4. 異世界ほのぼの日記2 ㉖~㉚
-㉖ 思い出の味と人魚の師匠-
母親がこっそり買った魚介類の干物を楽しむ中、娘と人魚は屋上からエレベーターで一旦下に降りて呑む直前辺りに仕掛けておいたカレーの様子を見に行っていた。
ピューア「皆さんお料理気に行って下さっているみたいで良かったです、カレーも皆好きなはずですから大丈夫でしょう。」
好美は個人的な理由でついて行っていたと言っても過言では無かった、以前話した通り好美はカレーを食べると嘔吐下痢が出てしまうという体質なので保険として『作成』した『臓器強化』が作用するかどうかを確認する為だ。
圧力鍋で食材を柔らかくしつつ、一旦冷まして味を染み込ませもう一度熱を加えて美味しく食べようという考えの下、最後の仕上げの作業を行う事にした。
焦がさない様にゆっくりと混ぜつつ熱を加える、これで美味しく食べれるはずだ。
ピューア「好美さん、味見をお願いできませんか?」
「ついに来たか」と思いながら小皿を受け取り一口、皆が大好きなあの味だ。米にも酒にも合う美味しいカレー、暫く様子を見ていたがスキルのお陰で大丈夫そうだ。
好美「うん・・・、美味しいです。」
自分も素直な気持ちでカレーを楽しめるという事が何よりも嬉しかった、久々に食べた温かな美味しいカレーだ。
2人は早速カレー鍋をエレベーターで運ぶことにした、芳しい香りがエレベーター内に広がる。
好美「我慢できるか分かりません、早くもう一口を下さい!!」
ピューア「ふふふ・・・、楽しみにしていて下さいね。」
卓上コンロも忘れず持って来たので温かいまま楽しめる事も嬉しい、エレベーターの扉が開いた瞬間に広がった香りが皆に何故か懐かしさを感じさせた。
渚「日本にいた頃のカレーを思い出すね、光にもよく作ってやった事を思い出したよ。」
光「子供の頃に戻った気分だよ、まさかこの世界でこの香りに出逢えるなんてね。」
ピューア「何言ってんですか、ゲオルさんの店で普通に売っていたカレールーを使っただけですよ。」
そのままで酒の肴にする者、白飯にかけてカレーライスにする者、各々で楽しんでいる中で1口1口じんわりと味わう者がいた。結愛だ。
きっと毎日の様に高級料理ばかり食べているので家庭の味が懐かしかったのだろう。
結愛「ピューア、1つ頼みがあんだけど。」
ピューア「いいけど、何?」
結愛「何処か懐かしい味がしてよ、このカレー少し持って帰って良いか?」
ピューア「勿論、多めに作ってあるから。別の鍋に移しておこうか。」
結愛「いや、俺がやるよ。」
『アイテムボックス』から両手鍋を取り出し自らカレーを移し始め、鍋半分位まで入れるとその鍋を『アイテムボックス』に戻した。
好美「それにしても随分噛みしめてたみたいだけど、何かあったの?」
結愛「光明と付き合い出した時に食べたカレーに似ていてな、あいつにも食わせてやろうと思ってよ。」
貝塚義弘から財閥の全権を奪取した株主総会の後に食べたカレーの味に似ていて嬉しかった様だ。きっとあの時の苦労を思い出したのだろう、その末で食べた思い出の味だったのだ。恩人の作ったカレーの味・・・。
結愛「知り合いの味に似ているな、誰かに教えて貰ったのか?」
女性「他の誰でもない、私だよ。」
結愛「えっ?!どうして貴女がここに?!」
ピューア「この人が私の師匠だけど、知っているの?」
割烹着を着て突然現れた女性の姿に驚きを隠せなくなっている結愛、ただピューアを除く他のメンバーは知らない人が突然やって来ただけなので何も言えない。
結愛「知っているも何も、この人は俺の会社の筆頭株主だ。宝田真希子(たからだまきこ)氏、その人だよ!!」
真希子「久しぶりだね、まさかここであんたに会うとはね。旦那は元気かい?」
結愛「相・・・、変わらず・・・、です・・・。」
-㉗ 筆頭株主の過去と意外な知り合い-
この世界で会う事は無いだろうと思っていたので驚きと緊張を隠せなくなっていた結愛、しかし嬉しさもあるので最高の瞬間だった。
結愛「しかしどうされたんですか、おば様。どうしてこの世界に?」
真希子は高校時代の友人である宝田 守(たからだ まもる)の母親でもあるので結愛はずっと「おば様」と呼んでいた、しかしどうしてこの世界にいるのだろうか。もしかしたら守や他の同級生、教員も来ているのか?
真希子「それがこの前ね、ネスタっていう人と電話で話していたんだけど電話を切った瞬間に吐き気がしてトイレに行ってね、スッキリしたなと思ってトイレを出たら扉がこの世界に繋がってたんだよ。流石に奇妙だと思って帰ろうとしたら扉が消えててね、見渡す限りの草原と山ばっかりだし散歩だと思って歩いていたらこの子がダンラルタ王国って所の湖の辺りで声を掛けて来てね、ただその時は何言ってんのか分からなかったのに一瞬で分かる様になっててね、何がなんだか分からなくて。一先ずこの子の家でお世話になる事になっていたんだけどその代わりに家庭料理を教える事になっていたって訳。」
結愛「じゃあ今おば様の持ち物や株券は?」
真希子「ここの1408号室にあるよ、一緒に引っ越して来たんだ。神様っぽい人に言われた通りに過ごしていたら今に至るって訳。それにしてもこの世界で結愛ちゃんや日本人の方々に会うなんてね、こんなに嬉しい事は無いよ。」
どうやら今まで全く会う事が無かったので他に転生者がいる事を全然知らなかったらしい、しかし光達と同様に神様の力によって転生してきた様だ。
結愛「それにしてもどうして寿司職人の方に料理を教える事になったんですか?確かにおば様が料理上手なのは存じておりますが。」
真希子「実はこの子ね、あたしがお世話になり始めた頃は毎日カップ麺ばっかり食べていたんだよ、聞いたら生まれてから料理は全くした事無いって言うじゃないか。だから暫くの間私がご飯を作ってあげていたら興味が湧いたみたいでね、それで家庭料理で良ければって教えていた訳。それから寿司屋で修業して今に至るって事さ。」
ピューア「本当、師匠には感謝しています。」
真希子「師匠だなんて大袈裟だよ、長い間居候させて貰っていた訳なんだから感謝しているのは私の方さ。それにしても守達はどうしているのか分からなくてね、何処を探しても知り合いに会わなかったから結愛ちゃんの顔を見て安心したよ。」
長々と語った真希子は少し離れた所にあるテーブルを囲む転生者達に目線をやった、貝塚財閥の社長に対して馴れ馴れしく話している様に捉えられているのか、顔をしかめる者が1人。
しかし、顔をしかめているのは別の理由だった。
渚「何処かで見た事があると思ったら、あんたやっぱり・・・。三ツ矢(みつや)真希子じゃないか?私だよ、赤江 渚!!中学校の時一緒のクラスだっただろ?」
真希子「渚!!会えて嬉しいよ、元気にしてたかい?さっき見た事のあるエボⅢを見かけたんだけどやっぱりあんただったんだね!!」
光「お母さん、この人は?」
渚「あらやだね、この子は。忘れたのかい?ほら下にスルサーティーが止まっていただろ、あの「紫武者(パープルナイト)」の真希子さんだよ!!」
日本にいた当時、赤いエボⅢが故に「赤鬼」と呼ばれていた渚に対して、真希子は「紫武者」と呼ばれ恐れられていた走り屋だったらしい。光も交えてスルサーティーで一緒に峠を攻めていたそうだ。
真希子「あんた光ちゃんかい、あの頃を思い出すよ。懐かしいね。」
光「ごめんなさい、思い出せなくて。お久しぶりです。でもどうして結愛さんと仲が良いんですか?」
真希子「そりゃあたしが貝塚財閥の筆頭株主だからだよ。」
真希子のその言葉に思わずグラスや盃を落としてしまう親子2人。ただその横でピューアは冷静になっていたらしくそんなに金があるならマンションに入居せず一軒家を買うべきでは無いのだろうかと伝えてみた。
真希子「日本にいた頃と変わらず質素な生活をしようと思って敢えてそうしたのさ、筆頭株主だからって目立つ様な事はしたくなくてね。」
光「そう言えば下の車・・・。」
真希子「あれはピューアが乗りたい乗りたいってうるさかったからあげたんだよ、今のあたしは・・・、よいしょっと・・・。」
真希子は『アイテムボックス』から愛車のフロント部分を出して見せた。それを見て親子は呆然としていた。
-㉘ 真希子の仕事-
真希子の『アイテムボックス』から出てきたのはロータリーエンジンを積載している事で有名なあのスポーツカーだった、日本の某チューンアップ会社のデザインがある雑誌観衆のゲームのジャケット画像にも採用されていた車種・・・、だった様な・・・。
渚「これ、MDじゃないか・・・。紫なんて何処にあったんだい。」
光「やっぱり?LX-7だよね・・・(うん、権利的な・・・、もういいや)。」
ズシンと大きな音を立てて車が出現したので床が壊れたのではないかと心配していたが、渚が頑丈に作っていたので大丈夫だったみたいだ。
渚「後で皆の車を並べて写真を撮りなおさないかい、勿論真希子が良いならの話だけどね。」
真希子「私は構わないけど、一先ず私も何か呑んで良いかい?美味そうな料理が目の前にあるのにお預け感がありすぎてもう我慢出来ないよ!!」
渚から缶ビールを受け取った真希子が渚の隣に座ると、全員改まった様に酒を注ぎなおして乾杯し直した。
受け取った缶ビールを一気に煽った真希子は何かから解放された様に恍惚に満ちた表情をしていた。
渚「あんた、こっちの世界では何をしているんだい?あたしゃ拉麵屋なんだが。」
真希子「家庭料理の専門店を出そうと思ったんだが良い場所が見つからなくてね、商人兼商業者ギルドには登録して屋台で営業していたんだけど、そろそろ腰を据えて店を出そうと思ってこの国に引っ越して来たって訳。」
真希子の話を聞いた光はとある場所に電話をした、話は難航していたみたいだが電話の相手を光自ら『瞬間移動』で連れて来る事で一先ず電話は終わった。
光「真希子さん、少々お待ち頂けますか?」
真希子「何だい、かしこまって。今まで通り「おばちゃん」って呼んでおくれよ。」
渚「そうだよ、昔は「おばちゃん、おばちゃん」って懐いていたじゃないか。」
光は真希子との再会が久々過ぎて日本にいた頃を正直思い出せないままでいるが、電話の相手を待たせる訳には行かないと思い、『瞬間移動』で急いで向かった。相手と再会するとまた『瞬間移動』で戻って来た。
光が連れて来た人物を見て渚はぽかんとしている、一体どういうつもりなのだろうか。
渚「ナルリスじゃないか、どういう風の吹き回しだい?」
ナルリス「お義母さん、どうも。そんでこちらの方が話にでた真希子さんかい?」
真希子「光ちゃん、誰なんだい?」
光「真希・・・、おばちゃん。私の・・・、旦那の・・・、ナルリス。」
渚「こう見えてヴァンパイアだよ。」
光「今それ関係ある?」
一先ず話の流れを戻そうとするナルリス。
ナルリス「実は先程妻と相談したのですが、真希子さんの家庭料理を私の経営する店で出させて頂けないかと思いまして。光の家庭菜園で採れたばかりの新鮮な野菜で料理を出すお店です、勿論副店長としてのポストもご用意させていただきます。いかがでしょうか?」
腕を組んで考え込む真希子、正直悪くない話だと思われるのだが。
真希子「お店って・・・、何を出すお店なんですか?」
ナルリス「そうですね、言葉で説明するよりお召し上がり頂いた方が宜しいかと。」
光「それいいね。好美ちゃん、良いかな?」
好美「勿論です、確か旦那さんのお店って美味しいって有名なんですよね。お金払わなきゃいけない位ですよ。」
ナルリス「いえいえ、場所をお借りするのでお金は頂けませんよ。」
吸血鬼はそう言うとエレベーターで下に降りて料理の準備を始めた、好美が食材は大丈夫かと聞くと家庭菜園の野菜を『アイテムボックス』に入れて来たと答えていた。
数分後、出来立ての料理を持ったナルリスがエレベーターで上がって来た。両手で鍋を運んできている。
ナルリス「煮込みハンバーグにしてみました、光の家庭菜園で採れたトマトのソースで作っています。中の人参とじゃが芋もそこで採れた物です、どうぞお召し上がり下さい。」
真希子は手渡された皿を受け取ると、ハンバーグを箸で切り一口。
真希子「じんわりと来る優しい味ですね、店長。私を貴方のお店で働かせて下さい!!」
-㉙ 初対面-
新たに真希子を副店長として雇う事になったナルリスは、貝塚財閥の筆頭株主を歓迎して自らシャンパンを注いだ。偶然なのだが、この日お店を昼までの営業にしていたので仕事は終わっている状態だったから・・・。
ナルリス「私もご一緒させて頂けませんか、副店長。」
真希子「真希子って呼んで下さい。」
真希子は何故かまんざらでもない表情をしている、かなり顔を赤くしていると思ったら知らぬ間にメイクを直していたのだ。
結愛「おば様、貴女人妻なんですから!!」
真希子「何言ってんのかねこの子は、私はいつも通りにしているんだよ。」
その掛け合いを聞いたナルリスが2人は親戚同士なのかと渚に聞くと・・・。
渚「お決まりの件なのかね・・・、真希子は私の古い友人で貝塚財閥の・・・うぶっ!!」
真希子「私はただのおばちゃんですよ、店長。」
どうして真希子が渚の言葉を遮ったのか分からなかったが、鼻まで押さえてしまっている真希子の力が強すぎて渚は窒息寸前だ。
渚が苦しそうな表情で腕を何回もタップしたので真希子は思わず手を離した。
渚「ぷはっ!!何するんだい、死にかけたじゃないか!!」
すると真希子は耳打ちでぼそぼそと話し始めた。
真希子「貝塚財閥の筆頭株主なんてバレたら雇って貰えないかもしれないじゃないか、暫くの間は秘密にしておこうと思うんだよ。」
結愛「おば様、その心配はありませんわ。」
小声で話したはずなのに何故返事が出来たのかが分からなくなっている真希子。
真希子「あんた、地獄耳なのかい?!それに何で心配する必要がないのさ?!」
すると真希子にとって聞き覚えのある女性の声が聞こえた。そう、この世界に来るきっかけとなったあの声だ。
女性「私も働いているからだよ、真希子さん。」
真希子が声の方を振り向くと青い目をした女性がこちらを向いていた。
真希子「あんたが・・・、まさか・・・。」
そう、この世界での貝塚財閥の筆頭株主であるドワーフのネスタ林田だ。電話で話した事はあるが会うのは初めてだから少し緊張した。
真希子「あ・・・、貴女がネスタさんかい?いつか会えたらって思っていたんだよ。」
ネスタ「あたしもさ、久しく連絡が出来なかったからどうした物かと心配していてね。無事みたいで良かった。」
レストランのオーナーシェフはこの光景を見て混乱している。
ナルリス「ネスタさん、どういう事ですか?それにお店は?」
ネスタ「この真希子さんはね、光ちゃんと同じ転生者なんだけどね。こっちの世界に来る前から『通信』で話していたんだよ、会えて嬉しかったさね。店はあたしらでもう閉めてあるよ。」
結愛「師匠とおば様にそんな繋がりがあったなんて・・・、そう言えば2人共うちの筆頭株主だもんね。十分あり得る話か。」
ナルリスは今の結愛の言葉を聞き逃せなかった、かなりの大物と言える投資家を2人も雇うだなんて・・・。
ナルリス「た、た、大変失礼いたしました!!」
真希子「店長、顔を上げて下さいよ。」
ネスタ「そうだよナル君、気にしないでおくれ。私らはただの店員さね。」
ナルリス「一応・・・、真希子さんは副店長です。ご本人の家庭料理をメニューに加える事になりましたので。」
ネスタは数秒程考えるとその場に倒れ込んでしまった。
-㉚ 宴会で出た結果-
すぐに起き上がったネスタの横で、冷静となっていた渚が思い出したかのように好美に質問をした。渚以外にも気になっている者がいる事だ。
渚「そう言えば好美ちゃん、あんた夜勤になったって言ってたけどいつからなんだい?」
好美「明後日の夜ですね、王宮の見回りの仕事です。」
どうやら好美の事を聞いた林田が友人のニコフに一言話しておいてくれたらしく、転生してからの生活準備にある程度の期間が必要と考慮してくれたそうだ。
夫である林田署長に番号を聞いていたネスタが好美の雇い主のニコフに電話してみた。
ネスタ「もしもし、ニコフさんかい?倉下好美ちゃんの事で確認したい事があるんだけどね、本人の夜勤は明後日の夜からで本当に大丈夫なのかい?」
ニコフ(電話)「勿論、本当の話だよ。」
ニコフは本人の結婚式以来、林田家と家族ぐるみでの付き合いをしており、ネスタとも良き友人として呑みに行く程の仲になっていた。
ネスタ「それにしてもあんた、結構心が広いんだね。」
ニコフ(電話)「可愛い女の子の為なら何でも・・・、がふっ!!」
電話の向こうから嫁のキェルダに大き目の一発を喰らわされた音がした、数年前からパン屋で接客だけではなくパンの製造も行っているので十二分に筋肉がついていた。
キェルダ(電話)「今「可愛い女の子」って聞こえたけど何の話をしているんだい?」
ニコフ(電話)「し、し、仕事の話だよ。俺を疑おうってのかい?」
ネスタ「キェルダ、本当の話だからやめておやり。」
ネスタの一言で電話の向こうで握っていたであろう拳を開いたキェルダ、ニコフ将軍長に何かしらの前科があったのだろうか。
そして最近はずっとネスタの事を「ネスタ姐さん」と呼んでいた。
キェルダ(電話)「ネスタ姐さん、甘やかさないでよ。この前この人の制服からスナックの名刺が数十枚も出て来たんだよ、前の日は男と呑むって言ってたのにだよ。」
ネスタ「うちの人や息子だってたまにする事だから気にする事ないさね、間違いを起こさない限りは大丈夫だから。私が保証するよ。」
キェルダ(電話)「ネスタ姐さんが言うなら良いけど・・・、うん・・・。」
何処か納得のいかない様子で声を小さくしながら電話を切ったキェルダ、一先ず渚達が気になっていた事は解決したので問題なしとしよう。
さて、気を取り直してといった感じでそこにいた者達は改めて料理に箸を延ばした。ネスタが電話をしていた間に唐揚げが増えている、ただ最初に揚がった物以上にサクサクしている。と言うよりまだ大量に焼いたり揚げたりした後だというのに鶏肉が残っていた事が驚きである。
ネスタ「ああ、私が持って来たんだよ。唐揚げがどうしても食べたくてね。」
ネスタが持って来た鶏肉の唐揚げに箸を延ばす好美、1口食べると先程以上にサクサクの衣と少しあっさりの鶏肉が嬉しい。
ピューア「持って来て下さったのが鶏むね肉だったので、今回は2度揚げの唐揚げと棒棒鶏(バンバンジー)にしてみました。」
棒棒鶏に使った胡瓜やトマトの水分が口の中をサッパリとさせる、そしてリセットした口で焼き肉に・・・、そしてビール・・・。
好美「最高の無限ループ、しかも牛肩ロースだから甘い脂が嬉しいよ。」
渚「あんた良い顔してるね、料理を作ってくれてるピューアちゃんも嬉しそうだよ。」
ピューア「作り甲斐がありますよ、これから夜勤同士だからいつでも昼吞みが出来ますね。」
暫くの間3人で呑んでいた結愛と真希子、そしてネスタはこれからの経営戦略について話し合っていたらしいが、かなり酒が入っているので記憶に残っているかどうかが正直怪しい。
美味い物と美味い酒を堪能していると時間はあっという間に過ぎていった、ただ宴会はずっと続いていた。
料理に疲れたのか、ピューアは皆とテーブルを囲んでビールをずっと吞んでいた。ただその時人魚には気になる事があったので好美に質問をぶつけた、この宴会の本来の目的。
ピューア「いかがですか?料理はお口に合いましたかね?」
好美「文句なし、合格です!!」
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