第十五話 もう何が何だか分からないよ!
「アッヒャッヒャッヒャッ。ひぃーひぃーヤバイ面白すぎるんだが!」
「バレッタ姉さん。あまり笑わないであげると嬉しいのだけど」
色々な後始末を終え、冷めきった朝食を三人でモソモソと食べていると、やって来たお母さんとバレッタさんが私達の様子を見て何があったか尋ねてきた。
私は事の顛末、先程の二人のやらかしを正直に話す。
二人は徹夜で錬成をして、危険な方法で強力なアイテムを錬成したリタ。そして実験とはいえ、狙いを逸らしていたとしても人がいる方へ危険な攻撃をしたティナと破壊された壁について話しをした。
そうして、聞き終えたお母さんは頭を抱え、バレッタさん大爆笑したのだ。
「でもすげぇな。十五って若さでそこまで出来るんか!流石ヘレナが育てた娘っ子だな!」
「この子達が勝手に上達していったのよ。基礎を教えてから、いくつかの課題と任せれる依頼をさせて、後は好き勝手にやらせてたもの」
うん、本当に好き勝手やっていた。
シャンスティルでは、リタとティナは自分が興味持った事を全力で研究しており、早い段階で錬成する方法を見つけては実験にまでこぎつけたのだ。
その結果、初めは言う事を聞かないスライムが、アトリエの中にあるものをひっくり返して回ったり、リタが錬成した謎のアクセサリーは制御を離れ、壁にぶつかると爆発して建物に穴を開けたりして大変だった。
ま、まあ、私も調子に乗って、一度に大量のポーションを錬成しようとした結果、必要な魔力以上流して制御できず、盛大に爆発させた事ありますけど・・・。
あの時はアトリエが一週間焦げ臭くなってしまった。
「まあ若く有能な錬金術師なんて皆、ちょっとしたマッドサイエンティストみたいなもんだ。自分がやりたい事を見つけると全力で突っ走っちまう。後の事や周りの奴をあまり気にせずに、な」
「ほんと、昔のバレッタ姉さん酷かったわ。変な爆弾錬成したり、エロ親父みたいなセクハラアイテム作って暴れたりで」
「お前も人の事言えんだろうが、まあ俺は今でも持ってたりするんだがな!」
バレッタさんが取り出したるは変な丸メガネ。レンズには謎の紋様があって、メガネとしてはとても見えにくそうだ。
それを今自身が掛けている物と交換して私の方を見る。
「おおー!シロネの嬢ちゃんすげぇな!十八で九十三もあるのか。他にもほうほう・・・身長以外ヘレナに勝ってるぞ」
「え?・・・あ、ちょっと!何見てるんですか⁉︎」
なんて物を・・・。本当にセクハラアイテムだ。
言ってる意味に気付いた時、思わず両腕で抱きしめるように身体を隠してしまったよ。
「ね、ねえバレッタ姉さん。勝ってるって全部のサイズが大きいってことよね?ウエストなんかも・・・?」
「あ?シロネの嬢ちゃんの方が細い、て意味に決まってるだろうが。てかヘレナ、どこがとは言わないがある数値の一部、全く変わらんよな。ハハハッ」
「なっ⁉︎くそっ、神様のコンチクショーー!」
お母さんが何か意味不明な捨て台詞を残して家から飛び出して行ってしまう。
そんなお母さんの突然の行動に、私は「ええっ!?」という言葉しか発することしかできず、既に姿すら見えない相手は呼び止められない。
今日予定していた道案内はどうするんだろうか?
「あ、あのバレッタさん。アンディさんのお店の場所知っていますか?とりあえず色々話し合う約束していたのですが・・・お母さんどっか行っちゃったので」
「ん、ああアンディの店に行くんだったか。それなら俺も知ってるし問題ないぞ。近場だし。予定で決めてたならその内ヘレナも来るだろ。先に行ってようぜ」
「分かりました。リタ、ティナ、準備してアンディさんのところへ行くよ。・・・あれ?二人とも」
昨日、お母さんとアンディさんと話し合って今日の予定は決めていた。
それなのに今日一緒に回って色々教えてくれるはずだったお母さんは何処かへ行った。
だからせめて、私たちだけでも予定通りに行動しようとしたのに、二人の様子もどこかおかしい。
「ティナ、ねえ聞いた?お姉ちゃん九十三もあるんだって」
「ん、どこでこんなに開いたんだろう」
「ほんと、十五以上も差があるわよね」
「違う、それはリタ姉だけ」
「は?」
「どんまい」
「は?表に出なさい。消し炭にするわ」
さっきまで生気が抜けたようだったリタがピリつき始めた。
少し前のあの出来事が吹っ切れらるなら悪くないとも思ったけど、やっぱり喧嘩は良くはない。仲裁に入る。
「ちょっと!何で二人が喧嘩する事になってるの!」
「止めないでお姉ちゃん!上にいる者には分からない。どんぐりなりの意地があるのよ!」
「意味わかんないよ!」
全く動かないティナに飛び掛かろうとするリタを羽交締めにする。
パワーでは絶対負けないのでリタが諦めるまでこうしていれば良い。そう思っていると、ティナは落ち着いた様子で「リタ姉、ご利益」とだけ言った。
するとリタは、さっきまで暴れていたのが嘘のように羽交締めへの抵抗をやめた。
「お姉ちゃんごめんね。もう大丈夫だから」
「ほんと?もう喧嘩しない?」
「ええ」
リタが行った事は嘘ではなく、本当に羽交締めを解いても大丈夫だった。リタは実に落ち着いており、私の方へ向き直り一礼する。
そしてペシっと私の胸をはたいてまた一礼。
え、何?
「それじゃあ、行きましょうか」
「ん」
「バレッタさん、案内お願いするわね」
「お、おう。行くか」
三人はリビングの出口、玄関に繋がる廊下へと向かった。
残されたのは立ち尽くす私だけ。
・・・・・・・・・え?あれ?
私がリタを止めようとした時、バレッタさんが「リタの嬢ちゃんが七十七で、ティナの嬢ちゃんが七十九か」って呟いていたのが聞こえてしまった。
うん、これは極秘情報だよね。聞かなかった事にしよう。
大丈夫、お姉ちゃんは決して!誰にも言わないから!!
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