5日目「新しい一日(優里ルート)」
また新しい一日が始まった。何も知らない場所で、誰が誰だか分からない状態で始まる。たとえそこで名前を覚えたところで1時間経てばすぐに忘れる。こればかりはどうしようもない。
だから僕は本を読む。本は一時的にも僕をその世界へと
「おはよ、優くんっ」
しかし、ただ一人の少女によって僕の脳はすぐに現実へと引きずられる。
「……うん」
「もぅ、相変わらず冷たいんだから……」
だがこれはこれで良いだろう。僕にとって人から話しかけられるなんていう経験は滅多にないから良い機会だ。
「ねぇ、今日の授業何か分かる?」
「……時間割配られたでしょ」
でも、彼女は積極的に僕に話しかけてくる。何なんだろう。怖い。恐ろしい。身体が少し震えるのを感じる。
「ごめ〜ん! 国語の教科書忘れちゃった〜! 優くんお願い! 見せて!!」
「……今日だけ」
……それでも彼女は僕に絡んでくる。まるで上書き保存でもするかのように頻繁に話しかけてくる。僕なんかといて暇じゃないだろうか。楽しいのだろうか。僕には分からない。
「ねぇ優くん、一緒にお昼食べようよ!」
「……何で僕と?」
「そんなの優くんと食べたいからに決まってるじゃん! ほら、行くよ!!」
「え、あ、ちょっ……」
彼女は笑顔だ。特に僕と一緒にいる時は。楽しそうだった。でも何で僕といて楽しいんだろう……?
――夜になった。16時くらいだろうか。かれこれ学校に来てから家に帰るまでずっと彼女と共に時間を過ごしていた。……って、あれ? 何でだ……?
「1時間以上経ってるのに、何であの人と過ごした事を覚えてるんだろう……?」
彼女の積極的な行動といい僕のこの記憶といい……本当によく分からない。
分からないまま、僕は家のドアを開けた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます