第2話 三年後

自分を守って眠りについてしまった、愛する恋人を前にレオンハルトは絶望した。オフィーリアが眠りから覚める日をレオンハルトは待ち続け、婚約は当然のように継続されている。


そしてついに、三年もの月日が経ってしまったのだった。


当時の年齢はオフィーリア16歳。レオンハルト14歳だったが、眠り続けたまま全く肉体の成長が見られないオフィーリアはそのままに、レオンハルトは一つ歳上になってしまったのだった。それでも一向に眠り姫は、眠り続けたまま目覚める事はなかった。


レオンハルトのオフィーリアへの愛は変わらない。

だが後継を残す事、血を繋いで行く事こそが王族に課せられた重大な役目であり義務。


このままオフィーリアが目覚めぬまま婚礼をあげ、初夜を迎えたとして肉体が成長しない彼女は果たして妊娠し、胎児がお腹の中で育つのか。


正妃はオフィーリアに、そして子を産む役目は別の高貴な血を持つ母体を用意するか。

それともオフィーリアとの婚約は白紙に戻し、レオンハルトへは新たな婚約者を用意するのか。


目覚めぬまま、三年が経った今では毎日のように議論が繰り返されている。この三年間の間に何度も評議会での議題に上がっていた事だ。



オフィーリアとレオンハルトの婚姻は、友好国である隣国エルトラントとの間で決まった事。

こちらから頼み込んでの申し出だったにも関わらず、この国でレオンハルトの生誕パーティーにて訪れていたオフィーリアを、眠りの呪いにつかせてしまった。

不審者を招き入れてしまったという警備の甘さが問題視され、完全にセレスティア国側の責任だったのだ。


この上婚約まで白紙にしては、長きに渡り友好国であった、エルトラントとの亀裂が懸念される事となる。


最終的な結論は出せぬまま、仮の婚約者候補が何人か上げられた。

婚約者候補の更に『仮』が付くのである。


その中でも現在、最有力候補と言われているのがこの国の侯爵令嬢、ニナ・ハートフォード。

このままレオンハルトの心がオフィーリアから別の令嬢に移れば、エルトラントも折れてくれるのではないかと、期待する宮廷の者も増えてきた。


そして最近実しやかにレオンハルトとニナの仲睦まじい様子が囁かれ始めている。

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