第2話 収穫祭の準備 ー食卓にてー

 それからの私達は早かった。


 髪をとき終わり、そうそうに身支度を整えた後で私達二人は2階から1階の食卓へ足早に向かった。


 簡素な朝食を並べたテーブルには、すでに口をへの字にしてこちらを見つめるお母さんが座っている。その様子に少しばかりうろたえた私達に、すかさず母さんの小言がはじまった。

  

 「フィアにネア、遅いとは言わないけど最近は少しばかり眠り過ぎやしないかい? 」

 

 「それは、だって母さん! フィアが起きるまで待ってたから、私それで……」


ネアがチラチラ私の方を見ながら言い訳を始めた。たしかにネアの正論ではあるが、何だか私ばかり言われてることに少しばかりムカムカしてきた。

 

 「あんた達の言い訳は、生まれたての頃から聞き飽きたわ。それにフィア、あんたが悪いのにそんな顔しないの! あんたのことは自分が一番よくわかってるはずでしょ?!」

 

 母さんのもっともな小言に、私は内面まで見透かされたようで顔全体の熱が上がっていくのを感じた。ネアの方に目をやると、またもや『それ見たことか』の表情でこちらを見ていた。


 私は少しばかりの反撃として、ネアの右手の甲を軽くつねり、ネアよりも先に食卓についた。

 ネアも少し遅れて私の隣に座ったが、またもや眉間と口元にシワが寄っている。

 

 「ネア、あんたもふてくされた顔をしない。お相手のナムル君に幻滅されるわよ」


 「ふっ………」


 お母さんの的確な一言につい笑ってしまった。笑ったすぐさま、私の左手の甲にかなり強めの痛みが走る。

 ネアがこちらを見向きもせず、ここ最近で見たことないくらいの笑顔で、爪の先っちょを使い全力でつねり返してきたのだ。


 「ネア……わかったから。それ、やめてくれない?」


 「なんの事かな、お姉ちゃん? 『それ』って私よくわからない。そんなことを聞く前に、早くお相手を見つけましょうねー」


 とても綺麗な声ですっとぼけてくるネアに、またもや私の体温が上がった!

 互いに目線で威圧しあうが、正面にいるお母さんのヘビの如く突き刺さる視線で私達二人は仲良くスープとパンを口へ運んだ。


 いつも通りの朝、いつも通りの会話。これが私達の生まれてから変わることのない日常だ。

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