4. 異世界ほのぼの日記2 ㉑~㉕


-㉑ 好美の心配事とピューアの趣味-


 好美がまだ日本にいた頃の事だった。副工場長の島木に夜勤を命じられ数日が経過したその日、そう夜勤初日。当時夕飯として出ていたカレーを母親に勧められるがままに食してから夜勤へと向かったのだが、「どうして自分が夜勤になってしまったのだろう」と不安と極度の緊張から仕事前からずっと嘔吐下痢が止まらなかったという事があった。

 その事がトラウマとなりカレーを食べる度に症状が出てしまうので、それ以来カレーを食べる事ができなくなってしまったのだ。

 最近は体が慣れて来たからか少しずつだが平気になってきている、しかしこれから一緒に働く仲間が振舞ってくれた折角の料理を吐き出すなんて正直したくないので、好美は保険をかけておく事にした。

 その保険とは他の転生者の様に「スキルを『作成』する事」だ、ただ好美は自身のオリジナルで『作成』するのが初めてで不安になっていた。


好美「上手く『作成』出来るかな・・・。」


 この様に不安になった場合は特になのだが、好美には色々と深く考え込んでしまう癖があった。

 今までの転生者が『作成』してきたスキルが色々と便利なのでどうしても自分にも出来るのだろうかと思ってしまう。

 最初は『状態異常無効』を思いついた、ただ折角呑んだのにアルコールが無効化され酔えなくなってしまいそうでやめた。

 次に『強化』はどうだろうかと感じた、しかしこれも同様の理由で却下。しかも呑んでいない内に缶や容器を手で壊してしまいそうで正直怖い。

 では『臓器強化』にしようかと思った、これなら体内の臓器のみが強化されるので周りに迷惑が掛かる事は無い上に強くなった分沢山楽しめるようになる、まさに一石二鳥だ。

 なので初めての『作成』は『臓器強化』にした、そんな事を考えている内にビルの前に到着した。生鮮食品も加工食品も『転送』と『アイテムボックス』を利用して移動させたので全員手ぶらで到着した。

 好美は面接に来る人々や店の準備作業を行う人々の為にビルの裏に数台分の駐車場を用意していた。いずれはこの駐車場を拡大して月極駐車場として住人限定で貸し出し、駐車出来るようにする予定だった。その駐車場にはシューゴの渚の屋台のみが止まっていたはずなのだが、偶々横切った今見たことない車が一台。


好美「あれ?あんな車ありましたっけ?」


 派手な紫色のボディーが日光を反射してとても眩しく光っているその車は、ある事故をきっかけに造られたというあの車種だ。そう、釜めし屋の前の写真が有名なあの・・・。

 昔「赤鬼」と呼ばれた走り屋としてのあの時の血が騒いだのか、渚は興奮し目を輝かせていた。


渚「スルサーティーじゃないか、まさかこの世界で拝めるとはね。(※ふぅ・・・、権利的にはセーフかな・・・。)」

ピューア「すみません、私のです。まだ駐車しちゃ駄目だったんですね。」

好美「いや大丈夫ですよ、だって今日拉麵屋の面接に来ていたじゃないですか。後からでも良いので住人として使用する為、申請書出しておいてくださいね。」

ピューア「心の広い方で良かったです、実は私『アイテムボックス』持って無くて。」


 その言葉を聞いた渚が再び興奮しながらピューアに申し出た、何気に呼吸が物凄く荒い。

 そしてピューアの事を不自然に「さん」付けで呼んでいる。


渚「ピュー・・・、ア・・・、さん・・・。」

光「母さん、スルサーティーが好きだからって興奮するのは分かるけど呼吸を整えてから言ったら?」

渚「そうだね・・・、ピューアさん。私が『アイテムボックス』を『付与』するから良かったら私の愛車を横に並べて1枚撮っていいかね。」

ピューア「良いですけど、何乗っているんですか?」

渚「これこれ。」


 渚は愛車のランナーエボリューションⅢを『転送』させ横に並べた(※今更だけどこれもセーフだよな)。

 渚の愛車を見た瞬間、ピューアも興奮していた。


渚「じゃあ約束の・・・。」


 渚がピューアに『アイテムボックス』を『付与』するとスマホで2台の写メを撮り始めた、すると・・・。


ピューア「私も撮りたいです・・・、ダメですか?」

渚「勿論良いよ、後で一緒に撮ろうか。こりゃイイネいっぱい貰えるね。」

好美「今更だけど、人魚(ニクシー)も車乗るんだ・・・。」


-㉒ 写真撮影と調理開始-


 2人が各々の車を並べ楽しそうに写真撮影している光景を羨ましそうに眺めていた光を見かけて渚が声を掛けた。


渚「何やってんだい、あんたも早く出しなね。」

光「いやあたしのは良いよ、軽だもん。」

渚「何言ってんのさ、軽でもあれは立派なスポーツカーじゃないか。」

光「じゃあ・・・、良いかな。」


 促されるがままに『転送』で愛車のカフェラッテを並べた。

 3人はスマホを構え太陽の光で輝く愛車達を連写していた。その光景を無免許の好美が1人ずっと指をくわえる様に眺めていた。


好美「いいなぁ・・・、楽しそうに・・・。車か・・・。」

渚「何言ってんの、好美ちゃんも早く入りな。」


 渚はそう言うと好美を手招きし、4人で記念写真を撮ろうと提案した。即席でスマホ用の三脚を『作成』して設置するとセルフタイマーにして撮影を始めた。

 念の為、撮影した写真を確認する。


渚「あれ?真っ暗だよ、やらかしたねぇ。」

光「母さん、インカメラになって無いじゃん。」

渚「あれらま、これは失礼。」


 気を取り直してインカメラのセルフタイマーで撮影、楽しくなって来た4人は車もほったらかしてずっと撮っていた。いつの間にか三脚も自撮り棒に変わっている。


光「後半・・・、車関係なくなっちゃったね・・・。」

渚「いいじゃないか、思い出作りさね。」

好美「楽しかったな・・・、車か・・・。」


 好美が免許取得を少しだけ検討し始めた頃、光はピューアのスルサーティーを眺めながら、そしてピューアは光のカフェラッテと渚のエボⅢを眺めながら何かを思い出していた。

 光が渚に近付き、耳打ちで声を掛けると母は首を縦に振り娘の発言を肯定していた。その一方でピューアは思い出しきれないでいるらしい、一先ず4人は好美の15階へと向かう事にした。

 各々の愛車を『アイテムボックス』と『転送』でその場から消すと、ビル1階のコンビニと拉麵屋の間を抜けてエレベーターへと向かった。

 好美はエレベーターの指紋認証装置に親指を押し付け、行先ボタンで暗証番号を入力した。


電子音「認証しました、15階へと参ります。」

ピューア「初めて聞きました・・・。」

渚「そりゃ、本来大家の好美ちゃん以外は15階に行けないからね。」

光「そんな事言って『瞬間移動』で行ってるくせに。」

渚「ありゃ、バレてたかい。」


 何気ない会話を交わしている間に好美の自宅(15階)に到着、エレベーターが開いた瞬間、好美の好みで造られた開放的な空間が広がった。


ピューア「凄すぎる・・・、私このマンションに住んで良いんですかね?」

好美「勿論、契約していますから。さて、こちらがキッチンです。良かったら私達にも手伝わせて下さい。」


 キッチンへと移動すると、冷蔵庫から今朝捕れたばかりの魚介類の入った発泡スチロールを取り出し、そこから新鮮な鰹を取り出した。一般的な物は頭から尾に向けて体表に線が入っているが、この鰹は垂直に数本入っていて新鮮さを表している。


渚「綺麗な鰹じゃないか、これでどうするんだい?」

ピューア「少し準備に時間がかかるので先にたたきの準備をしようかと・・・。」


 そう言うとその鰹を手早く3枚に卸し、半身の片方を皮を付けたまままた半分にした。もう片方は中骨辺りに包丁を入れ、そぎ取る様に皮から身を剥がす。

 ピューアに頼まれた渚は皮を付けたままにしている方の半身の表面に塩をたっぷりと付けて冷蔵庫へと入れ、その傍らで光が冷え冷えの氷水を用意した。キンキンを保つため氷水にも食塩を少量加えている。

 その横で皮を剥いだ方の半身をピューアが刺身にしていった、その横でピューアの指示通り好美が味付けとして醤油にマヨネーズと辣油を加えて混ぜる。


ピューア「鰹にはマヨネーズが合うので良かったらこれでお召し上がり下さい。」


-㉓ 準備完了-


 渚が冷蔵庫に鰹を入れてから約10分が経過し、メインイベントのタイミングとなった。チラッと端っこの方をよく見たらガラス製の器を冷蔵庫でキンキンの冷え冷えになるまで冷やしている。


渚「今から表面を焼くんだろ、藁なんかないけどどうするんだい?」

ピューア「今回は屋内でも簡単に出来る方法で焼きたいと思います。」


 金属製のバットを裏返し表面に塩を振ると、そこに鰹の身を置いて皮の付いた面から焼いていく。表面を程よく焦げ付かせると別の面に返してまた焼き、全体の表面を焦がしたら用意しておいた氷水に入れて一気に冷やす。

 冷えた身を刺身の様に切ると中の身は良い具合のレアになっていた、それを先程から冷やしておいたガラス製の器に盛り付けまた冷蔵庫で冷やす。

 一方で、折角の晴れの日なので太陽の下で楽しもうと思った好美が屋上にある露天風呂横のテラスでバーベキューコンロの準備を始めていた。

本当は日本では無いかと思いながら、ゲオルの店で追加で入手した備長炭へゆっくりと時間をかけて火を付けていた。日本にいた頃、女子1人でソロキャンプをしていた好美は『転送』で日本から持って来たファイヤースターターを使って点火していた。

懐かしさを感じながらゆらゆらと揺れる炎を眺めて焼肉の準備を進める。美味そうな牛肉を1kgも買っていたのだから嫌でも準備にやる気が出る。

火が落ち着いて来たのでそろそろかなと渚と光に念話を飛ばしてみた。


好美(念話)「好美です、中の方はどうですか?」

渚(念話)「今ね、ボヤになりかけてるね。」

光(念話)「母さん、何馬鹿な冗談言ってんの。ごめんね、バーナーで鰹のたたきを焼いてたの。もう焼きは終わったし、換気扇は使っているから安心してね。」


 買ったばかりのビルの屋上で一瞬物凄く焦りかけた好美は、大事にならなくて良かったと胸を撫でおろした。


光(念話)「これからね、鯛を刺身とカルパッチョにしていくよ。」


 ピューアが鯛を3枚に卸し皮を引くと両方の半身を刺身用の短冊へと作り替えていった。半分は渚がそのまま刺身にしていく。もう一方で光が今朝採ったレタスやパプリカで彩った皿の上に小さく切った鯛の身を並べ、オリーブオイルとバジルソースで作った特製ドレッシングと胡麻ドレッシングの2種類を用意した。


光「味付けは各々の好みで大丈夫だよね。」

ピューア「勿論、ただすみません。鯛の身にレモン汁をかけて頂けますか?」

光「了解。」


 指示の通り今朝採れたレモンを真上で搾って回しかける、その横でピューアが今度はハマチを卸していった。


ピューア「片方は刺身に、そしてもう片方は切り身にして上で肉と一緒に焼いちゃいましょう。照り焼きなんていかがでしょうか。」

渚「良いね、見てるだけで日本酒が進むね。」


 今の言葉は聞き捨てならない、光は渚の方を向きじっと表情と両手を確かめた。その結果、渚は素面(しらふ)で手ぶらだった。


光「母さん、まだ乾杯してないじゃん。」

渚「冗談、まだ呑んでないよ。早く盛り付けて上に行こう。」


 出来立ての刺身やたたき、そしてカルパッチョを持って渚と光がテラスへのエレベーターに乗って上がった。屋上では好美が火を落ち着かせて待っていた。

 キッチンでは購入した鶏もも肉の切り身の半分を塩と醤油味の唐揚げにしていく、昼呑みはもうすぐだ。


渚「さっきはごめんね、お待たせしました。」

好美「凄いですね・・・、何か申し訳ない気がしてきました。」


 キッチンを片付けて、盛り付けたばかりである焼く用の肉と唐揚げを持った光と一緒にピューアがエレベーターで上がって来た、階段を上がった先には13階に住む人魚にとって初めての光景が広がっている。


ピューア「お待たせしまし・・・、凄い・・・。このビルにこんな所があるんですね。」

渚「普段ここは好美ちゃんのプライベートスペースだからね、ほらあそこ見てみ。」


 元寿司職人は大家専用の露天風呂を見て開いた口が塞がらなくなっていた。


-㉔ お待たせしました-


 屋上からの絶景などに感動し、数分の間呆然としていたピューアがやっと落ち着きを取り戻した頃、好美の用意したグリルで美味そうに肉が焼けようとしていた。

 日本からの転生者3人が既に肉や料理を囲み着席している。まずいと思った人魚(ニクシー)は急いで席へと着いた。


ピューア「すみません、お待たせしちゃって。」

好美「大丈夫ですよ、さあさあ呑みましょう!!」


 ピューア以外の3人は『転送』で冷蔵庫から直接酒を取り出していたが、『転送』が出来ない元寿司職人が急いで冷蔵庫へと向かおうとしたので光が引き止めた。


光「ごめんごめん、良かったらこれ使って。」


 光が『転送』を『付与』した事により、同様に冷蔵庫からすぐ酒を取り出せる様になった人魚は早速缶ビールを取り出した。


渚「全員酒が行き渡った所で。」

4人「昼からすみません、頂きます!!乾杯!!」


 待ちに待った瞬間(とき)を迎え、そこにいた全員が欲しくて堪らなくなっていた酒を一気に煽っていく。幸せと共に酒が五臓六腑に染み渡った頃に、食べごろに焼けてきた霜降りカルビ肉に全員が箸を伸ばして1口。熱々の肉がまたビールを誘う、この幸せのスパイラルがまた最高なのだ。

 その横では鶏もも肉やハマチの照り焼きが焼けてきた、因みに鶏もも肉には塩胡椒が振ってある。

 同じ鶏もも肉で作った2種類の鶏の唐揚げも好評で、特に好美が感動していた。


好美「うーん・・・、こんなに外カリカリで中ふんわりジューシーな唐揚げ初めて。ビール進む!!」

ピューア「2度揚げしてみました、お口に合って嬉しいです。」


 すると渚が気になる一言を発した。

 こんなに美味い料理があるのだ、「あれ」も是非欲しくなる。渚は辺りを見回してからだった。


渚「酒だけじゃなくて米も欲しくなってきちゃったかもね。」

光「分かるぅ、でも食べちゃったら折角の酒が呑めなくなっちゃうよ。」

渚「何言ってんのさ、あんたの大食いはあたい譲りだろ。」


 そう、光が結婚前のナルリスやパン屋の従業員達を驚愕させた大食いは母親譲りで、この世界に来てから年月が経ったがまだまだ2人共現役だ。やはり転生者が歳を取らない事がその理由なのだろうか。


好美「ごめんなさい、今日炊いてないんです。」

ピューア「好美さん、いやオーナー。私に任せて下さい。」


 その言葉待ってましたと言わんばかりにピューアが『転送』で自宅の炊飯器を取り出して近くのコンセントに接続し、保温モードに設定して蓋を開けると中から銀シャリの香りが漂って来た。


ピューア「実は家で用意してたんです。」


 出された米を1口、すると柔らかくも少し歯ごたえのある米から仄かにだが優しい味がしてきた。


渚「あれ、噛む度にふんわりと何かの風味がするから米だけでも食が進むね。良い具合に歯応えがあってそれもあたしゃ好きだよ。肉にも合うから最高だね。」

ピューア「水の量を目盛より少し少な目にして氷を2~3個入れているんです、炊飯器に入れた時に水に和風だしを加えました。」


 いつの間にか米と日本酒をダブルで楽しんでいる渚は、皆が知らぬ間にグリルの端で焼いていた魚の干物の身を1人ほぐして食べていた。


渚「いや、やっぱり米と酒にはホッケだよね。」

光「えっ、お母さんいつの間に?」


すると4人に念話で女性の声が飛んで来た、どうやら少しほろ酔いモードらしい。


女性(念話)「どうしてお・・・、私を誘ってくれないんですか?」


-㉕ またもや社長登場-


 『念話』を使用出来て自分の事を「俺」と呼ぶ女性は自分達の知り合いの中では1人しか思い浮かばないので、光は迷う事無くその人を誘う事にした。


光(念話)「結愛さん・・・、来ます?場所は分かりますか?」

結愛(念話)「えっとね・・・、何とかします。」

光(念話)「「何とか」って・・・、なるもんなんですか?」

結愛「なりました。」


 突如その場に出現した結愛に人魚は驚愕しすぎて気絶しかけていた、いきなりやって来たこの人は誰なんだろうと深く考え込みすぎてしまいそうだ。

ピューアが「3人は冷静になっているので多分知り合いなんだろうな、それにしても服装が高そうな物に見えるな」と考えていた時だ。


渚「ああ、ピューアちゃんは初めてだったね。この人は貝塚結愛さん、バルファイ王国にある魔学校の理事長で貝塚財閥の社長さんだよ。」

ピューア「そ・・・、そんなとんでもなく凄い人が何でここに?」

光「というか何でこの場所がすぐに分かったんですか?」

好美「すみません・・・、私です。」


 先日作ったばかりの『探知』をさり気なく使用し『瞬間移動』で連れて来たのだ。


渚「そうだったのかい。それにしても社長さん、仕事中じゃなかったのかい?」

結愛「「結愛」でいいですよ、明後日まで有給休暇を取得したんです。たまには連休で休まないとね。」


 結愛は社長らしくずっとかしこまった様子だったのだが、友人になったばかりの好美を見つけた瞬間に「あの性格」に変わってしまった。


好美「それで結愛、何か呑む?」

結愛「おう、好美!!生中1丁!!」

好美「何処にビアサーバーがあんのよ、缶ビールしかないよ。」


 好美が『転送』で出したビールを渡すと、貝塚財閥の社長は勢いよく一気に煽った。美味そうに呑む姿はどう見ても大企業の社長の物ではない。

それにしても手ぶらでいきなりやって来てただ酒を呑むつもりかと好美がじっと見ていたら、それを察した結愛が『アイテムボックス』から何かを取り出し始めた。


結愛「そうだ好美、ただで呑んでばっかじゃ悪いから手土産があるんだよ。これ皆で食わねぇか?おっと何か引っかかってんな・・・、こうやってっと・・・、よし取れた取れた。いてっ!!」


 大きな肉の塊を引っ張り出した結愛は思わず尻もちをついてしまった、取り出した物は20kgはありそうな大きな塊だ。


好美「結愛、この大きな肉は何?」

結愛「お前の名前と同じ「クラ下」、肩ロースだよ。早速整形していこう。」


 まだ泥酔ではない内にとネスタから教えて貰った技術をフル活用して肉に包丁を入れていく、その姿にピューアがほれぼれしていた。


結愛「あの・・・。」

ピューア「あ、すみません。私ピューア・チェルドって言います。社長の包丁さばきが凄くて。」

結愛「「結愛」で良いですよ、私この有給休暇の間は仕事を忘れようと思っているんで。」


 その証拠に整形を終えた肉を焼き始めてから数分後・・・。


結愛「アッハッハッハ・・・!!お前人魚(ニクシー)なのかよ!!足あんじゃん、全然人間じゃん!!」

ピューア「私だって苦労してんの、これだって結構魔力使うんだって!!」

光「仲良くなるまで早すぎ・・・。」

結愛「光さんも呑みましょうよ、こっちこっち!!」


 いつの間にか焼酎にシフトしていた結愛は、ロック片手に他のメンバーに絡み酒を始めた。しかし皆呑んでいるから気にしていない。どちらかと言えばかかって来いと言ったところか。

 その結愛を横目に焼けたばかりの肩ロースとホッケ、そして知らぬ間にまた手に入れていた銀鱈の西京焼きを肴に渚が呑んでいる。

 そんな中、ピューアと好美はエレベーターで一旦下に降りていた。

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