2日目「最悪な出だし」

 何で昨日、優くんはあんな事言ったんだろう。私、何か悪いことしたのかな?


「はぁ……」

「お姉ちゃん、最近ため息ばっか」


 妹の凜音りおんが心配してくれている。でも、それだけだ。心配だけされても私の心の傷は治せない。


「もしかして、振られちゃったとか?」

「もううるさいなぁ! そんなんじゃないからあ!!」

「へへっ、じゃあ先に行ってくるね〜」


 さっき焼いたばかりのパンをまだ一口も食べてないまま、凜音は学校へ行ってしまった。普段は私の方が速いのに。


「はぁ……」


 悲しい。寂しい。辛い。そんな思いが再び涙となってテーブルにポタポタと落ちる。


「優くん……いつから私のこと、嫌いになっちゃったの……? 教えてよ……! 何でなの……!!」

 

 また私は泣いた。家の中なのに全身が土砂降りの雨で濡れたように感じた。またあの言葉が脳内で蘇る。


「青春……最悪な出だしから始まっちゃったな……」


 神様……高校生活が青春だらけなんて、絶対嘘だよね。だって、もう私の春は終わったんだから……


 また深いため息を吐いて、私は学校へと向かった。



 同時刻 遠野家――


「あらおはよう優里。今日は早いわね」

「……うん」


 珍しく今日は早く起きれた。それと昨日は珍しく眠れなかった。


 ――もう僕に構わないで。馴れ馴れしくするのももうやめて――


「……」


 僕にはもう最近一時間前までの記憶が無い。きっとあの人はこんな僕を友達として接したいと思っているだけだろう。


 ――友達なんて、僕にはいらない。なったところでどうせ一時間すれば忘れるんだから。


「……」

「優里、今日も元気無いわね」

「……いつもと変わらないよ」

「ふ〜ん……それなら良いんだけど」


 そう言ってお母さんは仕事に出た。一人になった。学校行くまでのこの時間が至福でたまらない。


「……そう言えば明日からアニメ始まるんだよな、『幽閉魔女のほのぼの生活旅』」


 テレビをつけ、番組表を開き、そのアニメの録画予約をして僕は学校へと向かった。

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