第4話 だいたい、はじまりは俺TUEEEEEEしてお姫様と繋がりとかをもってしまうのである②

 ズドーーーーン!


 手が少し焦げた。この体のタフネスを少し計算に入れておらんかったか、この魔法に相当するものはどれかのぉ? まぁこの辺か


”怨霊達よ形をやろう その刃は呪い、その切れ味は火傷”


「ケイオスブレード」


 暗黒の剣が姫を襲う。それに姫は何もしない。……なっ! まさか先ほどの魔法が通用せんかった事に固まっておるのか……


「加速魔法、最大最速!」


 余は余が放った魔法よりも速く走ると、姫の前に飛び出して自らの暗黒魔法を握りつぶした。余の後ろでは震えている姫。まぁ十分なお灸となっただろう。これで少しは反省せよ。


「……ミカエリス」


「えっ?」


「私の名前、ミカエリス・ヴァルキュリア。貴女のお名前を教えて頂戴。私は貴女を絶対に越えてみせる」


 おおぅ、叩けば伸びるタイプであったか、こやつ自分が余より弱い事を認めよった。思ったより調子に乗ってるわけではなかったか……


「余の名前は、エルシファーだ。魔王エルシファー」


「魔王?」


「うん、魔法の王。それが余だ」


 ミカエリスは涙を拭いた。そして笑う。


「私がその魔王になってみせる。それと、貴女の服を馬鹿にしてごめんなさい」


「分かればよい」


「これはお詫びよ」


 炎が止んだ時、姫が余に髪留めを渡しているところだった。この年齢にしては異常な魔法の応酬、それに表面上は決着がつかなかったという事になっているが、村人も王国の連中のどちらも実力の差は一目瞭然だっただろう。


 だが、こんな辺鄙な村の村娘に負けたなどありえないのであろう。余も何もいわず、母は余を抱きしめてくれた。

 祭りはなんの滞りもなく終わる。そして大人達は祭りの最期に酒を酌み交わしている。余は家を抜け出し、森にやってくると短剣を取り出した。


「破滅の剣よ、たまにはその辺を散歩してくるがいい」


 短剣は小さな飛竜となって楽しそうに飛び回る。余は魔法陣を展開し、新しい魔法の研究。余に分かった事がある。この体は精霊魔法、白魔法という余が魔王だった頃に苦手な魔法との相性がいい。


 逆に言えば、余が魔王だった頃に得意とした暗黒魔法との相性がひどく悪い。あの神と呼んだ者。余の力に制限をかける為にこのような体に転生させたか……だが、嫌いではない。


 最強ではない余。無敵ではない余。これから余は再び強くなる。そして冒険に出て、この世界の魔王に相当する者と……くふふのふ。


「暗黒魔法を上手く使う方法、他の魔法によって暗黒魔法を強化、あるいは性質を変える事で扱いやすくする。あたりかの」


 先ほど、あの姫につかったケイオスブレード。あれに光の属性を乗せれるかがここ最近の研究という事になるの。


”怨霊達よ形をやろう その刃は呪い、その切れ味は火傷”


「ケイオスブレード!」


 さてこの暗黒魔法の剣。これに炎や雷を乗せる事はできた。が、真逆の属性を乗せるという事に関しては属性が反発するのか、できん。例えば……


”聖なる地母神よ 我らか弱き者の足元を照らせ”


 さて二つの魔法を用意したわけだが、これを合わせると出力の強い方が残る。逆に出力を同じに調整すると両方が消滅する。


「となると、新しい魔法を一から作らねばならんという事か、なんという面倒で……そして楽しいのか」


 闇属性の魔法に光属性の魔法を乗せるにあたって必要な事。直接この二つの魔法を近づけると消滅してしまうので、中間の魔法を組まなければならんという事になる。


 それも二層、元になる暗黒魔法を一番外に展開し、次の層に無属性を暗黒魔法の力に変換した上で強化する魔法、その下の層に光魔法を無属性に変換する層、そして一番下に光属性の強化魔法。


 これらがうまく展開できるような魔法を作っていく。

 さて何年かかることやら、魔王であった頃は時間等無限にあったが、限られた生を生きるというのは実に面白いの。


「ゼロ式、無属性魔法、術式組み込み開始」


 無属性の魔法というものは、存在しえない。いや、余は一人だけそれができる者を知っていた。勇者。

 あやつは、いかにして無属性魔法を使えたのか? しかし奴が使えて余が使えないという事はないだろう。例えば炎。


”旅人を温めよ”


「ファイアーボール」


 さて、この炎の最下級魔法から炎の力を抜いていく。炎の魔法から炎の属性を抜く。要するに魔法を消滅させるようなもの。威力だけを残して炎という力を削る。


 こんな屁でもない魔法なのに、どれだけ精密な技能が必要なのか冷や汗が出てくるの。

 余の当面の目標はこの無属性魔法の展開となる。

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