんなに嬉しくなったのは久々だよ。」


 2人は感動で泣きそうになっていた、それを見てピューアはこれから食パンはラリーの店で買おうと決めた。

 美味そうに食べるメラの表情を見て、ラリーは店でのサンドイッチの販売を強化しようと考えた。その時は是非とも目の前で自らのパンを頬張る人魚に協力をお願いする事にした。

 さて次は「(C)梅酒薫る鯖の味噌煮(ピューア)」に移る、流石にこれではパンは進まないのでパン屋の2人には帰って貰う事にした。改めて白飯を盛りなおした茶碗を手渡して試食を促したが、2人は1口食べるとそれだけで白飯が半分無くなってしまった。それだけの量が何処に入っているのだろうか、正直光もドン引きしている。


ガルナス「合うー・・・。」

メラ「これはご飯だわ、進むね。」


 白飯が炊き立てだからか2人は嬉しそうに食事を楽しんでいた、正直皿洗いに誰か雇わないといけない位の勢いだ。

 その横で緊張を隠しきれていない者がいた、好美だ。今までの3品が高評価過ぎて自分の料理の試食がとても心配だった。


-69 審査結果-


 遂に好美の作った料理の番となった、勿論審査員2人には誰が作ったのかは今まで通り内緒にする。しかし、好美の表情を見るとバレてしまうそうで怖かったから渚は落ち着く様にと缶ビールを勧めた。

 2人に最後の料理、「(D)自然薯の細切り、鰹出汁醤油かけ(好美)」が配布された。2人にとったら自然薯と言えばやはりとろろだったので少し違和感を覚えていた。とろろにして白飯にかけて食べる物のイメージ、ずっとそれだけを抱いていた。

 配られた料理に箸を延ばす、細切りの自然薯を取り海苔と隠し味の山葵が混ざった出汁醤油のタレを存分に絡ませて1口。

 すると、2人の口から大きく「シャリッ」という音が聞こえた。その食感が食欲を増幅させ白飯を進ませた。隠し味のツンとした山葵が白飯をまた誘う。


メラ「美味しい・・・、お箸が止まらない。」

ガルナス「こんなの初めて、とろろ以外知らなかったから嬉しい!!」


 女子高生2人は服を汚さないために身につけていた紙エプロンを存分に汚しながら夢中に食べていた、3杯ずつ白飯を食べ終わった頃には2人の唇には海苔が所々付いていた。

 2人はテーブルに置いた茶碗に向かって箸を投げて息を切らしながらグラスの水を飲んだ、勢いよく飲み干した。飲み干した後の2人の表情は恍惚に満ち溢れていた。


メラ・ガルナス「最・・・、高・・・。」


 渚は2人の表情を見てため息を1つ。


渚「ふぅ・・・、こりゃ結果は決まった様な物だね。」

好美「え?」

ピューア「一応聞いてみる?」


 ピューアの言葉を聞いた光は即席で『作成』した札を2人に渡した、札には料理に割り振られたアルファベットが記されている。

 2人はどれが1番美味かったかを数分かけて相談した、長く話し合った結果がようやく纏まった様だ。審査員達はその結果を声を揃えて伝えた。


メラ・ガルナス「せーの・・・、全部です!!」

渚「ありゃ、これは意外だったね。という事は・・・。」


 渚はそう言うと鋭い視線を感じた、光が渚に向かってニヤリとした表情を浮かべて笑っている。


光「お母さん、私の勝ちだね。ほら、1万円出して。」


 そう、親子は賭けをしていた。渚は「D(好美)が勝つ」に、光は「勝敗が決まらない」に各々1万円を賭けていた。


渚「うーん・・・、あんたは天才なのかい?」


 そう言いながら渚が財布から渋々1万円札を取り出すと、光は素早く取り上げた。その横で女子高生2人が何かを企んでいた。


ガルナス「お母さん、家庭菜園の野菜使って良い?」

光「勿論良いけど何するの?」

メラ「お礼に私達にも何か作らせて下さい!!」


 メラの言葉を聞いたガルナスは料理の先付として、朝学校へ行く前に仕込んでおいた「オイキムチ」を小皿に持って4人に出した。


ガルナス「取り敢えずこれで呑んでて。」


 そして2人は家庭菜園へと消えて行った。数分後、メラが胡瓜とレタス、そしてトマトを持って戻って来た。後を追う様にやって来たガルナスの手にはサラダチキンが1パック。そしてサラダ用のパリパリ麺が用意されていた。

 ガルナスがサラダチキンを手で裂いている間にメラが胡瓜とトマトを切っていく。レタスをザクザクと切ると、最初に皿に仕掛けておいたパリパリ麵の上に乗せてその上から胡瓜を散らすと皿の外側にトマトを彩りに添えて行った。

 裂いたサラダチキンを上に乗せてゴマダレをたっぷりとかけると完成。


ガルナス「出来たよ、棒棒鶏風の麺入りサラダ!!」


 見た目も涼し気なサラダの完成だ、4人が早速箸を延ばす。するとたっぷりかかったゴマダレが食を進ませた。上からかけた辣油がビールを誘って好評だった。


-70 人魚の願い-


 好評だった料理に何かお礼がしたいと4人は相談し始めた、2人の為に何かできる事はないだろうかと女子高生達に質問した。正直今なら、2人の為に何でもするつもりだ。

 その時、光はある事を思い出していた。先日、メラがナルリスのコロッケを食べた時にその味に、いやナルリス自身に惚れこんでいた事を。そして惚れた男に男を見せて欲しいと願い出ていた事を。ただ、何を願おうとしていたのかはっきりと聞けていなかったのだ。


光「そう言えばメラちゃん、うちの旦那に何かお願いしようとしていたんじゃない?」

ピューア「そうそう、あんたこの前何か言おうとしていたじゃない。」


 2人の言葉を聞いてメラは急に体を硬直させた、先程まで伝わって来ていた本人の高揚感が嘘の様だ。目の前の人魚(マーメイド)は光の「うちの旦那」と言われてかなり緊張していた様だ。


メラ「あ・・・、あの・・・。先日言おうと思ったのですが・・・。」

ガルナス「お母さん、もうちょっと聞き方考えた方が良いんじゃいの?それだとメラもなかなか言いたい事言えないじゃん。ほらメラ・・・、ゆっくりでいいから丁寧に言ってみな。」


 ガルナスに背中を押されたメラは、先日魔学校で担任から渡された1枚のプリントを出した。因みにこの日の為、ガルナスも光に渡していなかったという。

 また、ガルナスがたまたま理事長室から出て魔学校の中庭にいた結愛に直談判して光や好美達にも内緒にしておくようにと伝えていた。

 メラの純粋な気持ちを汲んだ結愛は快諾し、あらゆる角度から情報が漏れない様に手を回して今まで内緒にしていた。

 光に連絡用として『付与』されていた『念話』を結愛に飛ばした。


ガルナス(念話)「理事長先生、例の件はもう大丈夫だそうです。」

結愛(念話)「そうですか、遂に打ち明ける勇気が出たと。」


 因みに結愛はこの度、メラがナルリスに告白すると勘違いしている。


ガルナス「ほら・・・。」

メラ「う・・・、うん・・・。あの・・・、ナルリスさんに今度の遠足に持って行くお弁当を作って欲しいなって思って・・・。」

ガルナス「私とお揃いにしたいみたい。」


 ただ、ガルナスは忘れていた事があった。ガルナスの弁当はいつもナルリスではなく光が作っていた事を。


ガルナス「お父さんのコロッケに惚れこんじゃったみたいなの。」

光「この前店で余ったって言ってたあれ?」

ガルナス「うん、よっぽど胸に刺さったらしいよ。」


 ガルナスがメラの背中を押しているのを察した光はナルリスに既に『念話』を飛ばしていた、それが故に裏庭にコックコートを着た吸血鬼の姿が。


ナルリス「この前のコロッケがそこまでさせたのかい、大袈裟だと思ったけど相当だったんだね。」


 震えながら目に涙を浮かべて「コクッ」と頷いた。


光「仕方ないね、何でもするって言っちゃったしね。お願いできる?ただガルナス、今まで何で言わなかったの?」


 するとその時、状況を察した結愛から『念話』が。


結愛(念話)「友達の気持ちに可能な限り応えたかったが故ですよ、光さん。」

光(念話)「結愛さん、貴女も知ってたのね。理事長だから仕方ないのかな。」

結愛(念話)「ごめんなさい、どうしてもと言われまして。」

光(念話)「それで、遠足っていつなの?」

結愛(念話)「それが・・・。」


 光はプリントをもう一度見た、開催予定の日付を見て驚愕した。


光「明日じゃない!!食材なんて買ってないよ!!」

ナルリス「ちょっと店見て来るわ、確か余り物やもう店に出せない食材があったかも知れないからそれを使えば十分な弁当が出来るはず。」


 ナルリスは期限の2日前になった食材は店に出さない事にしていたのであった。

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