4日目「真実と決意」
「ううっ……ぐすっ」
まただ。また嫌われた。一体優くんに何があったんだろう。もしかして、過去にいじめに遭ってたとかそういうのかな……
「私……分からないよぉ……何で優くんがここまで私を嫌うのか分かんないよおお!!」
まだ誰もいない教室でただ一人で泣く。これからへの希望が見えない。唯一あるとすれば……
「あ、また泣いてたなー甘菜!」
「甘菜ちゃんおはよ〜!」
「ぐすっ……おはよっ」
中学からの親友の
「ま〜た振られたのか〜?」
「優里くん、全然誰とも話さないもんね〜。男女問わず」
「……うん、だから何があったのかなって」
小学生の頃にいじめから助けてもらって、そこから仲良くなったのに……喧嘩なんて一度たりともしなかったのに……急に冷たくなって、私を突き離して……
「でも、優里くんってあれなんでしょ? 事故で記憶障害持っちゃったんでしょ?」
「え……??」
事故……? 記憶障害……? どういう事なんだろう。そもそも本当なのだろうか。私をからかって言っているだけなのだろうか。
「今までうちらも優里と同じ学校で過ごしてきたけど、結構友達と話してたよな?」
「うん……派手すぎず、地味すぎずって感じで密かに人気だったよね」
「も、もしかして……」
その事故で記憶障害を持っちゃった今の優くんは、その思い出も全部忘れちゃったってこと……?
ということは……
「……いじめから私を助けたことも、仲良くしてた時の思い出も全部忘れてたんだ……」
そう考えるといきなりグイグイ来る私に変な印象つけられるのも当たり前だよね。なんだ……結局私のせいじゃん。
涙が再び溢れてくる。もうあの頃の優くんがいないって思うとあらゆる感情が込み上げてくる。
「何で……何で気づかなかったんだろ……最初から知っていれば、フォローくらいはできたのに……!!」
「あ〜、甘菜泣いちゃった」
「落ち着けよ、まだ完全に記憶を失くしたとは言ってないから」
「でも……でもぉぉっ!!」
私がわんわんと机に突っ伏して泣いてる中、続々と生徒が入っていく。そろそろ泣くのをやめよう……って思っても、優くんの事を考えたらまだ涙が止まる気配がしない。
「甘菜ちゃん、もう授業始まっちゃうよ?」
「分かってるよ……でも今はもうちょっとこういさせて……!」
――決めた。私、優くんの記憶を取り戻す。思いっきりアピールして、リードして、触れ合って……少なくとも私が優くんの事が好きだって事を思い出させるんだ。そして優くんのほうからも、こんな私を好きにさせるんだ。
だから私はいつも通り優くんに接するよ。こんな突き離された程度の事で絶縁だなんて絶対嫌だ!
そう心に決め、涙を拭きながら私は顔をあげる。授業はとっくに始まっていた。隣を見ると少しうとうとしてる優里の姿があった。がら空きの左耳に口を近づけて……
「――覚悟しててね、優くんっ」
「…………」
少し身体をビクリとさせながらも優くんも突っ伏して眠ってしまった。そんな優くんに私はふふっと笑いながら優くんの寝顔をじっと見つめた。
――優くんの記憶を取り戻すためのアピール攻めはもう始まっているのだ。
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