可愛さは突然に

玄関先でのお互いの自己紹介を終えると、誠は口をひらく。


「いつまでも玄関先で話もあれなので、どうぞ中に入ってください…ってか今日からここが家になるんですけどね」


そう言うと、侑香さんはほんのりと笑顔を作る。


もともとが美人なので、笑顔でそれがより一層引き立つ。


「誠君は私たちが新しい家族になるのをちゃんと認めてくれて嬉しいわ。 それじゃ、遠慮なく入らさせてもらうわ ね。


そう言って、僕の後を付いてくる。


「お邪魔します……だったら変ね。そうね…… これからよろしくお願いします。の方ががいいかしらね」


そう言った侑香さんは、俺と父さんにお辞儀をした。同じく、雪音さんも可愛げのあるお辞儀をする。


その後、玄関で待っていた父さんが二人に話す。


「ようこそ月城家へ。雪音さんもはじめまして。誠は頼りないところあるけど、まぁ仲良くやってくれ」


「一言余計だ。それに、そんなに言われるほど頼りないとは思ってないぞ」


父さんに反論していると、雪音さんは力を振り絞るように話す。


「あ、あの、誠君は男らしい所があります!それに…カッコいいですし……」


最後はわずかな声だったが、可愛い声で『カッコいい』なんて言われたので、思わず、顔を赤くしてしまう。


「おや?君どこでそんな姿を見たんだ?てか、君たち一度会ったのかい?」


「いや、会った事はない……と思う。多分今回が初めてじゃない?」


俺がそう答えるが、雪音さんは何故か不満な顔をしている。しかし頬をぷくっと膨らませているので、むしろ可愛い。


しかし、いくら室内でも、玄関で話は良くないと思った。


「あの、まだ沢山話したいことがあるんですが、とりあえずリビングにあがりませんか?」


そう言うと、雪音さん達は靴を脱いで、僕の後についてリビングまで移動する。


◆◇


リビングに入った瞬間、雪音さんはこんな事を口にした。


「わあー!結構広いですねー。しかも、綺麗に掃除されてます!」


「まあ、元々掃除とかの家事は一通りできますし、料理も、ある程度は……」


「そうなんですね。フフッ、ずっとお父さんと2人で生活されていると聞いていたので、てっきり少し手を抜いているのかと思っていました」


「でも……」


雪音さんは言葉を続ける。


「誠君は家事とか、料理とか、色々できて偉いです。やっぱり、誠君はいい人です!」


「これはそのご褒美です!」


そう言って、僕の頭を優しく撫でてきた。


「んっ……!?」


これには僕もどうすることもできなかった。

心拍数がグンと上がり、心臓の音も聞こえそうなくらい高鳴っていた。


「ふふっ、どうですか?頭を撫でられて。やっぱりドキッとしましたか!?」


尋ねる声には、優しさと、少しわざとらしい気持ちが混ざっているような気がした。


「初、初対面の人にそんな事したらドキッとしますよ。でも、やりすぎたら色々と誤解されますよ」


僕はそうやって釘を刺した。


しかし、初対面の相手にここまでするものだろうか?


少し疑問に思いつつ、雪音さんに尋ねる。


「何であんな事したの?びっくりしたんだけど」


「それは、私がただしてあげたいと思ったからです。逆に、私達はもう兄妹なのに、何でしてはいけないんですか?」


「うっ...」


実際少し嬉しかったので、何も言えなかった。


「じゃぁ、言ってこないという事は、していいってことですね?分りました!これからも遠慮なくさせていただきますね。あと、敬語とか、堅苦しい、話し方はやめましょう。せっかく兄妹になるんですから、このくらいはしないと」


「あぁ、分かりまし…わかったよ」


「はい!」


雪音さんはそうやって頷いてくれた。


「でも、他の人が見ているところでは……その……恥ずかしいからやめてね?」


「へ?」


そうやって、僕が見ている方と同じ方向にある、ドアの隙間に目を凝らした。


「あらぁ〜、あの2人、いつの間に仲良くなったのかしらねぇ、大地さん?」

「ああ、そうだな、侑香さん」


隙間から覗いていたのは、両親だった。


それを見た雪音さんは、顔を真っ赤にしてそっぽを向いた。


「もぅ〜、お母さんのばかぁ〜」


その赤面している雪音さんもまた、彼女の可愛い一面だった。



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