第3話 収穫祭の準備 ー向かう中でー
朝食を食べ終えたネアと私は収穫祭の準備をするため、玄関を出て果実取りへと向かった。母さんは酒造りの工房へと出かけた。
基本的に畑や森、建築などの力仕事は男たちがやり、その他の雑務や男たちの手伝いを私達女性が行っている。
しかしこの間から収穫祭の準備が始まったので、普段とは少しすることが違う。
準備担当の振り分け方は家族ごとで決められており、私達はみんなが大好きな果実酒造りの手伝いをすることになった。
普段から果実集めなどは良くしてるし、森に出入りすることも多いのでこの担当になったのだろう。
※※※
「昨日はすこし風が強かったし、果物にキズが入ってなきゃいいけど」
玄関を出て、少し先にある村の噴水を通り過ぎたあたりで、ネアがそうボヤいた。
「まだまだみんなが飲む量には材料が足らないものね。まあ、熟してないのはそうそう落ちてないと思うし……大丈夫でしょ」
私がなんとなくそう答えると、ネアは私の方をちらりと見た。
「最近なんか、変わった?」
突然のネアの唐突すぎる質問に、ビックリしてしまった。私としては何も思い当たることはないのだが……。
ーーまさか、太った?!
「いや、なにも! 変わってないよ! もーネアったら、おかしなこと言わないでよねー! アハハハ……」
私は焦りを取り繕うように急いで答えた。
みんなには口が裂けても言えない。夜に隠れて傷物の果物をこっそり食べてるなんて……。
それも多めに。
ネアはそんな焦った私の様子をみて、より不安と不思議さが増したような様子を見せた。
「そう? なんだかね、私フィアのことフィアじゃないように感じるときがあるの。まるでーー」
「あ!!」
さっきまでのネアの言葉は、実際私には届いていなかった。
なぜなら、昨日食べた果実の種とか皮を証拠隠滅することばかりが気になってしょうがなかったからだ。
私はネアの言葉を遮り、家に一旦帰る口実を言う事にした。
「ごめんネア! 私、家にかんざし忘れてたの思い出した!」
「え?」
ネアから間の抜けた声が漏れた。しかし、構うことはない。証拠を消すのが最優先だ!
「というわけだから、先に行ってて! すぐに追いつくから!」
「え? 待ってフィア。今かんざしつけてーー」
ネアからの当然の疑問を聞かないように、私は大急ぎで家に向かった。
普段なら、お相手候補の男子からの目を気にして移動も何もかも全て、おしとやかにしているのだが、そんなの今は関係ない。
お相手よりも身内からの説教を逃れることが今は何よりも重要だ。
そうして私はスカートを走りやすいようたくし上げ、大股のがに股で家に向かった。その道すがら、ふと誰かからの視線を感じた。
その方向に目を配ると、あのバースが木の陰からこちらを見ていた。
背筋に悪寒が走った。
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