【1万pv感謝】パトロンは悪役令嬢。魔王という生き方に嫌気がさして、勇者にわざと討伐されてみたら片田舎の人間の子供に転生したので、平々凡々な魔法研究生活を望んだ日々の記録
第7話 不思議なことに何もない日にイベントが発生する。これはご都合主義じゃなくて何らかの運命を感じるやつ
第7話 不思議なことに何もない日にイベントが発生する。これはご都合主義じゃなくて何らかの運命を感じるやつ
“ポーションを作った? それもハイポーション? それはまずいわよエルシファーちゃん“
余に果物、父に珍しい酒、母に上質な布で作られたであろうケープを送ってくれたレミレラのお礼に余が作ったポーションを送った事を書いたところツっこまれた。
“村の人や私以外にはその事は教えてないわよね? というか教えちゃダメよ。ポーションは普通はそんな簡単に作れない物だから“
それがの……行商人の割高ポーションを村の人が買わなくなって行商人が何故か尋ねた結果、自信満々に余のポーションを見せつけたからの。何故なら行商人のポーションはレルバリアで売られている物の二倍の価格。しかしポーションは必要な事も多く買わざる負えない。が、余がポーションを月に村全員に位行き渡る程度の量を密造している事でそれを買う必要がなくなったわけだ。
が、それはレミレラ曰く。
“生活必需品の製造はまずいわね。それもエルシファーちゃんの住んでいるようなど田舎だと尚さらよ“
失礼な! 要するに、権力を持った者が素材やらなんやらを乱獲、下手すれば余達の立ち退きを迫ってくるやもしれぬ。
それはまずい。村といえど、百人程は住んでいるのだ。それを追い出されでもしたら……
“こういう時のパトロンでしょ? 私とぉ、エルシファーちゃんわぁ!“
なんぞ嫌な予感がするが、確かにこいつの力を借りた方が良い局面に思える。
“ちょっとそっち行くから待ってて!“
わざわざ貴族の御令嬢がこんな田舎に……え? えぇ?
「こんにちわ! ごきげんよう! ここがエルシファーちゃんの家かしら?」
転移魔法の類か? 馬車でも数時間かかる距離をどのようにしてやってきた? 母も父も農作業に出ているので家には余一人。レミレラを出迎えるにはちょうど良い。
「いらっしゃい、でもどうやってここに?」
「魔法の黒板を使ってこの村へポータルを開いたのよ。送受信できるのは文字だけじゃないのよ! ちょっとした応用ね。ちなみにエルシファーちゃんの持っている物は子機だからその機能はないわよ」
作ったのよ。とか平然と言っておるが、なんらかの古代道具か何か? とてもその魔法の仕組みが気になるが……
「すっごい興味深そうね……今度、転移させてあげるから、今日はそこじゃなくてポーションの口裏合わせでしょ?」
「うん、そうだった。でもどうすれば?」
「3日後の晩、私の屋敷で貴族や王族を集めたパーティーを催すのよ。そこで、私がご当地ポーションの製造業を始めた事を語るわ。で、エルシファーちゃん達の村がその下受け先という事でどう? もちろん、材料や設備提供はするわよ? 欲しいものはある? もちろんある程度ポーションは作って私の方に卸してもらう。製造したポーションはちゃんと買い取るわよ。で、設備費用を返しきったら設備ごとそのポーション生産業をそのまま村で続けるといいわ!」
マジか! 二束三文で農作物が買い取られていた余達の村に製造業が! それに余は満足するが、レミレラの思惑に関しても注意する。
「ここまでしてくれる理由はなに? レミレラには何も得はない」
「あのねエルシファーちゃん、私にはこれから度重なる難題が待ち受けてるのよ! できれば私は貴族の地位に甘んじてゴロゴロ日がな一日過ごしてたいけど、嫌われ者の私ことレミレラは今度のパーティーで悪魔に唆される。そしてヴァルキュリア王国第一姫、セラフェリス・ヴァルキュリア様を襲い投獄の後に処刑されるエンド。これを回避したいの」
は? こいつさっきから何を言っておるのだ? 未来予知でもできるのか? と言うかそうだとしても自分の事なのに他人のことみたいに話すの……
「レミレラの力なら、回避できるでしょ?」
「それがね……私、魔法の方はほとんどダメなのよ」
「こんな魔法の黒板とか持ってる」
「それはね……話せば長くなるんだけど、私の力じゃなくて、知らないと思うけど転生ボーナス? 的な」
知ってるぅううう!
と言うか、レミレラは本当に余と同じで転生したという事か? 確かに天使の末裔にしては魔力は低いし、と言うか余の暗黒魔法と相性が良さそうな?
「どうすればいいの?」
「三日後のパーティー、悪魔退治を手伝ってほしいの。エルシファーちゃん元々魔王でしょ? だったら悪魔も退治できるかなって」
悪魔か、連中魔物と違ってしつこいからのぉ……が、余の村の為だ。
「分かった! レミレラを助ける」
「きゃああ! エルシファーちゃんありがとう! どうしてもこのイベントだけ回避不可能だったのよね! いっそのこと夜逃げしようかと思ってたの!」
余にレミレラが抱きついたところで、余の父と母が帰ってきた。漬物にする為に収穫してきたドデカダイコンを父はボトボトと落として……
「レミレラ様、こんなところに何故いらして!」
「いらっしゃるなら申していただければ向かいましたのに!」
父と母がめちゃくちゃテンパって頭を下げるので、レミレラは余をパーティーに誘いにきた事を説明して、図々しくも余の家の夕食にまで食っていきよった。
「うわー! すごい! 大根のお漬物だぁ」
「余の村では普通の食べ物。これとパン粥で食べる」
「あぁ、惜しい! そこはお粥か、銀シャリだよ」
何を言っておるのだ? 田舎の庶民料理に最初父と母も焦っていたが、レミレラのやつは美味い美味い! と遠慮なしに食いよる。まぁ、母の料理が美味いの間違いないが……
「ミトさんの家に、なんでもあの意地悪貴族のレミレラ・アンヘル様が遊びに来てるとかで……」
と狭い村ゆえ、風の如くその噂は伝わり、余の家の周りに村中の人が集まってきていた。やはりレミレラの印象は最悪。
「レミレラ様、すごい優しそうに笑われて」
「田舎料理も美味しそうに……どれ、何か土産でも渡してみっか?」
ぞろぞろ集まってきたみんなレミレラが帰る時に漬物や、ジュースなどを持ってきて、
「いいんですか皆様! 私、感激ですわぁ」
と貴族モードでそれらを受け取り、全部袋に入れて貴族とは思えない格好で転移して帰った。
その三日後、レミレラから村宛に柔らかいパンと、上質な干し肉、そして動物の内蔵袋に入れられた大量のワインが送られてきた。
もちろん、村のみんなのレミレラの心象は恐ろしく改善され、魔法研究するのも忘れて呆けていた余の元に、豪華な馬車がやってきた。
「ミト・クロノスと、ナナ・クロノスのお嬢様、エルシファー・クロノス様はどちらに?」
レミレラお抱えの騎士らしい……田舎平民の余達に対しても偏見の目を見せずに余が姿を表すと、余の目線に合わせて膝を折る。
「エルシファー様ですね?」
「うん」
「私は、レミレラ様に仕えるしているデオと申します。レミレラ様のお屋敷まで私がお守りしてお連れいたしますので、お父様もお母様もご安心くださいませ! それではいきましょうか? エルシファー様」
おいおいおい! なんじゃこの男は準備があろうぞ、余の手を引っ張って馬車に放り込み……
「ハイヤーー!」
うぉ! 余を拉致しよった!
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