第50話 悪役令嬢とお目付役の悪魔は安全地帯と思ったグランドゼロに足を踏み入れるお話。

 どうやらエルシファーちゃん達は学園中等部、高等部にやってくるという逆賊に対して準備をしているらしいんだけど、それを知らされていない初等部の私達は昨今魔物が闊歩しているというデマなんだけど、実家への帰還。それができない生徒達は学園が用意した寄宿舎に集団移動。

 私は実家に帰るという事を選んだんだけど……

 

(レミレラ様、そのご判断は賢明です。あの中等部や高等部には残念ですが私では太刀打ちできないような連中がうじゃうじゃいらっしゃいます。とにかく離れましょう)

 

 気位の高いリリムがそこまで言うのであれば、なりふり構っていられないような連中がいるという事ね。でも、ここから離れても魔法騎士というリリムの天敵もいると思うんだけど、それを相手にする方がマシってことかしら。

 

(御言葉ですがレミレラ様。私もこれでも中級の悪魔です後先考えなければなんとでもなります。その場合、お見苦しい姿を見せる事になると思いますが)

 

 へぇ、リリム。魔法騎士には足元にも及ばないって言ってたのに、そこまで言う程なのね。エルシファーちゃん達が対抗する逆賊……ちょっと興味深いじゃない。じゃあリリム、エルシファーちゃん達のいる所行きましょうか?

 

(えぇえええ、レミレラ様ぁ、危ないですよぅ……流石にお守りできるという範疇を超えてきます)

 

 その為のエルシファーちゃんじゃない。私の一番安全な場所は今の所エルシファーちゃんの近くよ。

 ということで馬車を一つリリム拝借してもらっていいかしら?


(レミレラ様……本当に悪どくなられてきましたねぇ。私のチャームであれば馬車の一つや二つどうとでもなりますけど……いいんですか?)

 

 やって頂戴な。リリム、目指すは中等部、高等部の魔法学園。リリムは目眩しや逃げる事だけ考えて、馬車に乗ったら出てきてもらっていいから。

 

「はぃー! じゃあ窮屈な宝石から元の姿に戻らせてもらいますわねぇ。レミレラ様、馬車の操縦をお願いいたします! 私、全力で周辺をサーチいたしますので、そこら中に我が君、エルシファー様の魔法反応を感じます。おそらく迎撃系のガチの魔法トラップでございますね。引っ掛かれば私もレミレラ様も一瞬で消し飛ぶと思っていてくださいまし」

 

 リリムは悪魔の姿を解放して私に安全なルートを教えてくれる。針に糸を通すような魔法なんだと思うんだけど、リリムと私が慎重に進んでいる最中、

 

 ドーン!

 ドカーン!

 

 と魔法トラップが次々に発動している。リリムの曰く私たちが消し飛ぶような魔法トラップの連続発動。ひょっとすると逆賊連中はみんな……

 

「レミレラ様。おそらく四人。全員生存。完全に化け物級です。このまま進まれますか? 魔法トラップ以外にも逆賊に見つかってもゲームオーバーかと」

「モダンな言葉知ってるのね。でももうここまで来たら進むまでじゃないかしら?」

 

 怖い。本当に怖いのになんだか楽しくなってきた。なんだろう。子供の頃に夜ふかしをした時のような、初めて夜の街を散歩した時のような。そんな高揚感、馬車を操る手綱さばきも少しだけ荒くなる。

 

「レミレラ様、真っ直ぐ進んでください! 先ほどの逆賊達。魔法トラップをほとんど発動させたようです。今の所他の魔法反応はありません。今のうちに学園に入ってしまうのが得策かと」

「分かったわ!」

 

 ハイヤー! と私が勢いよく馬車を走らせた学園前……誰かがいる。少年? 

 

「やばいやばいやばい! レミレラ様。あれは相当ヤバいです! 信じられませんが、エルシファー様よりも遥かにヤバい何かです。あれに見つかった時点でもうどうすることも」

「そ、そんなレベル……」

 

 私たちは馬車をゆっくりと進ませる。少年は私と怯えまくっているリリムをチラリと見ると、何事もなかったように私たちを進ませてくれた?

 そして振り向くと少年の姿はもうそこにはなかった。

 

「リリムがビビる程だから相当なんだろうけど、エルシファーちゃんよりヤバいって言うのは少し、盛ってるわよね?」

 

 エルシファーちゃんは魔王で、その魔王を越える存在なんてそうそういるわけがないのよ。リリムは中級の悪魔だからある一定以上に強い存在に怯えるんじゃないかしら。

 

「いいえ、いいえ……なんの偶然か先ほどの者が私たちを見逃してくれましたが、あんなのが攻めてくるのであれば、我が君、エルシファー様の近くが安全であるという保証は一切ございませんよレミレラ様」

「えっ……」

 

 嘘でしょ? 私たちの馬車はついに学園に到着したけど、もぬけのからみたいな学園で遠くから魔法の爆発音が聞こえる。リリムが言うように、本当に想像以上にヤバい連中が来てるんだとすれば、やっちゃったな私……

 とりあえずエルシファーちゃん探そ。

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