サモンズミー!
プラスなティック
第1話 誰かの夢
ーー温かい。どこか懐かしい場所にいる気がする。それに、大きな何かに抱かれてるような。
ーーここは……
ふと目の中に光が差し込んでくるのを感じる。
「……あなた!見て、この子目を開いて私を見てるわ!まあ何て美くしい、愛らしい瞳をしてるのかしら!」
ーーだれ? とても、きれいな人……。
「どれどれ……おお!やはり、君に似て実に美しいな!瞳と口元は君で、鼻筋は私に似ているといったところか!」
ーー知らない人。でも、前にどこかで……。
「そうね……。ねぇあなた!早くこの子にも名付けしてくださいな!あぁ、愛おしい我が子よ。早くあなたを名前を呼んであげたいわ」
「……そうだな。迷ってはおったが決めたぞ!この子の名はーー」
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
「……ア、起きてフィア!」
見知った声が耳鳴りとともに、私の眠りを妨げる。少しして、気だるい気持ちで頑張って体を起こすが、どうにもやる気が出ない。
「……おはよう、ネア」
見知った声の持ち主である双子の妹のネアに生気のない挨拶をしたが、ネアの眉間と口元にシワがよせ、まっすぐにこちらを睨んでいる。
「フィア、あんた最近眠りこけすぎ。寝つきよくするためにネムリグサ食べ過ぎなんじゃないの?」
「食べてるのは一枚だけよ。にしても……そうね。確かにいつもよりよく寝てると思うわ」
そう言い返すと、ネアは『それ見たことか』の表情を浮かべこちらに迫ってくる。
「忙しいのはみんな一緒になんだから。フィアがちゃんとしてないと誰にしわ寄せが来るか分かってる?!」
顔を近づけ鼻息を荒くするネアを避けながら、私は鏡の椅子に座り髪ブラシを手に取った。
「しわ寄せが来るのはあなたの眉間と口元だけよ。」
ブラシで髪をときながら、鏡にうつるネアの眉間を見るとより深みを増している。
こういう時のネアは少し、面倒くさい。
「ネアったら、あと3ヶ月で収穫祭なのにそんなおっかない顔してると旦那様が逃げ出しちゃうわよ」
そう、私もネアもこの収穫祭で16を迎える。
私の国では16を迎える男女は、収穫祭で必ず伴侶を見つけ生涯の契りを結ぶ古くからのしきたりがある。
自分たちで見つけるか、親同士が決める(体外は親同士)ので、早くお相手を見つけないと遠くの親戚とか見知らぬ人と結婚するハメになる。
ネアはもういるらしいのだが、私はまだ決めきれてないでいる。
だから内心、かなりドギマギしている。
「フィア……他人の心配より自分の心配でしょ?まだお相手が決まらないの?」
「心配ありがとう、大丈夫よ。まだ三ヶ月も猶予はあるし、実はそろそろお相手も決めれそうなの!」
鏡越しに自信たっぷりでそう答えたが、嘘である。まだ、何も、話は進んでない。
ネアは無関心のような表情を浮かべながらベッドの脇に置いてあった髪ブラシで、そのキレイなブロンドの髪をとかし始めた。
「ふーん……この際、バースにでもしたらどうなの? どうやらフィアに気があるみたいだし」
「絶っっっ対に、いやよ」
私は食い気味にそう答えた。
私の心を透かしてることと、よりによってあのバースを薦めることに少しの苛立ちを感じたからだ。
あのバースですって?
物心つくくらいからアイツのことは知っている。
皆の輪に入って遊ぶより一人でいることが好きなもの好きで、最近は話しかけもしないくせに物陰から私の方をチラチラ見てるような臆病者……。
正直言って、気味が悪いから好かないのだ。
「フィア……バースはいいやつよ。あんたがどう思うかはだいたい察しがつくけどね」
「なら、話は早いでしょ? むり」
私がそう言うとネアが大きなため息を1つついた。
「……まあいいわ。それよりも寝すぎなことが一番の問題よ。ネムリグサもだけど、夢の見すぎなんじゃない?」
「確かに……そうかもね。最近、同じような夢を見てるから」
「へぇ、どんな夢なの? 」
私は髪ブラシをおいて、鏡に映る自分を見つめた。映る私はいつもと同じ顔に茶褐色の髪、くすんだ黒色の瞳……だけど。
夢を見てからは、それに違和感を感じている。
「忘れた。夢だもの」
誰の夢を、私はいつも見ているのだろう。
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