2. 最強になるために ㉛後日談


-㉛ 後日談・異世界へ-


 株主総会がおわり、義弘が逮捕されてから数年、貝塚財閥は本格的に社長となった結愛の理念の下で教育支援を中心としたに力を入れて信頼を取り戻していった。

 今となっては貝塚学園は雰囲気が明るく、部活動等が充実した有名進学校としてゆうめいとなり当時の面影を全く残していない。

 副社長となった結愛の夫・光明が結愛にオリジナルの珈琲を淹れて渡した。


光明「ここも大分変ったよな、理想の学校として全国から憧れられる存在になっているから、お前もあれからもの凄い努力をしたんじゃないのか?」

結愛「何言ってんだよ、俺じゃなくて周りの人たちのお陰だろうが。」


 相変わらず結愛の口調は代表取締役社長に就任しても変わらない。

 そんな中、結愛は気がかりになっている事を思い出した。


結愛「光明・・・、例の件の調査は順調に進んでいるか?」

光明「あの件か・・・、状況は全く変わってない様だよ。」


 実は後々事実を知る事になるのだが、義弘が逮捕された翌日に義弘派閥の株主・重岡が保釈金を支払いすぐに釈放されてから行方不明になっているという噂が最近になって結愛の耳に入り、同じ株主である宝田真希子や乃木幸太郎の協力を得て義弘の行方を追っていたのだ。奴の性格を考えると逃げた先で何かしらやらかしかねない、本当に信用できない男なのだ。

 そんな中、学園の生徒の1人が雑誌の切れ端を持って職員室にやって来た。まさかこの切れ端が波紋を生むことになるとは今は想像も出来ない。ただ、重要な案件に繋がりかねないと思った乃木幸太郎の娘である教員の公恵は急いで結愛のいる社長室兼理事長室へと向かった。

実は最近移動が面倒になってきたので結愛がいっその事と思い学園の理事長室を社長室も兼ねる部屋という事にしたのだ。なので普段は本社では無く学園にいる事が多い。

 因みに、義弘の時からそうだったが今でも貝塚財閥の社長がこの学園の理事長を兼ねている。


乃木「結愛さ・・・、いや理事長。こちらをご覧頂けますか?」

結愛「乃木先生、あなたは私達の恩師です。「理事長」もその他人行儀もやめて下さいと言ったはずですよ。」

乃木「そうね、ごめんなさい。この部屋に来るとどうしてもこうなっちゃうのよ。癖が抜けなくなってて。」

結愛「大丈夫ですよ、それでどうされました?」


 乃木は結愛に例の雑誌の切れ端を恐る恐る手渡した。それを見た結愛は驚きを隠せずにいた。

切れ端には‘貝塚義弘、山籠もりの小屋から突然の消失’と大きく書かれていたのだ。


結愛「先生、何処でこれを?」

乃木「今朝生徒の1人が職員室に持って来たの、ただ事じゃないと思ってすぐにここに来たって訳。」

結愛「なるほど、因みにこれは何の雑誌の切れ端なんですか?」


 乃木から雑誌名を聞いた結愛は早速その編集長に話を聞いた。


編集長「いやね、ウチの記者が逮捕されてからの義弘の記事を書こうと意気込んでいたんですが、すぐに釈放されたのを目撃しましてね。後を追ってみると人里離れた山小屋に数日籠った後、何の音沙汰も無かったのでこっそりその山小屋を覗いてみたら何の書置き等も無く消えてしまったというんです。ずっとその山小屋の前で張っていたらしいので間違いは無いかと。」


 編集長から山小屋の場所を聞いた結愛は早速その場所へと向かった。人が住んでいたとは到底思えないほどの古い廃屋。ガスや電気、そして水道も通っていない。

 その廃屋で一番広いと思われた部屋でコンビニのおにぎりの食べかす等を見つけたのでどうやら義弘がここで数日間生活をしていたのが本当らしい事が分かった。

 しかし、突然姿を消したという点が気になった。夜逃げでもしたのだろうか?

 雑誌の編集部に戻った結愛は当時山小屋の前で張っていたという記者に話を聞くことが出来た。記者が言うには山小屋には出入口が表に1つしかなく、裏口などは全く見つからなかったとの事だ。確かにそうだ、結愛も山小屋に行った時にその事を確認している。もし夜逃げしたとしたら唯一の出入口である正面の玄関で何かしらの動きがあったはずだ。ずっと張っていた記者が言うから間違いない。

 暫くして、結愛と光明は久々の休日をゆったりと過ごしていた。すると突然、幻覚にも見える竜巻が起こりその場にいた全員を巻き込んでしまった。

 それからどれ位経ったのだろうか、結愛はゆっくりと目を開けると知らない草原が広がっていた。「何処だここは」と思いながら周囲を見渡す、横には光明もいるのでどうやら周囲にいた全員が被害を受け異世界へと飛んできてしまったらしい。

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