第2話


家で半年ほどたった頃、主人から

そろそろ働いたらどうか。と遠慮がちにお伺いをたてられた。

子供もいて家も買っていて、私がいつまでも休んでいられる状況ではなかった。

うつと上手く付き合いながら働いていくしかなかった。


テレワークを始め最初は上手くいっていたが、

徐々にまた動くことが困難になった。

肌もぼろぼろの状態で、ZOOMにうつる自分をごまかすためにアイライナーとリップだけつけて参加していたが、ものを考えることが難しくなり、漠然とした焦燥感と不安感に襲われ、どうしたら良いのかとそればかり考えて動けなくなっていった。

主人には内緒で消費者金融で借金もした。

生活費と税金を補うために。

だけど、限度がある。もう借りることも出来なくなった。


また何も出来なくなった私を見て、主人も限界が来たのだろう。

「なんでもいいから働いてくれ!」

お金がないと言ったら、働けと。当たり前のことだ。

働かないと生きていけないんだから。





テレワークのサイトで知り合った知人から連絡があり、

無理をするなと言葉を投げかけられた時、涙とともに打ち明けた。

自殺未遂をしたこと、借金があること、携帯がとまっていること、支払いの期限が迫っていること。


知人は物凄く現実的に対応してくれた。

金を借りられる人はいないのか。

いつまでにどのくらいのお金が必要なのか。

そして提案されたのは、

――――人妻デリヘルだった。


意味がわからなかった。

容姿が良い訳でもない、見た目はどこにでもいる普通の女だと。

水商売をやったこともない、30後半の女がいきなり出来るわけがないと。


他に解決できる道はあるのかと問われ、

もうそれしか道はないと思うようになった。

どうなっても、死んで逃げたらいいと、そう思った。

自分のこと、目の前のことしか考えられなかった。








 

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