私がメンヘラになるまで

@mitoha-yuki

第1話 

 

 ―――――お金がない。


うつ状態で休職し、そのまま退職。

コロナが流行ってテレワークが推奨され、家で出来る職業も増えてきた。


 ―――――お金がない。


家で出来るはずの仕事も続けることが出来なかった。

ついには消費者金融にまで手を出して食いつないでいた。


携帯もとまり、米を買うお金もない。

もう、限界がきた。


カーテンのタッセルに無理矢理首をひっかけてみた。

衝動的だった。

何にも考えることが出来なかった。


なんだか頬に衝撃があったような気がする。

早回しで夢を見ていたような気がする。


気がついたら床で痙攣してた。

自分が何をしていたのか最初はわからなかった。

カーテンのタッセルは紐の所が切れて服に引っかかっていた。


なんで生きてるんだろう。

よく落ちる自分の髪の毛を箒で掃きながら

いらないのは自分だと思った。

捨てるのは自分だと思っていた。



結婚して20年。


私は主人から一度も愛を囁かれたことがない。


SEXから始まって、気がついたら、いつも隣にいた。

好きだった。子供が出来たときも、ただただ嬉しかった。

愛の言葉はなかったが、「結婚する。」と言ってくれたので

幸せだった。


主人は仕事をすぐに決め、働き出した。

朝行って夜遅く帰ってくる。いわゆるブラック企業の一部だろう。

だけど、残業代はしっかり出るので

文句も言わず、毎日行っていた。休日も返上して頑張っていた。


私は家事と育児に翻弄されながらも、前向きだったと思う。

子供を預けられるようになるまでは専業主婦だったが、

パートを始めて、体が慣れた頃、近くの病院にフルタイムで働くことになった。


小さい不満はお互いあれど、譲り合い、諦め合い。

普通の夫婦とはこういうものだと思っていた。


付き合っていた頃の強い気持ちも風化して、それでも一生を共にする人。

家族になったんだと思っていた。



うつ状態になったのはいつからだっただろう?


仕事に行こうとすると体が動かなかった。


休みの連絡を入れて、サボってしまった罪悪感でつぶされそうだった。


思い切って精神科に行って、休職して。


家でお風呂にも入らずぼーっとして。


薬でドロのように眠った。


周りは楽しそうだけど、なぜ私は普通に過ごせないのか疑問だった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る