【1万pv感謝】パトロンは悪役令嬢。魔王という生き方に嫌気がさして、勇者にわざと討伐されてみたら片田舎の人間の子供に転生したので、平々凡々な魔法研究生活を望んだ日々の記録
第5話 悪役令嬢って言うけど、めちゃくちゃいい奴でどこが悪役なん? ってどうしても聞き返したくなるアレ
第5話 悪役令嬢って言うけど、めちゃくちゃいい奴でどこが悪役なん? ってどうしても聞き返したくなるアレ
そう、今日はレルバリアに父と母と買い物に来ている。元々ここに余達の先祖は住んでいたと父が教えてくれた。レルバリアは見渡す限り色んな店だらけだの。
「凄い勢いがある国」
「とても賑やかでしょう? エル? 何か欲しいものがあったらいいなさいね」
「そうだぞエルちゃん! パパ、なんでも買ってあげるからな」
そんな事を易々というものではないぞ父。もし、余がクソわがままな娘だったらどうするのか、まぁわがままの一つでも言った方が子供らしいかもしれんがな。どれ一つ。
「父、ポーションを見に行きたい。家にある傷薬じゃなくてちゃんとしたポーション!」
「ポーション? もっとドラゴンのぬいぐるみとか、スライムのぬいぐるみとか、ハーピーのぬいぐるみとかじゃなくていいのかい?」
何故ぬいぐるみ縛りなのか、余が今までぬいぐるみを欲した事があったか? いや、余の誕生日の時、父はいつもいつもドラゴンだとかのぬいぐるみを買って来ておったな。
貴様の趣味か……
「うん、いらない。ポーションを見に行きたい」
「そうかい? ポーションも一つくらいあってもいいしね。母さん、一つ買って帰ろうか?」
「そうね! エルが欲しがることなんてほとんどないもの」
まぁ、別にいらんのだがな。ただポーションを本当に見てみたいのだ。時折行商人が売りにくるポーション、あの価格。皆が高い高いと言っておったから、傷薬とどの程度違うのか見極めたかったのだ。
お菓子や飲みものの屋台を越えて、ポーション専門店に余達はやってきた。
「いらっしゃいませ」
ほぉ、田舎者である余達に対してもまともな礼儀。ふむ、贔屓にしてやろう。父と母は色とりどりのポーションを眺めている中、店員の女が余達に話しかける。
「どのような物をお探しですか?」
「ポーションとハイポーションを見せてほしい」
余が身を乗り出してそう言うので、笑いながら店員の女は私に青い液体のポーションと紫がかったハイポーションを見せてくれた。
「少し飲んでみますか?」
「良いのか?」
「構いませんよ」
余はポーションとハイポーションを口にして……店員は笑顔。
「清められた水、薬草の類は二つ? あとこれは何? 菌糸類に、恐らくは鉱物?」
「…………ポーションの作り方をご存知なんでしょうか? お客様は、もしかして同業?」
「違う。余達はここから少し離れたところにある田舎からきた農作物を育てて生活している普通の家」
余がポーションの材料を言い当てると父と母が嬉しそうに店員に話し出す。
「うちのエルちゃんはもう凄い頭も賢くて、魔法も上手に使えるんですよ!」
「そうなんですか? 素敵なお嬢様ですね! お嬢様にポーションおひとついかがでしょうか?」
「はい! 買います」
待て、父! 値段を見よ! 2400リターとはクソ高いではないか。余達三人が村で食事を取る二回分ぞ?
「父、それは買わなくていい。余が作ってあげる」
「えぇ! エルちゃん、流石にポーションは作れないよ?」
が、余には作れるのだよ。今一口飲んだ事で全ての解析は終わった。材料も近くの山で採集可能と思えるし、さらにとても面白い事にも気がつけたしな。
こういう時に父を動かす方法はあれかの?
「大丈夫。それよりお腹が空いた」
「そうかい? じゃあ何か食べて帰ろうか? ポーションはまた今度買いにきますね。行こうか母さん」
「うふふ、そうね。エルは何が食べたい?」
そうだの。まぁなんでもいいのだが、今日は二人が好きな食べ物でもチョイスしてねだってやろうか……
そう思った時、
「お邪魔しますわね」
どえらい、金を持ってそうな女がやってきた。豪華なドレスにバック、中々に美しい金髪をやたら髪を巻いてある髪型、なんともタカピシャそうな女だな。
「天使の末裔であらせられる……レミレラ様、いらっしゃるのであれば言って下さればよろしかったのに! みんな整列して」
おぉ? おぉ? 何が起きた? 店員達が慌てて全員集まってくると並んでこのレミレラとかいう女に接客を始めた。
「みなさん、そんな風にお集まりにならなくともよろしくてよ。それとも、ワガママで傲慢で平民を見下す。アンヘル侯爵家の嫌味なレミレラお嬢様の機嫌を取らなくちゃ! とでも思われているのですの?」
店員達は青い顔で震え、「そそそそ、そのような事はございません」となんとか許しを請おうとしている。まぁ、余に優しくしてくれたこの店員の女らを助けてやろうかの、レミレラとやら少しお灸を……
「私が用があるのは、そちらのお二人」
「わ、私と母さんですか? お貴族様が……とんでもない、人違いではないでしょうか? お会いした事もありませんし」
「いいえ、女神の末裔であるあなたがたお二人に、本来であれば私がそそのかして、お祭りにくるヴァルキュリア王国のお姫様に危害を加えるという大変な事を起こすというイベントを回避しに来たんですが、お祭りはもう既に終わり、あなたがたは、一人のお嬢様を連れていますわね? どなたですの?」
なんだコイツ、何を言っておるのだ?
余は……
「エルは、エルシファーは私たちの大事な娘ですが……」
父が貴族相手だというのに余を守るように前に立つ。
「女神の末裔は確か、女の子が生まれる時、呪いで死んでしまうのではなかったですの?」
「エ、エルは……」
もう良い、こやつは何やらヤバイ。
「貴様、余の母と父から離れよ」
「エルシファー……ちゃん? ふーん、知りませんわね。貴女のような子は私の記憶にはいらっしゃりませんわ。攻略対象の関係者でもない……そうですねぇ、初めまして私。レミレラ・アンヘルでございます。以後おみしりおきを……そうですわね。お近づきの印に、ここにあるポーション。全部プレゼントしますわ。包んで差し上げて」
かしこまりましたと店員たちが全てのポーションを紙袋に入れていく。一体いくらほどするんだろうか?
が、それを見て余の父と母はその申し出を断った。
「レミレラ様、申し訳ございませんがお受け取りできません。私たちはお金持ちではありませんが、何も知らないレミレラ様にこのように恵まれるような身分でもございません」
よう言った父! 帰れ帰れ、よう分からん変な女よ。なぁにがアンヘル侯爵家か……天使の末裔か何か知らんが、余たちは女神ぞ! 女神の末裔ぞ! こっちの方が格上だろうが、はよ去ね!
余を見て、心でも読んだかのようにレミレラは頭を下げてきた。
「エルシファーちゃんとそのご両親、失礼いたしましたわ。大変無礼がすぎましたわ! そうですねぇ、であればせめてお食事などご馳走させてくれませんこと?」
流石にこれも断るのは父と母も悪い気がしたのか、えらいご馳走をレミレラにご馳走になった余達。父と母もこのレミレラが悪い奴ではないということがわかると色々余の話をする。
「へぇ、エルシファーちゃんは様々な素材を集めて一人で魔法の勉強をするのが好きなんですわね? とてもえらいですわぁ!」
「そうでもない……」
余の言葉を聞いてパンと手を叩くと、レミレラは父と母に、いや遠回しに余にこう言った。
「本来は生まれるハズのなかったエルシファーちゃんが生まれてきた事は奇跡ですわ! 私、エルシファーちゃんのパトロンになります事よ!」
必要な物があれば、あるいは困った事があればレミレラ宛に手紙を出せばいいと言いよった。
「手紙?」
「手紙と言ってもこれですわ! 魔法の黒板よ!」
魔法の黒板、なんじゃそれは? 聞いた事がない。レミレラも同じ物を持っており、黒板に書いた文字がお互いの黒板に共有される。
“よろしくお願いしますわ、エルシファーちゃん“
おぉおお! これは凄い。まぁ、謎の貴族の女だが、悪い奴ではなさそうだの。食事をご馳走になったことで父と母は何度もレミレラに頭を下げて、帰りの馬車まで用意してくれた。
「レミレラ様、とても意地悪なお貴族様と噂されていたけど、すごい優しいお方だったね?」
「そうね。やっぱり田舎まで伝わってくる噂は尾鰭が立つのかしら?」
確かにレミレラは悪い奴ではなさそうだが、ポーションの店での店員たちのあの震え方は異常だった。本当に恐ろしいやつのように……魔力反応?
レミレラの魔法の黒板か、なんじゃ?
“エルシファーちゃん、貴女は誰? 私は貴女のようなキャラクターは知らない それとも私と同じ転生者かしら? 私が悪役令嬢なら、貴女は“
は? ハァああああ?
誰? 貴様こそ誰じゃあああ! 何が悪役令嬢じゃ、意味が分からんが……こやつ余と同じなのか?
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