【1万pv感謝】パトロンは悪役令嬢。魔王という生き方に嫌気がさして、勇者にわざと討伐されてみたら片田舎の人間の子供に転生したので、平々凡々な魔法研究生活を望んだ日々の記録
第48話 なんか、聞いた事がある名前だな〜とか思ったてある時、ふとアイツじゃん! ってなるみたいな感じの話
第48話 なんか、聞いた事がある名前だな〜とか思ったてある時、ふとアイツじゃん! ってなるみたいな感じの話
余達は十分な準備をして、学園の敷地内に入るまでに何重にも魔法トラップを仕掛け、勇者達が来るというその日を待った。平穏な学園生活を脅かすような事をあの勇者が行うとは実に嘆かわしい。生徒たちには一度実家に帰るように生徒会から指示を出し、残った精鋭達だけでの共同生活はちょっとした課外授業のようで、余は楽しかった。
さすがは精鋭、それも上級生ばかり、珍しい魔法やその理論を学ぶ良い機会であった。食事にしても備蓄している材料で皆で協力して何かを作る。実に人間という者が凄いかをマジマジと知った。
そしてミカエリス……
「ミカ、好き嫌いはいけない……」
緑色の苦い野菜。
ピーマンをフォークでつついて一向に食べようとしないミカエリスに呆れた余がそう言うと……
「ピーマンだけは苦手なのよ」
むむっ! だけ? 確か、ミカエリスはトマトも苦手だったハズだ。
此奴、好き嫌い多すぎるであろう。まぁ、余はこの苦味も嫌いではないので、食べてやっても良いが……良いが……ミカエリスは余が食べてくれるんじゃないかと淡い期待をしておるので、甘やかすことはやめた。
「ミカ、ちゃんと食べる。食べるまで待ってる」
そう余が言うともう逃げられないと思ったのか、ミカエリスはピーマンを口に入れてそれを水で流した。勿体ない。野菜ひとつとっても農業をしている人が一生懸命育てた物だろうて、此奴のこのお姫様気質は少し正さねばなとこの時、余は思っていた。
「エル……ちゃんと食べたわよ」
おぉ、完食したの。どうしても余が言わないと、姫という立場から他の皆は言いにくいし、シノノメ会長だと毎回ミカエリスが大怪我しそうだし、人間の関係という物が実に面倒くさい。
「えらいえらい!」
余はミカエリスの頭を撫でてやる。これは少しばかり子供扱いしすぎたか? ゆっくりとミカエリスを見てみると満更でもないような顔をしておるのでまぁ良いか……
「エル、少しお話しない?」
席を立ったミカエリスはココアを二つ淹れて戻ってくる。余は角砂糖を二個入れてかき混ぜるとそれを一口。多分、ココアという飲み物を作った奴は天才だと思うの。こんな物があれば魔王時代は三食毎回飲んでおったわ。
「エルってチョコとかココア好きよね?」
「うん、甘くてコクがあって、好き」
「私も、でね? お話なんだけど」
「勇者のこと?」
「うん」
だろうの……余が勇者と知り合いであるという事は何処かから流れた。そしてこの世界において勇者とは本当に偉大な奴だったらしい、シノノメ会長曰く、人というよりも兵器に近い何かだったといっておるが……
「ミカ達の知っている勇者様じゃない。あれは勇者を辞めてしまった愚か者の亡霊みたいなもの」
勇者と言っても多岐にわたる事を余は知っていた。ミカエリス達からすれば勇者とは前シノノメ会長の魔王を討伐した者。しかし、世界には何らかの偉業を成し遂げた者を勇者という事はリサーチ済みだからの。
「その勇者……さまの話って聞いてもいいの?」
さてどう答えたものか、余の前の世界での終生のライバルであったと言っても絶対信じんだろーし……まぁこういうことにするか、
「昔、余の友人というか師匠的な奴がいたの。ゼラヴァサゴ」
済まぬ! ゼラヴァサゴ。幼馴染のよしみだ許せ。余の最高腹心の一人だった者を余の魔法の師匠という事にして余はそのアザゼリスと勇者は敵対していた事、されど共に鎬を削り、お互い自分の目標の為に戦っていた事。
「結果としてゼラヴァサゴは敗れた。そしてゼラヴァサゴが敗れたことで、ゼラヴァサゴを勝手に擁立していた武力組織は総崩れになった」
ゼラヴァサゴは勇者と死闘の末にぶち殺されたのだけれどな魔王軍の崩壊も早かった……まぁ、大体こんな感じであろう。
「そして、ゼラヴァサゴの魔法の指導を受けていた余を目の敵としているの」
こんな作り話をミカエリスが信じるかは知らぬが……
「なるほど、エルのあの様々な魔法はそのお師匠様がいたからなのね! 生前に一度お会いしたかったわ。とてもしっかりされた方だったのでしょうね」
「うん、しっかりしてた」
現、お前の姉貴だがの。
あぁ、今思い出すだけでも心が折れそうになるくらいしっかりしておった。食事のマナーはうるさい、各種作法はもっとうるさい。逃げろというのに、同胞がやられ、腹心である自分が逃げるわけにはいかないと、勇者に滅ぼされた。愚か者めが……
なんか、何処となく、ミカエリスに似ておるよな? 名前もなんか似てるし……まぁ気のせいであろう。
「その勇者様もまたお亡くなりになったの?」
「うん、多分……勇者はゼラヴァサゴを追って死んだ……自分で自分を殺した」
ゼラヴァサゴすまぬ! もし何処かで貴様とまた会うことがあれば、甘い菓子をたらふく食わせてやるからな……余がわざと勇者にやられた事で勇者を狂わせたか……勇者よ。今回は全力で戦おう。貴様を殺すつもりで行く。今の余は少しばかり守る物が増えすぎた。万が一余が勇者に殺されたとしても、それはそれで勇者への贖罪ともなろう。
「エル?」
「ミカ。余はシノノメ会長と共に全力で勇者を倒す。だから、ミカはミカで戦うべき相手に全力を尽くして、シノノメ会長が言った通り、一人でも欠けたら余達の負け」
そう、その中に余とシノノメ会長は入っていない事は内緒だの。
マオの力を見れば他の勇者パーティーもミカエリス達が束になってかかればなんとかなる。だけど、勇者は別格だの。シノノメ会長の六式魔法とやらと、余の暗黒魔法。二人がかりで勇者と何処までやれるか……あやつがあの時と同じ、無属性の魔法を使えるのであれば、余とシノノメ会長が得意とする、闇属性系の魔法はほとんど通じぬ。
そうなると……余も属性変更の魔法をもっと完全なものにせねばならんな。
「エル、エル! 聞いてるの?」
「何?」
想像に意識を持っていって、ミカエリスの話をほとんど聞いておらなんだ。
「超魔導士の魔法の事よ。存在しない魔法」
超魔導士……確かシノノメ会長が其奴の魔法を使っていたような気がする。確か……名前は……
「ドロテア?」
「そうよ。この世界における、異世界からの魔物の脅威に晒された時、突然現れて異世界の魔物を撃退するのに貢献したという魔導士。この世界における四大魔導士達をして足元にも及ばないと言わしめた。故に存在しない魔導士の階級。超魔導士よ」
確か強烈な炎の魔法をシノノメ会長は放っておったが……確かに魔法理論が全然違ったような気もする。
「それで? その魔法が何?」
研究対象になりえるのか? 少しばかり興味深いの。シノノメ会長と同じく特殊な魔法理論をもったものかもしれん。
「いくつかは、魔法研究者によって解読されて、理論上は使用可能な物があるの。でもドロテア様が異世界の魔物を撃退した時に使った崩壊魔法と呼ばれた存在しないいくつかの魔法は誰も再現する事ができなかったらしいわ」
勇者のユニークスキル。無属性魔法みたいなものかの?
現物を見ることができれば余や、シノノメ会長なら或いは、習得が可能かもしれんが……まさか、
「ミカ、その魔法を使うの?」
「崩壊魔法は無理かもしれないけど、ドロテアの超魔法をなんとか会得しようと思うわ」
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