20日目「伝えられたきっかけ」

(お、おおおお母さんっ!!!?)


 圧倒的大人の美貌を持つ、流石は美少女甘菜のお母さんと言わんばかりのオーラと突然の出来事で茉莉が驚きのあまり思考を停止させる。


「さ、咲希ぃ……これは聞いてないよ……」


 そんな茉莉に視線を向け、甘菜のお母さんはくすりと笑い出す。



「ふふっ、貴方は咲希ちゃんのお友達さん……ね。初めまして、私は甘菜ちゃんの母の飯島美玖里いいじまみくりです。これから甘菜と咲希ちゃんの事、よろしくね〜」


「は、はい……」

(ちょっ、めっちゃ美人なんですけどっ! 顔も整ってるし身体もボンキュッボンのアウトインアウトをバッチリ決めてるし! おまけに大人の女性特有の色気も出てるし……こんなの男女限らず人類皆イチコロだよぉ……)



 大人の魅力にやられかけている茉莉に、美玖里が更に追撃を与える。


「あらあら、照れちゃって可愛いのね。このままもっと照れさせちゃおうかなぁ……」

「ふぇっ……!? ちょ、おおお落ち着いてお母さん!」

「ふふっ、冗談よ。ごめんね、咲希ちゃんの反応が可愛くてついいじわるしちゃった♪ ささっ、二人とも中に入りなよっ♪」

「はい、お邪魔します……って、茉莉〜、生きてる〜?」

「死んでるぅ……」

「うん、じゃあ入ろうか」

「せめて『生きてるじゃん』とか無いわけぇ!!?」


 大人の魅力にライフを0寸前まで削られた茉莉を咲希が引っ張りながら甘菜の家へと足を踏み入れた。

 一方美玖里はそのやり取りにくすりと微笑みながら人数分のお茶を注いでいた。


「ふふっ……今回はいい環境に恵まれて良かったわね、甘菜」




 あれからしばらくして、茉莉と咲希は美玖里に今日起こった事全てを話した。甘菜が親しく接している遠野優里が学校を休んだ事、それ故に甘菜が珍しく1日中機嫌が悪かった事など……全てを美玖里に話した。


「ふむふむ……へぇ〜、今日そんな事があったのね。甘菜ったら気になってる子が休んだだけで気分悪くするなんて……可愛いのね」

「で、でも優里と一言も話さなかった日でもいつもみたいに明るかったんですよ?」

「だから彼が学校を休むってだけであそこまでご機嫌斜めになってるわけじゃないって思ってるんですけど……昔、甘菜が同じように急に機嫌悪くした事ってあったりしたんですか?」



 美玖里が真剣な表情に変えて考える。だが、すぐに表情を戻して……


「……無いわね。それ以前に昔の甘菜は今みたいに明るくなかったのよ」

「「え……?」」

「あら、聞かされてないのかしら? 甘菜が小さい頃、よくいじめられてたのよ。そこに甘菜を守ってくれたのが……その遠野優里君なのよ」

「「えぇっ!?」」

(甘菜ちゃん、いじめられてたの……!? 全く想像出来ないんですけど! てか、甘菜ちゃんと優里って昔からの知り合いだったのかい!! いじめから助けてくれたなんて……そりゃ好きになるわけだわ!!)


 美玖里から伝えられた真実に、茉莉と咲希は驚きながらも、同時に納得していた。甘菜の――優里に対する恋心を。




「……その後にね、優里君が事故に遭って――」


 

 そして、美玖里が二人にあの出来事を伝えられたのはまたその後のお話。

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