第2話 とりあえず子供なのに、ありえない魔法を使うとかでもちあげられるやつ

「おぎゃああ!」


「この子、女の子よ! 呪いが起きていない?」


 いや、今めっさ、呪いとバトっている最中なんだがの。これ、暗黒系の最上位クラスの呪いをかけられておる。余じゃなければ解呪する事なんて不可能に近いぞ。


 どのくらいヤバいかというとマグマの中にあれこれ放り込んでそれを元の状態に復元するくらい厄介な呪いだ。よし、あと少し! てぇえい!


「おっぎゃああああ!」


 よしよしとこの両親らしき者に余は抱えられる。よかったの。誰一人として悲しむ者がおらんでの、どうやらここはクソみたいな田舎の集落らしい。


 言葉は数か月で覚えたのだ。えっへん。クソみたいなレベルの魔法を行使してそれでいて魔法に精通した一族的な事を言っておる。半年経つ頃に両親の前で喋ってみせると天才だのなんだと喜んでくれた。実に面白く、そして中々に楽しいぞ。このちやほやされる感じ! 嫌いじゃない!


 魔王としてやってきた頃は、腹心共がやれマナーだ、やれ威厳だと煩くて褒められた事等なかったわ。

 月日は経つ、3歳になった頃に魔法を使ってみせたらこの集落にいる大人全員が集まってきた。これヤバいやつかの?


「エル、みんなの前でさっきのやって頂戴」


 おかん、そんな目で見るなし! ちょっとこれどうしよう。使ったらすげー気持ちいいんだろうな? 使えなかったら平凡な日常が戻ってくるだろう。


 当然、気持ちいい方に決まっておる!


”悠久に眠りし、魔龍よ、我が命に従い地獄より焔を呼び出さん”


「ヴァルファレイル・ゲヘナ!(かっこちょー低出力版)」


 空に突き抜けるような火柱が立つ。そして村人たちの拍手喝采……ありゃ? 喜んでいるのは両親だけで、他の村人達が完全に引いておる。


「その子、今暗黒系魔法の最上位の魔法を使わなかったか!」


 マジか! こんなクソ雑魚ナメクジみたいな魔法が……だがここで焦る元魔王ではあるまい。光魔法や白魔法も血反吐を吐きながら勉強したからの。


 ここは光魔法最下級ホーリーライトをぶっ倒れる事を覚悟して余はドン引きしている皆の前で再び詠唱。


”聖なる地母神よ 我らか弱き者の足元を照らせ”


「天よりの輝き、ホーリーライト!」


 眩い光は夕方の暮れ行くそらを朝日のように照らす。ほれほれ、先ほどと違って村人の表情が穏やかになる。


「この子は天才だよミトさん! 暗黒系だけでなく、精霊系の大魔法まで使えるなんて、でもどうして我々には使用ができない暗黒系魔法が使えるんだろう?」


 ヤバい。あのクソ魔法も結構高レベルの魔法だった。そして暗黒系魔法とやらを使える事をどうごまかすべきか……ほれもう悪魔憑きだとかなんとか言い出す輩が……


「私達は呪いの力を吸収する魔法の研究をしておりました。もし子供が女の子なら呪いから守ってやろうと思って、その研究は成功しませんでしたが、きっとこの才能を持つ子はお腹にいながら胎育として学んだんでしょう。そして憎き呪いの力を自らの魔法力にしたのではないでしょうか!」


 この両親、良い親ではあるが魔法の才能は皆無でそして親ばかすぎる。こんな屁理屈が通じるわけなどない。

 通じるわけがないはずなのだが……


「そうか! やはりミトさんも腐っても我々と同じで女神の末裔ですものね! エルちゃんはきっと女神様の力が色濃くでているのでしょう。ありがたいありがたい」


 まぁ、女神様ではなく余、魔王様の力なのではあるがな。まぁ、どうでも良いか。

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