俺の義妹は魔王様!!

柚子レモン

魔王様がやって来た

「なぁまこと、今度お父さん再婚するんだ」


「ごふっ!?」


 それは親子二人の夕食中、俺の父さん、月城大地つきしろだいちが放った言葉だった。


「何でいきなり......」


「誠、すまなかった。

 今までずっと話したかったんだが、結局話すタイミングがなくてな……」


 そう言って父さんは少し申し訳なさそうな顔をする。


「でもまぁ父さんが幸せなら別にいいけど……」


「おぉ、誠がそう言ってくれるのか。父さん嬉しいぞ。」


 そう言って父さんは嬉し涙を流す。


 別にそこまで泣かれなくてもいい気がするが……


「ところで、相手の人はどんな人なの?」


 そう言うと、父さんはスマホのアルバムから写真を引っ張り出して見せてくれた。


「まじか......父さんどこでこんな人と知り合ったの?」


 そこに写っているのは、誰が見ても美しいと思えるほど美人で大人の女性だった。


「父さんの会社の近くの居酒屋で知り合ったんだ。カウンターで隣だったこの人に色々と相談に乗ってもらってな。

 それで知り合ったんだ。


「へぇー。そうなんだ。」


「---ーーー」


「なぁ誠、お前なんか反応薄くないか?」


「別に」


 どこにでもいるような普通のサラリーマンの父さんに美人の奥さんができるなんて怪しい……なんて口が裂けても言えなかった。


「ちなみに、今度の週末からこの家で住むことになってるからな。彼女によろしく言ってくれ」


「え……」


「今なんて言った?」


「ん?今週の週末に家で住むってことだろ?

 しかも相手も連れ子がいるんだ」


「え……週末から家に住む……?」


「連れ子……?」


「ああ!しかもお前と同い年で妹だ。母さんに似て美人だぞ」


「同い年……妹……」


「なんだってぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!」



 ◆◇



「---とうとう来てしまった---」


 相手の家族と顔合わせ、そのまま引越し……そんな大事な日に限って何を話そうか迷う誠。


「とにかく、いい振る舞いをしなければ……相手の人も温厚な人だと父さんも言っていたし。

 逆にこちらが悪い振る舞いをしてしまえば、相手の人に悪いイメージを持たれてしまうかもしれない。」


「---とにかく気を引き締めないとーーー」


 俺はそんなことを考えながら、洗面所の水で顔を洗った。


『ピンポーン』


 俺と父さんの2人の身支度が終わるその頃、家全体にインターホンの音が鳴り響いた。


「父さん、俺が出るよ」


「おう、分かった。

 頑張れよ」


 そう言って右の拳を上下に揺らして応援する父さんを背にして俺は玄関へと向かう。


「はーい」


 ありきたりな掛け声とともに玄関のドアを開けると、そこには、息をのむほど美人な親子が立っていた。


「はじめまして。大地さんと結婚しました、月城侑香つきしろゆうかと申します。

 こっちは娘の雪音ゆきねです」


 そう言って2人は自己紹介をしてくれた。


「あ、あの、月城誠です。

 よろしくお願いします」


 緊張で言葉がカタコトになりながらも、なんとか自己紹介を終える。


「ほら、雪音、あなたも自己紹介しなさい」


 侑香さんはそう言って、雪音さんを前に連れてくる。


 その様子は、どこかそわそわしていた。


「あ、あの、えっと……ゆ、雪音ゆきねです。

 こ、これから、よ、よろしくお願いします」


 そう言ってこちらを見つめる。


 <なっ!?>


 そこには、真っ赤に染まった頬をしたかわしらしい顔で上目遣いをしてくる雪音さんがいた。


 もともと超が付くほどの美人のため、俺の心は一瞬で撃ち抜かれてしまった。


 先程の可愛らしい顔と一緒に差し伸べてきた、白く、細長い手を握って、自分もこう言った。


「こ、こちらこそよろしくお願いします」」


「はい!」


 雪音さんはうれしそうに僕の手を上下にぶんぶんと振った。


「あら、二人ともしてくれそうね。

 お母さんも嬉しいわ」


 いや、こんな美人二人と俺には耐えられそうにない、と一人悟っていた。


「あははは……」


 そんなことを考えながら、俺は笑って返事をするしかなかった。

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