第十七話 衝撃の事実(第二幕)。共有されない真実
「ふあぁ〜。ん?いつ自室に戻ってきたっけ」
シロネの寝ぼけ眼に映ったのは、まだ見慣れないけど知っている部屋が広がっていた。
(何だか記憶が曖昧、どうなったんだっけ?)
まだ起きたばかりで状況が掴めないシロネでは、起き上がるために腰の横あたりに左手を着いた時、何か手触りのいい感触が返ってきた。
「んー・・・?シロ姉、起きた・・・」
「ティナが何でここに?あ、ごめんね。不用意に耳触っちゃって・・・。ティナ?」
「リ、リタ姉ー!シロ姉起きたーー!」
先程までシロネが寝るベッドで自身の腕を枕して寝ていたティナは、身体を起こして自分を見つめるシロネを確認すると、リタを呼ぶために跳ね起きて部屋から出て行った。
「え、えっ?一体、私の身に何があったの?」
あんなに慌てるティナの様子を見て、シロネは自身の身に何があったのか、一気に不安になるのであった。
それからティナが飛び出て行って三分後、シロネの部屋にはリタとティナ、そして二人の後ろにはヘレナとバレッタの姿がある。
「そ、それで私はどうしちゃったの?」
「ああ、まずは何があったか説明する方が先か・・・。実はな、シロネ。お前はこの馬鹿な妹弟子に薬を盛られてな。薬の効果で丸々一日二十四時間寝てたんだ、よっ!」
そう言い終えると同時に、バレッタは横にいるヘレナの腰に蹴りを入れた。
リタとティナも、実の母親であるヘレナの手に噛み付いたり、腹にパンチを入れたりとやりたい放題だ。
「痛い痛いっ!いたたたたっ!ちょ、ちょっと!説明するから制裁は後にしてくれると!」
三人から解放されたヘレナは語った。
昨日、シャンスティルからサルザードへ向かう列車の中、おかしくなったシロネを助けるためにある薬を飲ませた事。
それの効果で、眠気が全く来ない状態であった事。
そして薬の効果は次のステップ、眠気が来ない効果とは一転、次は全く覚めることのない眠りの時間があった事を。
「まずはごめんなさいシロネ。この薬の最後まで効果を知らなかった私に問題があったの。師匠から貰ったこの薬、気付け薬(失敗作)の効果を私が勘違いしていてね・・・」
「あ?気付け薬(失敗作)?違えよ、そいつはそんなもんじゃない。そいつの本当の名は・・・」
「「本当の名!」」
何故かリタとティナがわくわくし始めた。
「本当の名は、覚醒れぼりゅーしょん、だ!」
「「「はえ?」」」
バレッタの口から出た名前があまりにもユニークで、意表を突かれた三姉妹は揃って同じ反応をする。
「レボリューションじゃないぞ。れぼりゅーしょんだからな?」
「そこ大事なんですか⁉︎」
「ああ、イントネーションには気を付けろよ」
それの何が大事なのかとよく分からないバレッタの発言にツッコミを入れたシロネ。
「この覚醒レボリュ・・・覚醒れぼりゅーしょんは今から二十三年前、多分ヘレナが十二歳の時に師匠が贈ったアイテムだ、と思う。これで丁度その時期に一騒ぎあったからな」
それからバレッタが語る覚醒れぼりゅーしょんの効果に皆が驚く事になる。
「まず主な効果は、二十四時間一睡もせずに活動出来るってのはかなり違う。本当は二十四時間、一切の精神異常の無効化が主な効果で、眠れなくなるのは副次効果だな」
バレッタが語る覚醒れぼりゅーしょんの本当の能力。
それは服用した者に、催眠や魅了といった全ての精神異常をきたす呪いや魔術を解除、また時間内は掛かることが無くなるといったもの。
勘違いの元となった睡眠に関しては、薬も通用しなくするように錬成したら、本来生物に備えられ脳と身体が求める機能、睡眠欲を元からバッサリと断ち切る薬が完成した。
そんな強力な薬、当然副作用もある。
飲むとあまりの刺激に意識を一瞬、僅かな記憶が飛んでしまう。
そして二十四時間を過ぎると次は同じ時間、何をされても起きないほどの熟睡をしてしまうのだ。
「す、すごい効果の薬なんですね。覚醒レボリュ、れぼりゅーしょん・・・」
「そうね。厄介なはずの精神異常が全て無効だなんて」
「ん、かくせいれぼりゅーしょんすごい」
「ティナの嬢ちゃん違うぞ。覚醒れぼりゅーしょんだ」
「そっちもダメなんですね・・・」
(錬金術師のネーミングセンスってどうなってるの?私が変なんでしょうか・・・)
「ねえリタ、昨日錬成したリボンの形をした魔力障壁張るアレ、そういえば何て名前なの?」
「え、言ってなかったかしら。あれはオートバリバリフィールドよ!」
「・・・・・・・・・うん、そういう名前なんだね」
(はい、錬金術師の中では私の方がおかしいみたいです)
錬金術師の多くはネーミングセンスが独特であると、シロネは新たに知りたくない知識を手に入れた。
(もうどんな名前が出てきても、なるべく気にしないようにしよう。うん)
シロネはそう心に誓った。
しかし、実は昔にシロネが錬成で作ったぬいぐるみがあり、付けた名前は・・・まあ妹二人の微妙な反応でお察しである。
そう、独特な名前を付ける錬金術師は自分のものはまともだと思っており、周りのネーミングセンスに違和感を感じているだけなのであった。
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