【1万pv感謝】パトロンは悪役令嬢。魔王という生き方に嫌気がさして、勇者にわざと討伐されてみたら片田舎の人間の子供に転生したので、平々凡々な魔法研究生活を望んだ日々の記録
第36話 休みの間に作業をしようとして全然出来ない奴は、才能がないみたいな話
第36話 休みの間に作業をしようとして全然出来ない奴は、才能がないみたいな話
一ヶ月という期間は長そうで恐ろしく短い。事の経緯を教員連中、果ては王宮へ通達するも、どうも信じてもらえない。
それにシノノメ会長は腕を組み。生徒会室で生徒会メンバーと、余。そしてミカエリスにリリス、そして余が工房に呼んだサニアが呼び出された。
「まぁ、あれだ。魔法騎士達の助力はないと思って欲しい。あっても気休め程度だろうけどね。現状、5人のテロリストがおおよそ一ヶ月後にやってくる。我々はそれを迎え撃つ。その為には精鋭をこの学園に15人残して、学園は休校。他生徒達は避難させる」
シノノメ会長が黒板に書いたそれ、相手は5人で乗り込んでくると言った。それを真に受けた場合。スリーマンセルで各個撃破する。
「相手は勇者パーティーだ。オールラウンダーの勇者。そして、モンクファイターのなんだっけ?」
「マオ」
余がそう言うと、シノノメ会長はそうだったそうだったと”猫”という余も見た事のない文字を書いた。
「残り三人は恐らく、剣士。魔法使い、あとは僧侶かな?」
「シノノメ会長、何故そんな事が分る?」
余の疑問は他のメンツも同じく考えた事だったろう。というか、余は分かって居るのだが、念のためにシノノメ会長の口から説明させる。
何故か分らんが、余の前世の経験上、勇者パーティーは魔法使いばかりでパーティーを組むという効率性を取らずに様々な役職で担ってくる。バランスはいいかもしれないが、潰しが効かない分非効率きわまりないのだがな......本来魔法使いを中心にタンクを用意するのが一番であろう。
ようやくその答えを余も知れるシノノメ会長の回答。
「まぁ、あれだよ。勇者パーティーってのは伝統的にそんな連中なんだ。テロリストは間違いなくその伝統でくる。故にこちらもそれらに対策特化したメンバーをぶつける。もちろん、勇者を叩くのは私と、エルシファー君だ。これだと一人余るよね? 余った一人は、監視と通信役にサニア君、あの小型通信魔道具の開発はどうだい?」
シノノメ会長。サニアに変な物を作らせておったのだな。サニアは恐る恐る、白い手に収まる程の魔道具を二つ見せる。
「こ、これ......エルちゃん一つもってみて」
「うむ」
「も、もう一つはシノノメ会長」
「うん」
余は皆目見当もつかない魔道具を持っているとそれが振動する。余はサニアを見つめるとサニアはこう言った。
「魔方陣が刻まれているルーンにふれて」
「これかの」
触れると、そこからシノノメ会長の声が聞こえる。目の前にシノノメ会長が喋って少しラグがあるようだが......これは凄い! これがあれば、遠く離れていても連絡が取り合えるわけか......
「サニア凄い!」
「......そんな、事。ないよ」
これは革新的すぎる。こやつ、余の魔法属性変換器を調整しながら、こんな物を......実に素晴らしい人材だと余が思っていたが......
「うん、これじゃあダメだな」
「なんで?」
シノノメ会長はこの魔道具を否定した。嘘だろ? こんな使い勝手良さそうな道具は他にも、余の世界でも見た事がない。
「これさ、通信する側はこのサイズでもいいけど、受け取る側はもっと小さくして、そうだね。髪留めに仕込めるように、じゃなきゃ戦いながら話なんて出来ないよ」
むぅ......厳しい。厳しすぎる。これは一発余が......
「シノノメ会長、分りました。頑張ります!」
は? サニアは嬉しそうにそう言うと頭を下げた。あぁ......余の家来にもおったな。こういう難しい事を注文されればされる程にやる気を出す奴。そわそわしているサニア、もう工房に戻りたい顔をしているので余はシノノメ会長に文句を言うかわりにこう言ってやった。
「シノノメ会長。サニアが工房で研究をしたそう」
「あぁ、うん。そうか、じゃあサニア君。最後に魔法力増幅器の方はどうなってる?」
また新しい物を作らせておるのか?
「小型化はまだ......」
「ふむ。まぁそれはおいおい話をあとで聞くよ。じゃあ工房で通信機の小型化をよろしくね」
頭を下げて、サニアは工房へと戻っていく。若干スキップをしている事から機嫌がいいんだろう。サニアが生徒会室から退室するとシノノメ会長は真剣な顔に変わった。
「じゃあ、今から対勇者パーティー討伐チームを組もうか、勇者は別格としても、その従者であるモンクファイターも中々の実力者だったよ。近接戦闘が得意な魔法使いは、ウチでは風紀委員長かな」
名前を呼ばれたアレクシアは立ち上がり敬礼した。
「はっ! 生徒会長、お任せください。そのような愚か者は私が天罰を与えてやりますとも!」
「いいね! そのやる気。あとは、リリス君。君もモンクファイターにあたってもらう」
リリスが頷くとアレクシアは慌てて生徒会長に発言する。
「お言葉ですが、生徒会長。そのような者、私一人でも」
「うん、君なら刺し違える事はできるかもしれないね。それじゃ意味がないんだ。誰一人死なず、テロリスト共を全滅させる。完全勝利以外は我々の負けだと思ってほしい。分るかな? 卑怯結構。こちらは不利な状況なんだ」
「しかし、生徒会長。一般生徒を......」
「これ以上、私に言わせるな。私は勇者を名乗る逆賊に手を取られて君達のバックアップはできない。もし、これ以上意見したいなら君はこの作戦から外すよ」
殺気......あの勇者といい、シノノメ会長といい......この状況にあのアレクシアが震える。アレクシアだけではないな。皆一様にシノノメ会長にびびっておる。
「わ......私は足手まといになりません」
そう言ったリリス。
「うん、分ってるよ。リリス君は力を隠してる。はっきりいってここにいる生徒会のメンバーに匹敵......あるいはそれ以上の逸材だよ」
まぁ、余と同じでシノノメ会長にもリリスの潜在能力と魔力をセーブしているのはバレバレだからの。アレクシアがどれほど強いかは分らんが、リリスと同等であれば二人かがり、いやもう一人の三人がかり。それならあのマオを始末できるか。
「私は剣士と戦います」
そう言ったのは、ミカエリス。確かにこやつは槍術が得意だった。剣より槍の方が強いしの。ただし、剣士がいたとしてその技量が想像を越えていた場合。ミカエリスといえどもヤバいかの......ここは何か武器を......状況が状況だしの......しかたがない。
「リリス、ミカ、あとでちょっといい?」
第一回作戦会議の後で、余とリリスはミカエリスの部屋に集まった。ミカエリスがお茶を出してくれるのを待って余は言った。
「リリス、ダガー見せてあげて」
「......分ったよ。はい、ミカエリスさん」
「何このダガー、魔道具精霊?」
リリスのダガーはレッサーデーモンに姿を変える。それにおののくミカエリス。この世界ではレッサーデモン程度でもかなりの魔物らしいからの。
「ミカにも同じ武器をあげる。それとリリス、そんなに悔しそうな顔しない」
「だって、これは私とエルちゃんの秘密だったじゃん! 悔しいよ」
というだろうの。だから少しだけ、ふんばつしてやろう。余はレッサーデーモンに触れると余の魔法力を注ぎ込む。
滾れ、魔なる生命よ。
”魔王の忠実なる僕、十六柱の化身 アークデーモン”
「「!!!!!」」
レッサーデーモンよりも小さい、というかそういえばアークデーモンは今の余と同じくらいだったの。
「至高なる魔王サマ、レッサーデ......ディーからの三段階も冠位向上。誠に痛み入ります」
「なに、礼には及ばない。勇者がくる。貴様はこれからもリリスの剣として働いてもらう」
リリスを見るアークデーモン。それにリリスは目を丸くする。
「で、ディーなの?」
「リリス、いつも毎日綺麗に磨いてくれていたわね。貴女がその一生を終えるまで、守ってあげる」
そう言ってリリスの頬にキスすると再びダガーに戻る。それを握ったリリスは驚く。
「何これ......昔、美術館で特別に触れさせてもらった伝説の武器なんか目じゃないくらいに......」
腰を抜かしそうな二人だったが、今回はリリスの剣じゃない。ミカエリスの武器だ。
「ミカ、ミカの武器にも精霊を落とす。槍持ってる?」
今だ理解がおいついていないミカエリスだったが、頷くと先祖代々受け継がれてきたらしい見事な槍を余に見せた。
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