第45話 悪役令嬢は自ら、新たな悪役令嬢のロードを築き始めている事に気づかず、色々真逆に進んでいく話

「レミーくん、君は本当にアンヘル家の人間なのかね? ご両親は否定しており、一人娘のレミレラ嬢だけが肯定していると聞いたが」

 

 あぁ! 屋敷で私の影武者をしているリリムの分身ね。この際、チャームとか使ってお父様とお母様も従わせてしまえば?

 

『レミレラ様、たまに悪魔みたいな事を仰いますね? それでよろしければそうさせていただきますが……』

 

 自分の保身の為にこの世界の両親まで手にかけるあたり、私、もしかして悪役令嬢の道を別ルートで進んでないかしら?

 ま、まぁとりあえずエルシファーちゃんに近づくことが私の今一番大事な優先順位なんだから、

 

「レミレラお姉さまだけが私の理解者ですから、お母様が違うのです……」

 

 お父様、ほんっとうにごめんなさい! もうこれしか方法がないのよ。魔法騎士の人たちが私の事を大人びているとか絶望しているとか勝手に言っているけど、この一言で勝手に何か結びつけたっぽいわね。

 

「レミレラ嬢は、あまり良い噂は聞かない」

 

 うっ……

 

「だが、それは幼少期の話、あまりにも下位の者に対する非道な物言いと仕打ちが未だ悪い一人歩きをしているにすぎないのかもしれないな」

 

 おや? ようやく私の善行が認められてきてないかしら? というか、私が転生する前のレミレラって……控えめにいって本当にやばい子だったのね。レミレラの幼少期の多分物心ついた頃から数えて五年間くらいかしら? ゲームのレミレラは十六歳の頃には本当にいけすかない女の子に育っているんだけど、この世界ではレミレラは十歳で大病を患い死んでしまっている。ここで悪魔に今の両親が祈ってしまうという展開は裏設定であるんだけど、その前にレミレラに私が転生したわけ、

 長い道のりだったけど、なんとか少しずつレミレラ善人ルートが作れてきたわね。

 

「そうですわ! お姉様は本当は誰よりもお優しい方なのです」

 

 極め付けのレミー、私による自作自演でトドメを刺しておこう。一人の魔法騎士の人なんか目頭を抑えて我慢しているじゃない。なんだか面白いわね。

 

『レミレラ様、流石にお性格が非常に悪いかと……』

 

 リリム、できるところでポイント稼いでおかないと私の様々な負のフラグを全部回避出来ないじゃない。魔法騎士なんて、エルシファーちゃんみたいなチート持ちを除けば最強クラスの後ろ盾なんだから、使えるものは使わなくちゃ、

 

『そのようにして、悪魔である私も使われていますからね。いやぁ、脱帽致しますレミレラ様、悪魔以上に悪魔らしい御令嬢様であらせあられます』

 

 遠回しに悪役令嬢とか言われているのかしら……あら、魔法騎士の方が私に一枚の紙を見せてくれる。白紙だけど、

 

『特殊な魔法術式のかかった暗号文ですね』

 

 という事なので、

 

「特殊な魔法術式のかかった暗号文ですね?」

 

 とリリムの言った事をそのままカンニングしてみる。するとなんという事でしょう!

 

「これは魔法学園でも高等部以上でないと知らない術式なのに、レミー。君は相当魔法について学んでいるね? お師匠様は誰か?」

 

 えっ? 宝石についていた悪魔? とか言うとアレなので、ここは適当に……

 

「レミレラお姉様ですわ! レミレラお姉さまは人から嫌われようと、世の為、人の為になるように魔法を使っているのです。私にも沢山の事を教えてくださりました!」

 

『レミレラ様、ちょっと引くくらいの嘘でございますね?』

 

 黙っててリリム。今いい感じだから! あと一押しで多分この魔法騎士の人達落ちるから! 見てて!

 

 目頭を抑えていた魔法騎士の人は私に見られないように離れて嗚咽を漏らしている。すごい感動しやすいのね。これで、私を密偵代わりに中等部、高等部の魔法学園に潜り込ませてもらえれば私はエルシファーちゃんに守ってもらえて安心安全な所から学園生活を送れるわけだから、ウィンウィンの関係でしょ?

 多分、エルシファーちゃんは魔法騎士なんて一ミリも興味ないと思うけど、

 

「よく分かった。天使の末裔であるレミレラ嬢がなぜ幼き頃、非道とも言える行いをしていたのか、末裔の血が濃く、それを子供ゆえに制御出来なかったのだろう。元来天使は人間を下にみる種族。それでか……誰も、誰も気づいてやれなかったという事か」

「……うぅううわああああ! あまりにもレミレラ嬢が可哀想で……」

 

 ついに泣いちゃったわ。私の完全な嘘なのに、でもこれが風の噂で広まってくれればワンチャンレミレラという令嬢の逆転劇に繋がるんじゃないかしら?

 このまま聖女みたいな扱いを受けて、私が元のレミレラに戻る頃には……完全に死亡フラグも破滅フラグも全て回避し、悠々自適な生活が待ってる!

 

 という風に都合よくは世の中は進まないのよね。私が努力した善人レミレラは魔法騎士の二人の中では虚構の聖人となっている事でしょう。

 そして彼らが出した結果。

 

「レミー、君はしっかり勉強をしなさい。そして私たちと会った事は忘れない」

 

 は? はぁああ!

 

「これ以上、アンヘルの者に何も背負わせてはならない!」

「……違いない」

 

 歯を光らせて、俺たちめちゃくちゃいい事言ったな? みたいな顔で去って行った。

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