第39話 仕方がないから始めた学園生活、いきなり暗殺者だとか勘弁してほしい件

 エルシファーちゃんが中等部に入学した事は本当に誤算ね……そして、私は今学生寮にやってきたわけなんだけど……

 

「貴女がレミーちゃんね、初めまして初等部三年生のミホノです」

 

 ミホノちゃん、私の先輩にあたるのね。グリフォンの末裔らしく綺麗なクリーム色のストレートヘアが愛らしいわね。


「初めまして、レミーです」

 

 寮の部屋は私のベットとミホノちゃんのベット、そして勉強机に簡単なクローゼット、なんだけど……ミホノちゃんの勉強用の本や材料だらけなのね……

 

「ごめんね散らかってて」

「いえ、気にしませんことよ」

 

 はは……エルシファーちゃんの部屋もこんな感じなのかしら、きっとミホノちゃんは勉強家なのね。私が学園に来たのはエルシファーちゃんに守ってもらうだけだから、こういう子の邪魔にならないようにだけはしないとね。

 

「レミーちゃんは貴族だっけ?」

「あぁ、えぇまぁ……編入組ですけど」

「編入で入学できるなんて凄いじゃない。私は平民出だから、是が非でも将来は魔法騎士に入りたいの、だから部屋でも研究してる事あると思うから迷惑かけるかもだけど許してね」

「それも構いませんわ。ミホノ先輩の勉強を隣で学ばせてもらいますわ」

 

 成る程、平民の出は生活費とか消耗品とかが大変なんだっけ? リリム、私のレミレラの名前でミホノちゃん宛に高等部卒業までの消耗品を贈ってあげて、

 

『レミレラ様は本当にお人好しですねぇ、かしこまりました。屋敷でレミレラ様の代わりをしている私の方で用意しておきます』

 

 まぁ、私と同じ部屋のよしみだし、悪い子じゃなさそうだし、私だって自分の命が一番だけど、一般的な常識くらいはあるんだから、お金は全てじゃないけど、やりたいことの幅には大きく関わってくるから、ちょっとしたサービスね。

 

「レミーちゃん、それにしても悪い時期に編入しちゃったわね」

 

 ん? それはどういう? 私は悪役令嬢レミレラとして不運の全てを請け負ったような存在だから、少々の事には焦られないけど、一応聞いておこうじゃない!

 

「どうしてですか? ミホノさん」

「ここだけの話よ?」

 

 子供の頃のここだけの話ってみんな知ってたりするのよね。ミホノちゃん可愛い! どれどれ、どんな話か聞いてあげようじゃない。

 

「中等部と高等部の学園、何か凄い連中に狙われているらしくて、あと少ししたら学園休校になるのよ! もちろん、私たちの初等部も免れないわ」

 

 なんですとーーーーというか、これって逆にありがたくない? だって、休校になればエルシファーちゃんも実家に戻ってくるから、一緒にいられるし、守ってもらえるじゃない。

 

「そうなんですのね。じゃあ中等部の方や高等部の方もお暇を出されるという事かしら?」

「そうね。でも一部の生徒はそうじゃないらしいわよ。なんでも、脅威に対して魔法騎士は動かないらしいから、学園の生徒会執行部が魔法の才能がある生徒達を集めて脅威に対抗するって言うお話よ」

 

 うん、100%エルソファーちゃんはそのメンバーに選ばれるわね。まさか、そういう展開が待っているとは思わなかったわね。私が少しでも主役級だったなら、きっとエルシファーちゃんと肩を並べていたハズなのに、悪役令嬢レミレラの魔法力は驚くくらいしょぼい。

 マジカルティアーズでは、主人公のユイを見て魔法力が殆どないことを馬鹿にするんだけど、ゲームでの入学時から魔法力が全然変わっていない。

 越えられる壁としてのステータスで固定されているのかしら……

 

 私にできる事はないし、リリムでもそんな脅威には対抗できないから素直に里帰りした方が良いかもしれない。

 

「レミーさん、私、一度高等部生徒会まで脅威と戦うメンバーに入れてもらうように直訴しに行ったのよ」

 

 えぇえええ! ミホノちゃんみかけによらず結構アグレッシブなのね。でも表情から察するに戦力外通告ね。

 

「シノノメ生徒会長には邪魔をしないで欲しいって言われちゃったわ。私は真剣だったけど、シノノメ会長からしたら初等部の学生のお遊戯にでも聞こえたのかもしれないわね。うん、とても悔しかった」

 

 そりゃそうよね。役立たず扱い、10代の子供の心は繊細なんだかシノノメ会長とやらももう少しデリカシーのある対応をすればいいのに、

 

『レミレラ様、魔法学園の学生が束になって戦うと言っても、我が君の独壇場ではありませんか? 邪魔をしに行くようなもの、ここは拘らずして実家に帰るのが良いかと』

 

 見えないことをいい事にリリムは好き放題言ってくれる。実家に帰ったら帰ったでガチレズのユイに会う事になるし、こんな変身魔法程度ではすぐに気づかれてしまう。さて、どうしたものかと思っていると、

 誰かがコンコンと訪ねてきた。

 

「ここにレミーという生徒はいるか?」

 

 えっ? ここにいますけど、何かとてつもなく嫌な予感がする。早くエルシファーちゃんに会って癒されたい。

 私の名前を呼んだ男はなんの説明もせずに私を寮の部屋から連れ出した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る