第3話 だいたい、はじまりは俺TUEEEEEEしてお姫様と繋がりとかをもってしまうのである①

 時はさらに経った。この体になり十の季節がやってきた。この村で飯を喰らい、お手伝いをし、魔法の勉強をするという体で威力の調整をこの数年練習していた。この世界レベルの魔法の威力はマスターしたも同然。


 余の異常な火力の魔法は生まれた時の潜在能力という事になり、今は身を潜めている。という設定になっている。余もいきなり強力な魔法を使えてややこしい事にならぬように穏便に過ごしておる。


「エル、今日はヴァルキュリア王国のお姫様がこの村にも立ち寄られるからお祭りよ」


 祭りか、今日は大人共は酒を浴びる程飲み眠りにつくだろうから、余はまた魔法の勉強ができるの。エル、余のこの世界での名前。エルシファー、いい名前だの。親の愛を感じる。


「エル、よそ行きの服を出してあげるからそれを着なさい」


 しかし、エルもとい余の親は器用だの。余の世界では高額で売れそうな服をささっと作ってしまう。柄も悪くないし、余は気に入っておる。それを着て母と手を繋ぎ祭りに行く。


 屋台等が沢山出ているし、みんな楽しそうだの。これが、人々の営みなのだな。

 余が滅ぼそうとしたものだ。


「エルは何か食べたいものはある?」


「ううん、特にない」


「エルは誰に似たのか欲のない子だねぇ」


 まぁ、ありとあらゆるものを欲し、喰らおうとしたからの。この世界では大人しくエルシファーという生き方をの……


 そうは言うが、母親は甘いお菓子を買うと余にそれを渡してくれる。貰った物を拒否するのも悪いのでそれを食べる。まぁ、屋台の食い物などこんなものだろう。

 普通。だが、余は空気が読めるのでこういう。


「おいしい」


 そう言ってやると母親は喜ぶので、あとは静かにしておればよいか、祭りが盛り上がりだし、人々が道を開ける。どうやら、何処ぞのお姫様とやらが凱旋するのだろう。まったく人間というものはどこの世界も変わらんな。


 豪華な馬車らしきもの長々とゆっくり進む。それをぼーっと見ていると、ひときわ豪華な馬車から豪華なドレスを着たガキんちょ。まぁ、今の余と同じくくらいか? 何不自由ない顔であれこれ従者に指をさして訪ねている。

 そして余を見る。余を見ると従者に何かを言う。ん? こっちに来るぞ。


「この子は、姫様のお相手なんて務まりません故!」


 母親が何やら媚び、断わっているのだが、まわりの村人も「頑張れエルちゃん」と叫ぶので余に何かをさせるのだろう。


 母親は神に祈るように拝む。そして余はこのヴァルキュリア王国とやらの連中により祭りの中心部へと連れてこさせられた。目の前にはくだんのお姫様。


「貴女が、わたくしのお相手をするの? 大人でも良かったのに」


「相手?」


 このガキんちょ、何を言っているのかと思ったが、どうやらこの姫様と余で魔法の力比べをするという事らしいの。王族の魔力は高く強い。いくら女神の末裔といえど勝てぬと言いたいのだろう。


 ただ、大人には勝てない可能性があるので余という計らいか、まぁここは祭りをたてて余は引き立て役になってやろう。

 とこの時は思っておった。


「その服、どこで買ったのかしら?」


「母に作ってもらった」


「だからなのね。ダサい、田舎の服だわ」


 なるほどの、この娘。少しお灸をすえてやらねばならん。余はここに無理やり引きずり出された。おとがめはあるまい。


「言いたい事はそれだけか? 小娘、蝶よ花よと育てられたへっぽこ魔法を見せてみよ」


「まぁ! そんな事言って泣いても知らないんだから」


 ”氷結の獅子よ ここに来たりて 吹雪を呼ばん”


 ほうほう、氷の魔法か確かにこの娘の年齢にしてはいい魔法かもしれんな。ざわざわと周囲の者が騒ぐ。


「姫様、その魔法は危険です。おやめください!」


 離れたところから叫ぶじじい。まぁ、確かに危ないの。周囲の村人に危害が加わらんように余も見せてやろうか。


「炎よ舞え、遊べ遊べ。焔の化身。フレイムサークル」


 余が両手を広げると余と姫のまわりを炎が包む。おうおう焦っておるわぁ! 泣きべそをかいたら許してやろうかの。


「貴女……その年ですごい魔法を使えるのね……驚いたわ。なら私の最大の魔法見せてあげる」


”聖なる神々よ、我が意に従い、天空の裁きを”


「フェアリーライトランス!」


 天空より光の槍を落とす魔法か、下級魔族程度なら倒す事ができるかもしれないな。が、余には火の粉にもならんの。落ちるその魔法に対して余はただ手をかざす。


 本来魔法防御を張るものなんだろうが、余にこんな魔法が通じる道理もない。

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